青森・奥入瀬渓流沿いに佇む唯一のリゾートホテル、星野リゾート奥入瀬渓流ホテル。“奥入瀬で過ごす時間の価値”を提供しているという同ホテルの総支配人に、ホテルが提案している様々なアクティビティや新たにオープンしたフレンチレストラン、そして奥入瀬渓流を車で訪れることの楽しみについて伺った。

水の近さに驚く約14㎞の奥入瀬渓流

「国立公園内に建つ唯一のリゾートホテルである私どものコンセプトは、渓流スローライフです。リゾート自体を点ではなく面でとらえ、ここで過ごす時間の価値をご提供させていただきます」

星野リゾート奥入瀬渓流ホテルを一言で語ってほしいという無理難題に対して、総支配人の山下麗奈氏は実に的確な答えを返してくれた。あらゆる説明が見事なので、以降も総支配人の案内に従って進めていくが、まずは雄大な自然をたたえる十和田八幡平国立公園に属する奥入瀬渓流について触れる。

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青森県の東西ほぼ中央に位置する十和田湖を水源に、八戸あたりまで約67キロをたどって太平洋に注ぎ込む奥入瀬川。その源流に当たる十和田湖東岸の子ノ口から焼山までの北東約14kmが奥入瀬渓流だ。特別名勝および天然記念物にも指定されているこの渓流の特徴の一つは、流れに沿った自動車用道路と散策用の歩道が整備されているところだろう。

一般的に渓流とは、人の侵入を拒む山奥の谷川を指す。そこに行きたいなら登山同様の装備が必要になるが、奥入瀬渓流に限っては十和田湖との高低差が小さく、通常の山間部よりは比較的道路を通しやすかったのかもしれない。訪れる者はその恩恵に与る形で、白銀の輝きを放つ清らかな水の流れや14の滝。そして秋はブナやカツラの木々の黄葉を楽しめる。実際に渓流沿いの道を走ると、あまりの水の近さに驚くはずだ。それだけでも非日常の体験と言えるだろう。

エリア全体をクルマで存分に味わってほしい

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次に、渓流スローライフという耳慣れない言葉について説明をうかがった。すると総支配人は最初に、二泊三日の滞在を奨励していると切り出した。
「何はともあれ、奥入瀬渓流の自然を体験していただきたいので、1年を通じて様々なアクティビティをご用意しております。特に人気なのは、夏場なら人が少ない時間の午前4時50分から始まる渓流モーニングカフェ。こちらはほぼ毎日、定員50名が埋まってしまいます。また、奥入瀬渓流は国内1800種の内300種が生息する苔の聖地でもあるので、各部屋に備えたルーペをご利用していただく苔さんぽも好評です。こちらは雨の日も楽しめます。苔を観察しながら歩くと100m進むのに1時間かかったりもします。そうした約14㎞の奥入瀬渓流のマクロとミクロの両端に目を向けてもらうのが、私どものアクティビティの特徴です」

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▲総支配人・山下麗奈氏

さらに総支配人は、星野リゾート奥入瀬渓流ホテルにクルマで訪れるメリットを語ってくれた。
「奥入瀬渓流は走っても歩いても素晴らしいですが、クルマがあれば十和田湖の北約20㎞の十和田湖まで足が伸ばせるでしょう。9月末になれば山の高いところで紅葉が始まります。さらにホテルから30分ほどの場所には十和田市現代美術館を始めとした、十和田の人の文化に触れられる場所がたくさんあります。ということは、私どもが奨励する二泊三日では回り切れないほどのおもしろさがここにはあって、リゾート自体を点ではなく面でとらえるというのも、奥入瀬渓流を含む国立公園全体を存分に味わってほしい。特にクルマがあればなおさらという気持ちが原点になっているのです」

Text by 田村十七男

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