YELLADIGOSが最新EP『Y.L.F. EP』をリリースした。YELLADIGOSは福岡を拠点に活動するクルーで、メンバーはラッパーのPEAVISRio WoodruffBASHI THE BRIDGE、DJ/トラックメイカーのKenbeat、トラックメイカーのFogの5人。

彼らが活動理念にしているのは2010年代前半に活躍した早逝のラッパー・Capital Steez(Pro Era)も共鳴していたインディゴチルドレンという思想。今回のインタビューではPEAVIS、Rio Woodruff、BASHI THE BRIDGE、Kenbeatに新作の話題を中心に、福岡のヒップホップシーンなどについて聞いた。

INTERVIEW:
YELLADIGOS

新たな名刺を引っ提げ再出発。YELLADIGOS最新EP『Y.L.F. EP』インタビュー interview231219-yelladigos-05

またYELLADIGOSで活動してくれるのが嬉しい

──2018年にリリースされたシングル“It’s Al Right feat. kiki vivi lily”から今作まで結構時間が空きましたね。

BASHI THE BRIDGE(以下、B):それは僕が“It’s Al Right feat. kiki vivi lily”を出した後くらいに音楽から離れていたからなんです。

Kenbeat(以下、K):僕はソロ活動を始めたPEAVISのバックDJをしてたから、BASHIくんとも全然会えてなくて。

PEAVIS(以下、P):そうそう。1人で制作するのも楽しいけど、やっぱいろんな現場でワイワイ楽しそうにしてるクルーたちを見ると「羨ましいなあ」ってちょっと思ったり(笑)。

Rio Woodruff(以下、R):実際BASHIくんがYELLAから離れて、僕自身も色々考えたんです。自分で曲を作ってみたりもして。別に仲悪くなったわけじゃなかったから、普通に遊んだりはしてました。で、PEAVISのソロも落ち着いて、またみんなで集まるようになって。俺らはみんな伝えたいことが一緒だから、1人でやるよりみんなでやるほうが良くないか、みたいな流れに自然となったんです。

B:「やっぱ音楽やりたい」って思ったんです。そこから自然な流れでゆっくり作り始めました。なので、今作はYELLADIGOS再結成的な面もあります。

P:だから今回は新しいことするっていうよりは、YELLAと昔からつながりのあるTWIGYさんやプロデューサーとオーセンティックなヒップホップを作ろうと。トラップとブーンバップと、みたいな。新しい名刺になるようなEPになったと思います。作品自体は1年前くらいには出来上がってたんです。もっと早く出せたけど、クルーとしては久しぶりの作品なのでしっかりと準備して出そうと。

──リリースされて1ヶ月くらい経ちますが、反響はみなさんに届いていますか?

P:周りの人たちが喜んでくれてます。応援されているというか。ソロの時とはまた違う反応。「またYELLADIGOSで活動してくれるのが嬉しい」みたいな雰囲気を感じてます。

──YELLADIGOSはライブもめちゃくちゃかっこいいので、みなさんの活動拠点である福岡の方たちにとっては待望の復活感が強いんでしょうね。

P:自分らがガンガンやってたのが2015年から2018年の3年間で、ちょうどその時期くらいからヒップホップの活動においてSNSやYouTubeが使われるようになってきたんです。自分らは移行期間に活動してたこともあって、やっぱ現場が大事という気持ちもあって。地元でライブを観てくれてる子とかがサポートしてくれてる感じがしてます。

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MVに出てる天道司は中学時代から遊んでる後輩

──“Yelow Flag”のMVで印象的な演技をされている天道司さんは、福岡のクラブの人気者なんだとか。

R:あいつは中学時代の後輩なんです(笑)。昔からずっと一緒に遊んでて。彼は……なんて言ったらいいのかな。人を楽しませるプロというか。

──天道さんがいるとパーティーがめちゃ盛り上がるというお話を伺いました(笑)。

P:最終的には俳優になりたいらしくて。僕らは普段から彼の顔芸をよく見ていたので、今回はお願いしてみました。

YELLADIGOS – Yellow Flag (Official Video)

──“Yelow Flag”のMVは素晴らしいと思いました。面白いしかっこいいし、しかも出演してるのが昔からの友達っていうのもYELLADIGOSっぽい。

P:普通に俺らがラップしてるだけのビデオにするか悩んだんですけど、ちょっと変なことをしたほうが面白いかなと思って。

B:彼はほんとにただの友達ですからね(笑)。

P:正直、最初オファーしたものの半信半疑だったんですよ。でも実際に撮影が始めると想像以上にやってくれて。「お前すげえ。本当にすげえやつだ」って(笑)。彼のことは友達としてずっと大好きだったんだけど、今回の撮影で尊敬に変わりました。

──ちなみに今回EPで最初に作ったのはどの曲なんですか?

R:まさに“Yellow Flag”です。

P:一回みんなでこの曲をスタジオで録ってみて、再出発のスタートラインが見えてきました。

R:みんなで曲作るのが久しぶりだったし、YELLA的にも再結成一発目みたいな気持ちだったから、勢いがあるビートを採用しました。

──リリックの内容はどのように決まったんですか?

B:ビートを聴いた瞬間に、軍団じゃないけど、大勢で何かするイメージが浮かんだんですよ。

P:ワーキングクラスがみんなで立ち上がって、旗を持って世の中をひっくり返す的な。今回のEPはこの曲から始まったので、僕らにとっても重要な曲になりました。

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ソロを経験して書きたいことが定まってきた

──“Be Okay”に客演されているTWIGYさんはみなさんにとってどんな存在ですか?

P:以前TWIGYさんが福岡に住まれてた時に週1で会うくらいの関係で、お世話になってたんです。自分らの話を聞いてもらったり、いろんな話を聞かせてもらったり。

──そういえば、以前PEAVISさんはXで「ZEEBRAさんのラジオにTWIGYさんが出てて聞いてたら、福岡に行ってRapやめようかと思ったけど俺らと接してるうちにもう一度作品作ろうと思ったって言ってくれてて、本当に嬉しかった」と投稿されてましたね。

P:そうです。めっちゃ光栄でしたし、むしろ俺らからすると本当に良くしていただいた感じ。RioはTWIGYさんの作品(TWIGY “DREAM feat. RIO & D.O“)にも参加してますし。

R:ね。お世話になってるという感じです。

YELLADIGOS – Be Okay feat. TWIGY (Official Video)

──実制作はどのように進行したんですか?

B:この曲はYELLADIGOSのメンバーでビートメイカーのFOGの一発目のビートなんです。

P:そうそう。めっちゃかっこよくて「このビートで誰とやりたいか」って話していて、TWIGYさんの名前が挙がったんです。

B:ちなみにTWIGYさんは今東京に住んでいるんですね。で、このビートを聴くちょっと前に俺とPEAVISでTWIGYさんの個展に行ったんです。そこで久しぶりにいろいろお話できて。「また曲やりたいですね」みたいな流れも実はあって。

P:うん。自然だったよね。で、俺らが福岡でヴァースを録って、TWIGYさんに電話してフックだけをお願いしますってオファーしたんです。そしたら最後にヴァースを蹴ってくれて。最初そのことを知らずに聴いたのでめちゃ驚いたし、なにより超嬉しかったです。

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みんなと話してると自然と答えに辿り着ける

──次の“Lonely Planet”はKenbeatさんのトラップっぽいビートですね。

K:これはとあるアーティストの曲をサンプリングして逆再生して、さらにエフェクトをかけて作りました。

B:PEAVISが最初にサビを書いてくれました。

R:タイトルもPEAVISのワードから拾って。俺らは最初にタイトルを決めちゃうことが多いかも。

P:俺は比較的リリックを書くのが早いので。でも“Fukfornia”はRioがサビを書いてくれて広がった曲だったりするし、曲によりけりです。あと内容についても「この曲は明るく」程度に決めておけば、自然と合ってる感じになるんですよね。

──“Fukfornia”はおなじみJazzadocumentさんのビートですね。

P:やっぱジャザくんのビートはめちゃくちゃかっこいいんですよね。俺はソロでも昔からお世話になっていて。

──YELLADIGOSの空気感が伝わる曲だと思いました。

P:こういう曲はソロだと書かないですね。家で1人で曲書いてる自分と、仲間といる時の自分ってちょっと違う。なんかノリが軽くなるっていうか。それがすごい出てると思います。

R:それはすごいわかる。みんなと話してるといろいろすんなりいく。自然と答えに辿り着けるというか。ソロで“Plandemic”ってEPを作った時はリリックにめっちゃ時間かかりました。

P:わかる。話が前後しちゃうけど“Lonely Planet”のサビは10分くらいでできちゃったんですよ。みんなもすぐに書けて録って完成。ソロだったらこんな感じはできないよね。

── 一番の問題はメンバー全員のスケジュールを合わせること、みたいな?

P:まさにそうです。やっぱ俺もRioもBASHIもソロを経験して書きたいことが定まってきた感がある。もう付き合いも長いし、阿吽の呼吸でわかる部分が多いから、曲は結構すぐに書けちゃいます。

最後の曲はキッズの頃に聴いてたジャストブレイズっぽいサウンドで

──“Day & Night”はシリアスな内容ですね。描写がすごくリアルで説得力あるリリックでした。

P:この曲はFogが自宅に来てその場で作ってくれたビートです。リリックはビートの雰囲気に導かれて。この曲で歌ってることは自分たちの身の回りではよくある話なんです。特にRioとBASHIのヴァースは自分たちの話も投影されてる。

B:そうっすね。ラッパーの目線ではなく、サラリーマンとか、リリックでも言ってるシングルマザーとか、そういう人たちの生活の戦いを描きたかったんです。暗くて過酷な世界だけど「お互い生きていこうぜ」っていうか。ラッパーも同じだし。

P:特に今回のEPは、俺らのような普通の人たちでこの暗い世の中をひっくり返そうっていうのが一貫したメッセージで。それをいろんな角度から表現した作品になってると思うんです。

──個人的には“All Over Again”がすごく好きでした。ストリートから叩き上げで出て来た人たちじゃないと言えないというか。

P:この曲はKenくんのビートを聴いた瞬間からヒップホップをテーマに歌おうと決めていたからこういう内容になったんだと思います。

R:そうそう。「EPの最後1曲どうしよう」ってなってた時にこのビートを決めたんだよね。

P:このビートって自分たちがキッズの時代に聴いてたジャストブレイズ(Just Blaze)っぽいサウンド感じゃないですか。だから自分たちの生い立ちとか、どこから来たか、みたいな話をしようってことになったんです。

B:俺らは15歳くらいの頃からストリートにいるので。やっぱいろんなことを見てきたんですよ。良い面も悪い面も。

YELLADIGOS – All Over Again (Official Video)

YELLADIGOSと博多のヒップホップシーン

──みなさんがヒップホップと出会ったのはいつ頃だったんですか?

P:自分は中1〜2くらいにハマりました。(映画)『8マイル』世代なので、ヤンキーの先輩が50セント(50CENT)とかエミネム(Eminem)とかのCDをめっちゃ貸してくれて(笑)。

B:若者の興味がヤンキーからヒップホップに移行し始める時期だったと思います。おしゃれな人は学校にティンバーランドを履いてきたり。姉がDragon Ashが好きだった影響もあります。自然とラップに入っていけた。

R:俺は中学生の頃、ロックバンドやってました。でも周りに『8マイル』で食らった人が多くて自然にヒップホップも聴くようになりましたね。街に出てみんなと出会って。

P:BASHIとは15歳くらいから一緒に活動していました。そのグループが解散した後にRioと出会って別のグループを結成したんですよね。みんな近くにいた。

K:僕だけ年上なんですよ。自分が20歳の時に、15歳のPEAVISがめっちゃライブしてるの観てて。

B:みんな近いとこにいたんです。

──福岡のヒップホップシーンは昔からOlive Oilさんのようなオルタナティブな方と、ハードコアなShitakili IXさんが共存しててすごく面白いですよね。

P:博多はピースな面もハードコアな面もある町です。他県の人から見ると、そこが絶妙というか、オリジナルな感じに映るのかも。RAMB CAMPさんとかにも影響を受けたりしています。

B:自分らもその場でヴァースをカマさないと遊べないみたいな雰囲気ありましたよ。

──それはどういうことですか?

B:もうなくなってしまったクラブですけど、10代の頃は金がなくて。だからエントランスでフリースタイルをカマして、先輩がおもしろがって入れてくれるみたいな(笑)。

P:そうそう。あと有名なラッパーが来たらとりあえずフリースタイルでバトル仕掛けるとか(笑)。

──その話は都市伝説として聞いたことあります(笑)。

B:俺、昔YOU THE ROCK★さんが福岡に来た時、ラップを仕掛けたら「お前らはそもそもビートボックスからなってない!」って2時間くらい説教されました(笑)。

──それはヒップホップいい話ですね〜。

P:こういうぶっ飛んだエピソードなら死ぬほどありますよ(笑)。

K:福岡は独特なんですよ。DJの僕にフリースタイルをしかけてくる先輩とかもいますし(笑)。

P:トラップやドリルやってる若いラッパーもめちゃくちゃいます。たぶんアメリカで言ったらシカゴとかアトランタみたいなノリ。自分たちの一回りした世代のラッパーとかすごいですよ。Yvngboi Pとかはいわゆるポーザーじゃないですし。DJ RYOTAさんがやってるSTAND-BAPってクラブが若い子をどんどんフックアップしてて。その影響ですごい若手が増えてますね。

──みなさんのような叩き上げ世代にとって現在の若手のラッパーはどのように映っていますか?

P:めっちゃ最高だと思います。自分たちもギャングスタな先輩たちに優しくしていただいたんで。それこそ先輩の時代、昭和はめちゃくちゃハードだったと思います。でも平成生まれの自分たちが15〜16くらいだった時とかめっちゃ優しくて。同時にアンダーグラウンドなOlive OliさんやFREEZさんたちにも可愛がっていただいたので、自分たちは福岡のいろんな遺伝子を受け継いだハイブリッドだと思いますね。

B:考えてみるとYELLADIGOSのスタイルはめっちゃ博多の先輩たちに感化されてるよね。

──最高ですね〜。ちなみにツアーの予定とはあるんですか?

R:未定なんですけど全国ツアーしたいですね〜。

──ぜひ東京にも来てほしいです! YELLADIGOSはこれからも定期的にリリースしていくんですか?

P:そうっすね。ゆるく活動していくと思います。今回は復帰作的な作品だったのでヒップホップを全面に出しましたけど、これからは色々なジャンルのビートに乗ってラップしたり、表現したりと、自由にトライしてみたいです。なので、みなさんもゆるく待っていただければ(笑)。

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Text:宮崎敬太
Photo:グレート・ザ・歌舞伎町

PROFILE

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YELLADIGOS

YELLADIGOS、黄色い肌のインディゴチルドレン。
2015年結成。福岡を中心に活動するラッパーのPEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGEと、DJ兼ビートメーカーのKenbeat、そしてプロデューサーのFogからなるヒップホップクルー。
世界の平和を願い、自由と真実を世に伝える為に活動している。
YELLADIGOSが生み出す音楽とそのムーブメントは福岡から世界へ、同じ意思を持つ人々を巻き込み、更に大きくなっていくだろう。
一回り成長して帰ってきたYELLADIGOS待望のニューEP「Y.L.F. EP」を11月1日(水)にリリース。

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INFORMATION

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Y.L.F. EP

2023年11月1日
YELLADIGOS
 
トラックリスト:
1. Yellow Flag
prod. TIGAONE
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Mixed by TIGAONE
 
2. Be Okay feat. TWIGY
prod. Fog
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE, TWIGY
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE, TWIGY
Mixed by Fog
 
3. Lonely Planet
prod. Kenbeat
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Mixed by Fog
 
4. Fukfornia
prod. Jazadocument
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Mixed by Fog
 
5. Day & Night
prod. Fog
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Mixed by Fog
 
6. All Over Again
prod. Kenbeat
Lyrics by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Composed by PEAVIS, Rio Woodruff, BASHI THE BRIDGE
Mixed by Fog
 
All tracks mastered by ENA
Cover Artwork by ZEROSY
Label:YELLADIGOS

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