新体制初のEP『ネオン』を5月にリリースし、7月末まで初の全国ツアー<水曜日のカンパネラ 対バンツアー2022 ~Neo poem~>を回り、8月3日(水)には恵比寿・LIQUIDROOMでワンマンライブを控える水曜日のカンパネラ。
これまでQeticでは、水曜日のカンパネラ・詩羽と、映像監督のマイ(『バッキンガム』、『織姫』)や髙木美杜(『招き猫』)、またスタイリスト・Yuri Noshoとイラストレーター・YAMEPIの対談企画を実施。詩羽が同世代のクリエイターたちと作品を制作してきた想いを紹介してきました。
今回は初のEP発売&全国ツアーを記念して、これまで水曜日のカンパネラのMVを手がけてきた映像監督たちにメールインタビュー! 質問に答えてくれたのは、藤代雄一朗(『アリス』)、マイ、髙木美杜、渡邉直(『エジソン』)、間宮光駿(『卑弥呼』)。撮影時のエピソードから、各人が感じる水曜日のカンパネラの魅力について、たっぷりと語っていただきました。
記事の最後には、『卑弥呼』のMV撮影現場のフォトレポートをお届け。
水曜日のカンパネラの魅力をた〜んとお伝えいたします!
『アリス』
藤代 雄一朗(Yuichiro Fujishiro)
水曜日のカンパネラ『アリス』
──初めて水曜日のカンパネラを知ったのは?
まだ水曜日のカンパネラとしての出演がおそらく数回目のライブをたまたま会場で観ていて知りました。もう9年前です。
──MV撮影時の印象的なエピソードは?
撮影終盤、消灯予定時刻を過ぎて、いつ電気が消えるか分からないトンネルのなか、ダメ押しでコマ撮りをしていたときのハラハラ感が一番印象に残っています。きっと詩羽さんはなんて行き当たりばったりな撮影だと呆れていたと思うのですが、すみませんでした。ギリギリ撮れて良かったです。
──MVを制作するときに1番こだわっているポイントは?
水カンのMVではもともと一人で作り始めたところから出発しているので、よく言えば「手作り感」でしょうか。ロケ地や撮影方法がきになる、少し余白がある作りを面白がってもらえればと思って作っていました。
──水曜日のカンパネラ、そして詩羽さんの魅力とは?
音楽性も、アイコンとしても、新しい価値観で社会をなぎ倒している感じがいつも爽快。詩羽さんが大事にしているメッセージもまた、楽曲や活動を通してたくさんのところへ届くといいなと思っています。
──あなたにとって、“水曜日のカンパネラ”とは?
やみつきになってしまうお祭り。
ただのサラリーマンだった自分を、映像作家にさせてくれた恩人方でもあります。
藤代 雄一朗(Yuichiro Fujishiro)
1984年東京都生まれ。2016年DRAWING AND MANUALに参加。2021年独立。
初監督作品として制作した「水曜日のカンパネラ」のMVが映像を始めるきっかけとなり、MusicVideo・TVCM・WebMovieなどを手がける。
『バッキンガム』『織姫』
マイ(WARS iN CLOSET)
水曜日のカンパネラ『バッキンガム』
──初めて水曜日のカンパネラを知ったのは?
“桃太郎”を披露されていたMステ
──MV撮影時の印象的なエピソードは?
“バッキンガム”の肖像画のシーンで、私は編集でいじらずに、そのまま詩羽が何人もいる!? という演出がしたかったのですが、思ったよりも難しく、撮影チームと議論していたら時間を食ってしまって、「とりあえずやりましょう!」と詩羽に言わせてしまったことです……。今でも不甲斐なくて覚えています……。ですが、最初の作品の演出を詩羽と話し合いながらブラッシュアップする事ができたので今では良い思い出です。
──MVを制作するときに1番こだわっているポイントは?
長回しやカットを多めにして、そのアーティストを知らない初見の方が見てもあっという間に見終わってしまうように、最初から最後まで要素を詰め込むようにしています。
水曜日のカンパネラ『織姫』
──水曜日のカンパネラ、そして詩羽さんの魅力とは?
個人的な誰かに当てた曲じゃない所が魅力だと思っています。
音楽を「楽しむ」ことにフル特化しているので、なんにも考えたくない時とか水カンを聞いて楽しい気持ちになったり、したり。もちろん楽しい気持ちの時も聞いていつもルンルンになっています。
詩羽もそれと同じで、誰かへのパフォーマンスではなくみんなへのパフォーマンスとしてステージに立っているので、詩羽はステージに立ち続けていたらいつか世界を平和にできると思います。行け! 令和ギャル詩羽!
──あなたにとって、“水曜日のカンパネラ”とは?
私にとって水曜日のカンパネラは、自分のわからない自分の引き出しに音楽で手を突っ込んでくれた存在です。
本当に良い曲だからこそ普段じゃ出てこないようなアイデアが出てきたり、他のアーティストさんだとやりすぎでは? となるアイデアも面白ければ受け入れてくださるそんな姿勢が本当に素敵だと思っています。本当に光栄なことに水カンのMVを撮らせてもらえたことによって、自分の中で自分の作品への意識、頭の使い方が変わった気がしています。水カンのMVをみるたびに頑張らねば……と力が漲ります。
マイ(WARS iN CLOSET)
映像監督 2000年生まれ 兵庫県出身
音楽活動とMVを基本とした映像監督両方を主軸にし、ベーシストでもありつつ自身のバンドや様々なアーティストのMUSICVIDEOの企画・監督・編集、企画映像などを手掛けている。人間の第五感を信じて、そこに伝わるような映像づくりを心がけている。
▶︎対談:同世代のクリエイターと一緒に新しい『水曜日のカンパネラ』を作っていきたい──2代目・詩羽が00年代生まれの映像監督・マイに新曲を託した理由
『招き猫』
髙木美杜(Mimori Takagi)
水曜日のカンパネラ『招き猫』
──初めて水曜日のカンパネラを知ったのは?
“桃太郎”の時に知りました! 友達とずっと歌ってました!
──MV撮影時の印象的なエピソードは?
今までもずっとそうでしたが、詩羽に「こんな感じで!」と伝えたら、「あーアレですね!」と私の伝えたいニュアンスを一発でわかってくれてさすがすぎると思ったのと、詩羽が「ミモさん緊張してますよね?」って聞いてきて全部見透かされてる! と思いました……。
──MVを制作するときに1番こだわっているポイントは?
沢山の人に知ってもらう、ファンの方が見てて嬉しくなるものを作る、音楽の世界観を表現する、とかを同時に全部できたらいいのですが、アーティストさんと相談した上でどこにウェイトを置くかを最近では気をつけています! 作った人や歌っている人が音楽を誰にどう届けていきたいかの気持ちを大事にしていきたいです!
──水曜日のカンパネラ、そして詩羽さんの魅力とは?
水曜日のカンパネラは万華鏡的な魅力があると思います! おもしろさがくるくる変わって、でもどの見え方でもときめいてしまうし、大人も子供も楽しめる! が、魅力です!
詩羽の魅力は、怖気付かないところ(私はすぐ丸腰になってしまうので)、変幻自在なのに芯はブレないままなところ、すごく真面目なところです! あと何着ても似合うし、顔がかわいいです。
──あなたにとって、“水曜日のカンパネラ”とは?
大好きなアーティストです……! 本当にかっこいい、ライブ解禁でも新曲でもMVでも、横山さんの写真もゆりさんのスタイリングも、次は何が出てくるんだろうとワクワクしていまいます。
高木美杜(タカギミモリ)
2000年生まれ 21歳
2018年日本大学芸術学部映画学科監督コース入学 2018年より短編映画制作を開始2021年よりフリーでミュージックビデオ制作を開始
▶︎対談:詩羽(水曜日のカンパネラ)× 髙木美杜(映像監督)|00年代生まれの同世代クリエイターと語る、世代感と時代に対する意識
『エジソン』
渡邉 直(Nao Watanabe)
水曜日のカンパネラ『エジソン』
──初めて水曜日のカンパネラを知ったのは?
8年前にアンプを持って歌いながら渋谷を練り歩く動画をYouTubeで見て知りました。
──MV撮影時の印象的なエピソードは?
“エジソン”のMVの歌唱シーンを撮ってたら手の動きがなんか指揮者みたいになってて可愛かったところ。
──MVを制作するときに1番こだわっているポイントは?
曲の特徴に脳みそを委ねること。
──水曜日のカンパネラ、そして詩羽さんの魅力とは?
楽曲がいい。詩羽ちゃんはキラキラビームを無差別に放っているので無闇に話しかけると眩しくて危険。
──あなたにとって、“水曜日のカンパネラ”とは?
公園のようなところ。
みんなが集って遊んで気が済んだら帰ってまた集まるような憩いの場。
渡邉 直(Nao Watanabe)
1985年、山形県出身。
日本大学芸術学部放送学科卒業後、CM制作会社勤務を経て独立。
以後フリーの映像ディレクターとしてCM、MV、TV番組の演出を手掛ける。
様々なアーティストのライブ演出やVJとしても活動。
2021年よりGLASSLOFTに参加。
『卑弥呼』
間宮光駿
水曜日のカンパネラ『卑弥呼』
──初めて水曜日のカンパネラを知ったのは?
月並みな回答かもしれませんが、ミュージックステーションの“桃太郎”のパフォーマンスで初めて存在を知りました。
約7年前なので当時僕は中学校一年生だったはずなのですが、飾らず当時のリアクションは歌詞と曲なんかスゲーって感じで……アホ丸出しなのですが。
それからYouTubeでOTAMIRAMS様のMVも拝見し、初めて触れる世界観に引き込まれました。それから年齢を重ね、抽象的になんか凄い……みたいな感想から、コムアイさんの「能」的な(僕の勝手なイメージなのですが)表現に鮮烈に魅力を感じ、それからケンモチさんの楽曲ヤバい! となって……現在までずっと拝見、拝聴させていただいております。
ですのでまさかMVを僕が担当させていただけるなんて思ってもみませんでした。本当に光栄です。
──MV撮影時の印象的なエピソードは?
ドロップ部分の映像で雨のシーンを、夜中に屋外で水を撒くシャワーを2つ使って撮影したのですが、時期的に日中は暖かいけれど夜は寒い……くらいで。
びしょ濡れでブルブル震える詩羽さんに「すいません!」って言いまくった事でしょうか。
そんな中でも素晴らしいパフォーマンスを発揮していただきましたが、本当に申し訳なかったですね(笑)。
申し訳程度の暖かい飲み物と謝罪で切り抜けました。
あと濡れる用の靴をご用意するのを忘れていて……僕がその時履いていた靴を履いていただいたのですが、そのびちゃびちゃになった靴を備品と一緒にしまって洗うのを完全に忘れてしまっていて……。
先日その靴が本当にただならぬ臭いとともに発見されました。NIKEさんごめんなさい。とても丁寧に洗いました。
あと小道具で使った本物のシカの骨もめちゃくちゃ臭かったです。
めちゃくちゃ臭いのに詩羽さんは何回も臭いを嗅いでいました。凄いです。
──MVを制作するときに1番こだわっているポイントは?
まず大前提として、我々は「作品至上主義」と「覚悟」を表題として掲げています。
「作品至上主義」というのは、決して制作するものがエゴの塊だけの物になってはならない、制作の中心は僕自身ではなくあくまで生み出されるべき作品であるという戒めです。
不明瞭な輪郭ではあるのですが、その作品ごとの理想の姿があって。その理想を体現するためのパーツである、というような意識ですかね。
そして「覚悟」というのは、役職を名乗る覚悟の事です。
と言っても、覚悟がなければその役職を名乗る事ができないというニュアンスではありません。僕の場合は監督ですが、何かをしているから監督、といったような明確な基準は役職に存在しないわけです。
だからこそ、我々は何かをやっているからその役職たらしめられている訳ではなく、その役職をまっとうするという覚悟のみでしかそう在れないのだ、という意味合いでの覚悟です。
そういったある種、概念理想主義的な制作方式なのですが、こだわりという点でいうとまだまだ未熟な我々がその理想にできるだけ近いものを作るためには強い要素が必要で。
その強さは自分の中のパーソナルな感情や趣味嗜好だと思っています。
所謂その自分のエゴ(強いもの)を出し切るために表題があるというイメージです。
結論一番強いこだわりは、自分の中身を全部出せるか。「池の水全部抜く」方式でやるという事ですね。
技術的な部分でいうとアングルと画面内の顔の位置、カットテンポです。
──水曜日のカンパネラ、そして詩羽さんの魅力とは?
まず、水曜日のカンパネラの魅力とは「真剣に変則的でありつつも、ポップスとしての完成度を妥協することがない唯一無二なユニットである」という事だと感じます。
水曜日のカンパネラに限らず、ケンモチさんの作品もリリースの度に拝聴させていただいていますが、2019年にソロ名義から発表された『沸騰 沸く -FOOTWORK-』以後、水曜日のカンパネラにも変化があったような気がしていて。
挑戦的なビートの傾向や方向が増えていった分、水曜日のカンパネラとして聴こえ方は以前よりシンプルなのですが、攻め方やポップスセンス、といった部分が一層カッコいいものになったというのでしょうか。
その流れの上で、現体制では詩羽さんの存在感や透明感をキャッチーに昇華させているのが物凄く好きですね。キーのレンジ内での遊び方だったり様々な構成音が耳馴染みはあるものなのに、初めて聞くような感覚を受けることが魅力かと思います。
そこに対してピッタリとハマっていく柔軟性と、それでいて削ぎ落とされることのない個性が詩羽さんの素晴らしさかと。
有り得ない仮定ではあるのですが、僕であったとしたならば二代目として「器」というか、在るべき形を模索していってしまうような気がして。
同じ年齢の表現に携わる者として、確立された己の形を提示し、立たせ続けられる事は尊敬できる部分でもあり、大きな魅力だと感じます。
そして僕自身の体感として、我々の年齢はまだまだ変化していく、更新していける部分は多くある年齢だと感じています。
これからその現状の魅力がさらに大きくアップデートされる過程を共に見続けられる事というのも、間違いなく見逃せない要素の一つだと思いますね。
──あなたにとって、“水曜日のカンパネラ”とは?
さきほど魅力を僭越ながら語らせていただきましたが、正直あれは限定的な切り口の一つに過ぎないと思っています。
要するに、語り口が無数に存在し、どれもそれだけの要素で形容され得ない。
楽曲や様々なビュージックビデオ、コンセプト、ライブ表現もそうですが、見る、聴く側の視点さえ も変幻自在なグループであると。
ですから、本インタビューで書かせていただいた魅力は、もし今とは別のタイミングで書いていれば全く別の切り口であったかもしれない。
今の僕は水曜日のカンパネラのどこを見ているのか? そんな自分の鏡的な存在だと感じます。
間宮 光駿 まみや こうしゅん
21歳 京都府生まれ映像プロダクション YUKIKAZE 監督
YouTuberとしての活動を経て映像監督へと転向
撮影監督の山田虎太朗と共に映像プロダクション YUKIKAZE/ゆきかぜ を発足様々なアーティストのミュージックビデオを監督する
写真家のRK(小菅亮輔)と共にファッションブランドのプロモーション映像も多数制作している
Photo Report:『卑弥呼』
今回、Qeticは間宮光駿が監督した“卑弥呼”のMV撮影現場に独占密着!
写真家・横山マサトによるフォトレポートをお届けします。
Photo by 横山マサト