NYを拠点に活動中のピースの綾部祐二さん。Qeticでは前回、綾部さんにとって特別な映画作品『フィールド・オブ・ドリームス』のロケ地を訪れたときのお話を取材させていただきました。

そして今回、「サンフランシスコからLAまでバイク旅をする」ということで綾部さんに再びコンタクトをとりました。普段、NYで過ごす綾部さんがハーレーに乗って旅したカルフォルニアの景色、そこでの出会いなど、旅のエピソードをたくさん語っていただきました。

Chapter1:旅の動機

──今回西海岸を数日かけてバイクで旅されたそうですね。まずはこの旅の目的やきっかけを聞かせてください。

アメリカ国内のいろんな場所をハーレーで回るというのがアメリカに来て楽しみなことの一つなんです。これまで、ワイオミング、シカゴ、ニューメキシコなど旅してきました。アメリカには「EagleRider」という有名なレンタルバイクの会社があって、各地でバイクをレンタルできるので、いつも現地で借りて、目的地で返すというスタイルで旅をしています。今回は海を見たいなぁと思って、アメリカで海が見れる場所って僕が住んでいる東側かサンフランシスコ側の西海岸になるので、じゃあサンフランシスコの方を回ってみようと計画しました。

バイク乗りに人気の、サンフランシスコからLAまで約700キロ、「ビッグサー」を経由するコースを走ってみたいとずっと思っていたんです。

それと、僕は学生時代からスケボーカルチャーに憧れていて、ヒップホップも好き。LAは映画のメッカというのもあって、西海岸の文化にも昔から興味を持っていたので、よし! 行ってみようと思って実行した感じですね。

TOAL:446 miles(718km)
◯#1 San Francisco→(79ml)
◯#2 Santa Cruz→(49ml)
◯#3 Monterey/Carmel→(187ml)
◯#4 Los Alamos→(46ml)
◯#5 Santa Barbara→(85ml)
◯#6 Santa Monica/LA→ GOAL!!

Chapter2:700キロの旅、まずはサンフランシスコから

綾部さんがバイクで旅したコースを地図でたどりながら、印象的だったスポットについて語っていただきました。

#1 San Francisco

──700キロのバイク旅、スタート地点となったサンフランシスコはどんな街でしたか?

サンフランシスコは、一つのストリートに古着屋さんやレコード屋さんが集まっている場所があったりすごくカルチャー的な香りがする街ですね。今回立ち寄ったメインのストリートは、センスの良いお店がたくさんあって、ただなんとなく歩くだけでも十分楽しむことができます。

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サンフランシスコのイタリアン、予約が取れないお店「Flour + Water」

今回、ランチで立ち寄ったレストランはすごく人気のイタリアン。ここで、人生で一番美味しいサラダに出会いました! パスタをはじめ、ほかのお料理も全部美味しくって感動しましたね。

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──街並みもランチも、素敵ですね!サンフランシスコといえば、別の側面でシリコンバレーのイメージも強いですね。

そうですね。こういったカルチャーっぽい側面もありつつ、シリコンバレーのような世界のIT企業が集まる街というもう一つの顔もありますよね。僕も以前、GoogleやFacebookの本社へ訪れたことがあったのですが、もうスケールがすごかったです……! 会社の敷地自体が一つの街になっているような規模感なんです。Pixarにも取材で行ったことあるのですが、オフィスもめちゃくちゃユニークかつクールでしたね。

サンフランシスコは、こういったITエリートが住む場所から、カジュアルなストリート、ホームレスのいる地域までとかなり各エリアで表情が違うんです。それと、気候の面でいうとサンフランシスコって温かくて晴れが多い街だと思っている人が多いんじゃないかと思うんですけど、全然そんなことなくて、めちゃくちゃ寒くて霧が多く、“クラウディ”な感じなんです。ここからLAへ向けて走っていくうちにどんどんその気候も変化していきます。バイクで走りながらその気候の移り変わりを感じるのも、バイク旅の面白いところですね。

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フルハウスのロケ地

この写真、見る人が見たら「あ!」って反応するはず! ここは90年代の大人気海外ドラマシリーズで、僕も大好きな「フルハウス」のオープニングに登場している街並みです。撮影スポットとしても有名なんですが、僕も一度訪れてみたかったので、この街並みを前にして思わずしっかり記念撮影しちゃいましたね〜(笑)。

#2 Santa Cruz

──次にストップした街はサンタクルーズですね。ここではまずどこへ行かれたんでしょうか?

サンタクルーズに到着して、まず立ち寄ったのが、「Santa Cruz Beach Boardwalk」という遊園地です。地元の人で賑わう場所で、海に隣接しているというロケーションが最高。アメリカって、海の近くに遊園地というスポットがよくあって、それもいいなぁと思いますね。

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──サンタクルーズといえば、スケボーのメッカですよね。

そうなんです! 僕は中学生の頃、スケボーが大好きだったので、憧れの場所でした。そして今回、ずっと行ってみたかったショップ「Santa Cruz Skateboards」へ行くことができました。当時、スケボーのブランドといえば「Santa Cruz」という感じで、デッキやロゴのTシャツも持ってますし、昔スケボー屋のVHSで見ていた映像もこのあたりの風景でした。月日が流れて大人になり、実際ここへ来れてうれしかったですね。少年時代のことや、アメリカと日本の距離を思ったり、感慨深かったです。

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#3 Monterey/Carmel

──お次はモントレーという街ですね。観光スポットとして有名な場所というよりカルフォルニアの小さな港街という感じでしょうか?

まさに、ここは日本でいうと葉山みたいな雰囲気ですね。港にヨットやクルーザーが停まっている、静かな港町です。町の人たちもみんな顔見知りという感じの、アットホームなムードでした。

──おすすめスポットなど見つかりましたか?

モントレーでは、何か食べたいなと思ってふらっと寄った「Fandango Restaurant」というレストランがとても良かったですね〜。お店の方にバイクでサンフランシスコからLAを目指して旅しているんだという話をしたら、デザートをサービスしてくれたり。地元の人たちに愛されているレストランという雰囲気で、フレンドリーで温かかった。もちろん料理も美味しくて、これぞ旅の醍醐味という出会いでした。

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Big Sur

──そしてついに! 「ビッグサー」ですね。

そう、このコースのメインイベントと言っても良い「ビッグサー」。この絶景を見たくて今回旅を計画したんですが、なんと……ものすごい量の霧で全然全景が見えなかったんです(笑)。さっきも言った通り、サンフランシスコからこのビッグサーにかけては寒い上に霧が多くて、8月でもライダースが必要なほど。途中、波の音が“ザザーっザザーっ”って聴こえてきて、まるで日本海の海沿いを走ってるような感覚になるくらいの霧で、本当に大変でした。

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少し走って晴れ間が見えてきた頃、ビッグサーの先のビーチで出会ったのが大量のゾウアザラシ! 実は100年くらい前はあたりまえのようにこの辺りで寝ていたゾウアザラシが突如いなくなり、ここ15年くらいで再びここに寝にくるようになったそうなんです。全然知らなかったからびっくりしました(笑)。

#4 Los Alamos

──次のスポット、ロス・アラモスは少し内陸に入ったところに位置しますね。お目当ての場所があったのでしょうか?

ロス・アラモスは知人にオススメのモーテルがあると教えてもらい、そのモーテルを目指して走らせたんです。丘の上のまわりには何にもない場所にポツンと建っていて、聞いた通りとても素敵な場所でした。

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──旅の途中のモーテル選びも旅の醍醐味ですね。

今回の旅も良い宿に恵まれました。この日は夕方にロス・アラモスに着いて、ここに泊まったんですが、アメリカでは少し暗くなるとバイクで外を走るのは本当に危険なんです。日本ではちょっと想像できないかもしれないんだけど、バイクのライトに反応して鹿が全速力で飛び出てくる。だから、アメリカ旅は夕暮れ前にはホテルに着く、っていうのが鉄則です。

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これはモーテルオリジナルのTシャツ。ホテルのイメージに合わせてデザイナーに頼んで作っているというグッズもおしゃれで、訪れる人に人気なんだそうです。

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#5 Santa Barbara

──だんだんLAに近づいてきましたね。

気候も暖かくなってきます。次にストップしたサンタバーバラでは、僕が好きなスケボーカルチャーの好きなところを象徴するような風景に出会いました。これ、少年たちが自転車でここまで来て、スケボー滑って、そのままTシャツとスニーカーを脱いで海に飛び込んでいった後の写真なんですが、最高じゃないですか!?  NYにもスケーターはたくさんいるんですけど、こんな風にそのまま海に飛び込んでいくのは西海岸のスケーターならでは。これは、この旅のベストショットですね。僕が好きな西海岸のカルチャーが詰まっています。

そしてレストランでもシーフードのメニューが基本で、ちょっとしたものがオシャレな料理が多いですね。モントレーが葉山みたいな雰囲気と言いましたが、サンタバーバラは日本でいうと、鎌倉とかそんな感じの雰囲気ですね。

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#6 Santa Monica/LA

──最終地点LAに到着! LAの街は綾部さんから見てどんな雰囲気ですか?

サンフランシスコの“クラウディ”な気候とは一転して、LAはカラッと晴れた“サニー”。同じ西海岸でも雰囲気が全然違うんです。LAでは、ベニスビーチの海岸を歩いたり、街中を探索したり、今回もLAのムードをじっくり味わいました。

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ここは何年か前にふらっと入って以来、何回か行ってるお気に入りのタコス屋さんです。LAはメキシカンが多いというのもあり本格的! ニューヨークよりメキシコに近い西海岸のLAの方が圧倒的に美味しいんです。

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──LAは古着屋が多いことでも有名ですよね。

たくさんありますね〜。洋服が山積みにされてるようなラフなお店から多種多様にきっちりカテゴライズされているお店まで様々。きちんと分類してるお店ってオーナーが日本人ということがよくありますね。

ピーターパンが目印の古着屋さんは、映画、音楽、スポーツとありとあらゆる種類のビンテージTシャツがあって宝の山でした。ジャンル、年代別に分けて並べられていて面白かったです。根気よく探せば自分の好きなものが必ずみつかります。

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これは、壁画がカッコ良かった古着屋さん。閉まっていたので入れなかったんですが、“これぞLA”という雰囲気で惹かれました。

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──何度もLAを訪れている綾部さんが特に好きな風景やお気に入りの場所ってどこでしょうか?

ベタだけど、サンタモニカ・ビーチと海岸沿いの遊園地「パシフィックパーク」はLAに行くと必ず夕暮れの時間に立ち寄る場所です。若いカップルがただ座って海を眺めていたり、すごく良い雰囲気なんです。夕暮れ時の海の物悲しさと、煌々と光る遊園地とのアンバランスなコントラストが良いんですよね〜。その後は、サンタモニカ周辺のおしゃれなレストランへ。このコースが最高ですね。

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Chapter3:バイク旅の魅力、これからの展望

──今回旅をされたサンフランシスコやLA、綾部さんが暮らすNYの違いってどんな風に感じられましたか?

端的に表すとサンフランシスコやLAはラフに気楽に楽しめる場所。NYはクールに渋くキメる場所ですね。西海岸のサンフランシスコやLAでバシっとしたスーツで歩いてると“やりすぎ”な感じになっちゃいますけど、NYではそれが自然にできる。僕はNYのそういうところが好きですね。

あと、気候や治安も違います。サンフランシスコは特にホームレスが多いというのは聞いてたんですが、実際目の当たりにして経済的な格差というか、状況の過酷さを実感しました。コロナの影響もありますよね……アメリカはドラッグへの距離も近いからそういった意味でも危険なエリアが混在しているというのが現実です。西海岸のヒッピーカルチャーの名残を随所に感じますし。治安良いよ、とは口が裂けても言えない場所というのがあります。

キラキラした部分だけじゃなくて、そういった行ってみて肌で感じないとわからない、伝えられないことをみなさんにも感じてもらえたらいいかなと思います。

──バイクで次目指したい場所はどこなんでしょうか?

行きたい場所はたくさんあって、だいぶ先まで計画は立てているんです。まずはラスベガスからユタに行くルート。砂漠の中を通って、岩肌の街を進んでいくコースです。あとはアリゾナ、モンタナなどですね。

バイクでビバリーヒルズを走ったこともあるんですが、映画やドラマのワンシーンに登場した場所にいま自分はいるんだなと思うと、アメリカにいる実感というか、アメリカに来たんだなぁと感慨深い気持ちになります。

また、内陸部の自然の中にいくと、アメリカってすごいんだなって思うのと同時にアメリカってでかいんだなって身を持って感じます。同じ国なのに違う惑星くらい全く別の世界が広がっているんです。なんなのこれ! ていう。高揚します。

国土が数十倍もあるのに、日本の人口の約3倍くらいしか人が住んでないアメリカ。手付かずの自然と人が住む街との差の激しさも、想像を絶するすごさですよね。

──車で旅されることもあるんでしょうか?

ドライブもします! 僕は今免許を持っていないので友達の運転で行きます。車での旅は、仲間と一緒に音楽をかけながら、お菓子を食べながら景色を眺められるのが最高ですよね。そしてなんと言ってもアメリカを舞台にしたロードムービーをたくさん見てきた僕としては、さながら映画の中にいるような気分になれるし、アメリカ各地をドライブできるのは夢のようです。冒頭でも話したように、アメリカでは現地で車やバイクを調達して各地を旅するというのが一般的で、地域にもよりますが、リーズナブルで気軽にレンタルできます。

──バイクの旅は、ドライブとはまた違って一人で没頭できるというか、より自然や街の空気を直に感じられるのではないかと想像します。

バイクの後ろに積めるのは限られた量なので、その限られた少ない荷物に何を入れるのか? 何が必要か? を考える時間や、これから始まる旅について思いを巡らせる時間も好きですね。身体全体で風や匂いを感じられるところも魅力です。これからも、もっといろんな土地を巡っていきたいなと思います。

──これからも綾部さんのアメリカでの生活、旅、体験のお話を伺っていきたいです! 綾部さんがみた景色をまたシェアしてください。ありがとうございました!

写真提供:YUJI AYABE
取材・文:Qetic編集部