「エクスペリメンタル・ソウルバンド」を標榜する4人組音楽集団WONKが、ビートミュージック・シーンを牽引するレーベル〈Stones Throw〉に所属し、ジャズとヒップホップを融合したサウンドを奏でるピアノ奏者 / プロデューサーのKieferとのコラボシングル“Fleeting Fantasy feat.Kiefer”をリリース。

幼い頃からクラシッックピアノを習い、その後ジャズに目覚めてビートミュージックへとアプローチしていったKieferの経歴は、幼少期からピアノを弾いていた江﨑文武(Key)や、学生時代にジャズサークルで出会い結成されたWONKの歩みと重なる部分も多い。コロナ禍のリモートワークで制作されたこの楽曲も、そんな両者の個性が絶妙に融合した心地よくも刺激的なトラックに仕上がっている。

今回Qeticでは、プロモーションのために来日したKieferとWONKの対談インタビューを実施。取材前にはジャムセッションで盛り上がったという5人に、楽曲制作のエピソードなど語り合ってもらった。

WONK×Kiefer
「Fleeting Fantasy feat.Kiefer」

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──今回のコラボはどのような経緯で実現したのでしょうか。

江﨑文武(以下、江﨑) 僕がまずKieferさんのことを想像しながら曲を書き始めていたんです。ただ、そこから「一緒にやりたい」って言ったら実現しました(笑)。本当にそんな感じだったんですよ。

──Kieferさんの、どんなところに魅力を感じますか?

江﨑 同じピアノ弾きだし、すごく素敵な演奏をされる方だなと思っていました。ジャズを基調としつつもヒップホップのグルーヴを持っているところなどは、WONKとの親和性もすごくあるなと。メンバーの中でも「Kiefer、いいよね」という話は以前からしていたので、僕の提案もすぐに「いいじゃん!」と言ってくれて。それで合宿の時にみんなで曲を仕上げ、仮歌も(長塚に)入れてもらって。すぐに形になりました。

井上幹(以下、井上) 僕は、今回のコラボレーションが決まる前、KieferさんとMoonchildのツーマンライブ(2022年)を観に行ったことがあって。ドラムとベースとピアノだけの、WONKを始めた頃のようなものすごくシンプルな編成で、とてもかっこいいことをやっていたんです。「こういうの、やっぱいいよな」って思ったところに文武からの提案があったから、個人的にもすごくいいタイミングでした。

荒田洸(以下、荒田) 僕も1stアルバム『Kickinit Alone』(2017年)の頃からKieferの音楽を聴いていて。例えば〈Jazzy Sport〉などで活躍しているような、日本のビートメイカーにも通じるバイブスがあって最高だなと思っていました。なので、今回一緒にやれてとても光栄ですね。(Kieferに)Thank you for coming!

Kiefer Oh, thank you. なんだか褒められっぱなしで照れるね(笑)。

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長塚健斗(以下、長塚) 僕は、2019年にリリースされた2ndアルバム『Superbloom』をよく聴いていました。ヒップホップにも通じるようなピアノのスタイルや、サウンドのチルな感じ、可愛らしいアートワークなど好きな要素がたくさんあって。文武が作ったデモを聴いた時も、「ああ、なるほどね!」と思ったけど、まさかこうやって実現するとは思っていなかったので嬉しいです。

──Kieferさんは、WONKからデモが送られてきてどう思いました?

Kiefer 彼らと共通の友人から音を聴かせてもらって、「いいじゃん、やろう」と即答したんだ。コードチェンジのスタイルもすごく好きだし、おそらくいろんな音楽を聴いて、それらを取り入れて独自のスタイルに昇華しようとしている。そんな彼らのミュージシャンシップにも共感する。

──もともとクラシックからスタートして、その後ジャズに目覚めてビートミュージックへとアプローチしていった経歴は、江﨑さんのバックグラウンドとも通じるものがありますよね。

Kiefer そうかもね。WONKのメンバーと会ったのは昨日がはじめてだったけど、今日ジャムセッションをしたらすぐにいい感じになったからね。例えばコードチェンジの仕方などに何かしら共通点を感じるんだ。

荒田 ジャムセッションはめちゃくちゃ楽しかったし、気がついたら1曲できちゃったもんね。

江﨑 荒田はKieferさんに「スネアドラムの音がグッド!」って言われてたよね(笑)。

Kiefer そうそう。スネアドラムの音作りってすごく難しいんだけど、とても良かったんだ。

WONK – Fleeting Fantasy feat. Kiefer (Studio Live)

──では今回の楽曲“Fleeting Fantasy”は、実際にどのように制作されたのでしょうか。

江﨑 まず僕の大まかなデモトラックをKieferさんに送りました。ピアノを弾いてほしかったし、最初僕は作曲だけ担当して鍵盤は弾かなくてもいいかなと思ってましたね。他にもシンセベースやパッドシンセ、ピアノのアドリブソロも録ってもらっています。Kieferさんはキャッチーなリフを作るのも得意で、そこも僕が彼のことを大好きな理由の一つだったんです。なので、「もし、そういうリフみたいなものを思いついた時は、とにかく自由に盛り込んでください」とメールでお伝えしました。

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Keifer 文武から送られてきたデモの時点で大まかなアレンジはすでに出来上がっていたので、後は全体のダイナミクスを整えたりしている。

江﨑 2番のバース部分をリハモナイズしてもらったのですが、そこが「Kiefer節」全開だったんですよ。そこから、返ってきたデータの打ち込み部分をバンド演奏に差し替えていきました。

荒田 最近ハマっているのは、ハイハットとほぼ同じタイミングでシェイカーを重ねる手法。今回もやっていますし、スナップはいつも通り付けて叩いています。ネオソウルやヒップホップに対する、自分なりの正解を出そうと頑張って音作りをしました。

それと最近、録ったドラム素材は僕の方で大まかにミックスしてから幹さんに渡すようにしているんですよ。最終的にどの素材を使うかは幹さんにお任せするけど、「この曲の自分のイメージはこんな感じです」というのを前もって伝えていこうと。おかげで以前よりも、幹さんとイメージを共有しやすくなりましたね。

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Keifer ドラムを組み立てている時って、サンプルは使ってる?

荒田 使っています。クラップとかシェイカーとかをトリガーで。Kieferさんは?

Kiefer 1stアルバムでは、サンプルをMPCで打ってたね。2ndアルバムからはAbletonのソフトを使ってPC上で組んでいて、最近のアルバムでは生のドラムを使っているよ。

井上 この曲のベースはKieferさんが弾いてくれていたので、僕はどちらかというとミックスに専念しました。今回も実施したドルビーアトモスミックスに関しては、いつもこのスタジオでやっているのですが、今までステレオで聴いてきたものを、その良さを損なわずにどう広げるか? というところが一番のこだわりポイントでしたね。

江﨑 今回、鍵盤のフレーズをパンで飛ばしたりしてますよね。あれはディレイ?

井上 そう。アレンジがシンプルゆえに、小さなディレイが空間をぐるぐると回るようにしたことなど、すごく細かい仕掛けを随所にちりばめていますね。

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Kiefer 僕は今回、初めてドルビーアトモスを体験したんだけど、ストリングスが天から降ってくるようなその立体的な音像に感動したよ。

──この曲のメロディをKieferさんはどう感じましたか?

Kiefer Beautiful! というか、すごく興味深かったね。コード進行がすごく凝っているからこそ、メロディラインが楽曲のナビゲーターとしての役割を担っているなと。

──歌詞は、どんなことを歌おうと思いましたか?

長塚 デモを聴いた時に、いい感じの浮遊感があって。ちょっと内容に若干の色気を持たせたくて。「会えない時も、せめて夢の中で会おう」という恋愛の歌になりました。

──日本語の響きって、Kieferさんにはどう聞こえるのでしょう?

Keifer 楽曲そのものは、いわゆる西洋のスタイルで全て作られているのに、そこに日本語の歌詞が載っているのはすごくユニークだなと思うよ。しかもすごくスムースでセクシーな響きがあるというか。以前、スペイン人のアーティストに歌詞を書いてもらったことがあるんだけど、英語が母国語ではないアーティストは独特の言い回しやイントネーションがあって、とても興味深いよ。

荒田 ちなみに健斗が書く英語の歌詞と、ネイティブが書く英語の歌詞って、どういう違いがあるのだろう。やっぱりちょっと変(weird)だなと感じます?

Kiefer 不思議だとは感じなかったかな。昨日も英語でいろいろ話したけど、アメリカ人と喋っているみたいだったから。

長塚 あははは。

Kiefer 確かに、英語圏の人が使わないような言葉を使ったりする時もあって、それはすごく面白いなと思うけど、決して奇妙だとか不思議だとか思ったことはないかな。アメリカ人の方がよっぽどクレイジーな喋り方する場合もあるから(笑)。

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──最後に、今後みなさんでやってみたいことを聞かせてもらえますか?

Kiefer やっぱり、一緒にライブがやりたいよね。

荒田 僕ら、LAでライブがやりたいです。

Keifer いいね、WONKにLAは合いそうな気がする。

江﨑 ほんと、日本でもアメリカでもどこでもいいので、いつか一緒にライブができることを願っています。

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WONK – Fleeting Fantasy feat. Kiefer (Official Music Video)

Text:黒田隆憲
Photo:寺内 暁

RELEASE INFORMATION

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Fleeting Fantasy feat. Kiefer

WONK

ダウンロード・ストリーミングはこちら

LIVE INFORMATION

WONK LIVE AT ZEPP DIVERCITY

2024年1月10日(水)
開場18:00/開演19:00
会場:Zeppダイバーシティ東京

詳細はこちら

PROFILE

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Photo by Kohei Watanabe

WONK

エクスペリメンタル・ソウルバンド
 
2016年に1stアルバム「Sphere」を発売。
20代前半で音楽シーンに彗星の如く現れた彼らはジャズ・ソウル・ヒップホップなどジャンルという言葉を軽やかに超える音楽性を示し、音楽メディアから高評価を得る。
フジロックやサマーソニックをはじめとした全国各地のフェスから台湾・シンガポール・パリ・ドイツなど海外公演に招聘される。
和田アキ子・香取慎吾・m-flo・iriなど多岐にわたるアーティストとのコラボレーションや楽曲提供を行う。
2022年にリリースされた『artless』は当時最新である立体音響技術”Dolby Atmos”を採用したアルバムとなり、このアルバムの制作過程を映し出した映画「Documentary of artlessー飾らない音楽のゆくえー」がAmazon Prime Video・Hulu・U-NEXTなどで配信されている。
2023年・結成10周年イヤーを迎え、6月1日にイタリアの自動車メーカー「アルファ ロメオ」とのタイアップが発表されるなどいま最も注目されているバンドである。

WONK WEB

Kiefer(キーファー)

現LAのビートミュージックとジャズシーンを繋ぐ重要アーティストKiefer。幼少から大学UCLAジャズ学科までに培われてきたピアノの実力と、10代初期からLowEnd Theory全盛期などのLAビートシーンで育まれてきたヒップホップのビートメイキングの才能が見事にクロスオーバーしたスタイルで才能が開花。
2017年のデビュー作”Kickinit Alone”を皮切りに、これまでLAの活気あるインディー音楽シーンの重要レーベルStones Throwから、アルバム3枚、EP3枚をリリースしてきた。 ソロ作以外にも、プロデューサーとしてグラミー受賞作となったAnderson .Paakのアルバム”Ventura”の楽曲参加や、DrakeやKaytranadaとの共作、MndsgnやTerrace Martinなどのライブバンドメンバーとしても活躍してきた。
2023年9月には最新アルバム”It’s Ok, B U”をリリース。前作のライブバンド編成での作品から、今作は自身のルーツでもあるビート&ピアノのソロ制作のサウンドで原点回帰。ヒップホップを通過したビート・ミュージックと、彼のシグネイチャーサウンドでもあるピアノ/鍵盤サウンドが、絶妙にブレンドされた内容となっている。

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