アヴァンギャルドでエロティック! 食虫植物の魅惑。

様々な形態とその罠を知り、ますます食虫植物に興味がわいてきた。ここからはお待ちかね(?)木谷さんを虜にしてしまった食虫植物の魅力をたっぷり語ってくれた。

◆反逆の精神が宿っている
通常なら食物連鎖のピラミッドにおいて、底辺の存在である植物。それなのに上位である虫を捕えて食べてしまう。さらに栄養が乏しい土地でも虫を食べ、他の物を糧にして生き延びる術を持っている。当時、辛いことが多く上手くいっていなかったという木谷さんは、そんな食虫植物の生きることへの執念を感じさせる姿に勇気づけられたそうだ。

◆機能美
虫を捕まえるからこそ、罠だからこその美しさがある。その形になったのには意味があり、だから美しいと思えるのかもしれない。美しいから虫を捕まえられる、虫を捕まえるから美しい。

◆官能美
例えばハエトリソウの英名『ビーナスフライトラップ』。ビーナスには女性器という意味もあるらしく、“その形”に似ていることから発見者が名付けたのだとか。また、刺毛がビーナス(女神)のまつ毛のように見えるから、と言う説もある。どちらにしてもちょっとエッチで素敵だ。

また、食虫植物は形、色、粘りなどもエロスを感じさせる。そうしたセクシーさも虫を、人を惹きつける一因かもしれない。

木谷さん「食虫植物は“セイ”を感じさせます。漢字で書くと“性”であり、“生”でもあります。この二つは同じことだと思うんです。食虫植物ほど生きることを感じさせる植物はないでしょう。パイオニアプランツとも呼ばれていて、山火事の後のような他の植物がまだ生えていない、生えられないようなところでも育ちます。食虫植物が生えているのは主に湿地や岩場。栄養が乏しい土地、いわゆる痩せた土地に生息するものが多く、不足する養分を捕虫によって補っていると考えられます。虫を食べてでも生き残ってやる! というガッツを感じますね」

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食虫植物を観察しながら死ねたら本望!?

食虫植物は5~7月が観察のベストシーズン。さらに、湿っていて低い場所に生えることが多い。 湿度が高い土壌に腹ばいになって観察していると、上からは太陽が降り注ぐ。皆さん熱中症になりかけながら観察するそうだ。立ち上がる時にクラクラしてしまうこともあるらしいが、愛好家の方々は『食虫植物を観察しながら死ねたらいいなー』と話しているのだとか。なんという食虫植物への愛情だろうか。泥まみれ、水浸しになるそうだが、とても楽しいと木谷さんは目を輝かせていた。

ちなみに、食虫植物は色々な植物を育ててきた園芸家達が最後に迷い込む“袋小路”らしい。育てるのが難しく、行けども行けどもゴールはない。20年以上のベテラン園芸家さんでも育てるのは難しいとか。そんなところにいきなり飛び込んでしまった木谷さん。今では立派な食虫植物マニアだが、当初は園芸用土という存在すら知らず、学術名が飛び交うマニア達の会話にあっけにとられたらしい。

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しかし、現在ご自宅のベランダには食虫植物の鉢が所せましと並べられ、園芸店か植物園のよう。

木谷さん「最初の頃は(食虫植物を)すっごい買って、すっごい枯らしちゃいました。でも、折角育てるなら、簡単なものより自分が好きなものをお勧めします。難しいものだったとしても、愛しているから頑張れるということもあると思うんです。人と一緒ですね(笑)ずっと一緒にいると、感覚として『この位置がいいよね?』とか、『もう少し水欲しい?』とか、分かってくるんです。言語化しにくいんですが、そういうところが栽培においては大切ですね」

食虫植物が望むことを感じ取り、尽くす。まさに“奴隷”状態だが、木谷さんは楽しそう。食虫植物を育てられるようになると、他の植物がとても簡単に感じられるそうだ。難しいからこそ、ロマンがあるのかもしれない。

ちなみに『虫をあげたほうが良いのか?』という質問を良くされるそうだが、食虫植物は虫のみを食べてエネルギーにしているのではなく、基本的には光合成能力がある。自分で栄養分を合成出来るので特に必要ないとのこと。虫を捕まえて食べることは非常にエネルギーがいるので、与えすぎると弱ってしまうこともあるらしい。

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