数少ない日本人の活躍も紹介したい。
街の中心地から少し離れた場所にあるCASA400というデザイナーズホテルのラウンジで開催されていたデイイベントでは、日本のレーベル〈Foureal〉が参加していて、Naohito Uchiyamaのライブを聴く。パーティーというより、いろんなレーベルがブースを出し、それぞれからアーティストが出演し、プレイを行いながら情報交換を行ったり、プロモーションを行う言わばレーベル同士の交流の場となっていた。

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もう1つは運河を結ぶ無料フェリーに再び乗り、降り立ったすぐ先にあるTorenで開催されていたWAKYO&VASTのパーティー。先に述べた通り、<ADE>オフィシャルパーティーの中で唯一の日本人オーガナイズとなったこのパーティーはSUSHIと日本酒を振る舞いながら、A Guy Called Gerald(ア・ガイ・コールド・ジェラルド)をゲストに3時間のエクスクルーシブセットを披露。今夏にオープンしたばかりのTorenはオーガナイザーであるKnock氏が以前からパーティーをやりたいと思っていた場所で、タイミングが<ADE>と重なったこともあり、正式な段取りを踏んで、開催へと至った。オフィシャルとして認定されるには企画書を提出し、審査を受け、通ったらようやく認定される。こういった情報からも<ADE>がいかにダンスミュージックビジネスを真剣に捉えているかが伺える。

ガラス張りに高い天井、広々としたラウンジ、壁にはアート作品が展示され、ラグジュアリーなライティング、デコレーションアートが設置されたオープンエリアは天気が良ければとても気持ちが良いであろう開放的な空間が広がっていた。

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Geraldは8月の来日時に聴いたばかりだったが、さすがの安定感とオーラを感じさせるプレイだった。サンセットパーティーに合わせたライトめなセットから深い時間になるに連れて徐々に重低音でディープなセットへ。DJブース越しの運河と外の景色を見ながら踊るのは最高に心地良かった。
個人的にはRED PIG FLOWERのDJがとても好みだった。かわいらしいビジュアルとは裏腹な力強さとストイックさ、アグレッシブでリズミカル、フロアーの雰囲気が良かったのは彼女のプレイ中に完成されたものだと思う。来場者には日本人も多く、日本人ならではの温かみある演出はとても居心地が良く、緊張しっぱなしだった<ADE>の中で一番ほっと出来た瞬間だった。

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先に述べた“アムスミラクル”の様な良いことばかりではない。個人的にどうしても行きたかったMoodymann(ムーディーマン)、Nina Kravizなどが出演するDEKMANTELのパーティーは、キャンセル分の当日券が出たかどうかも教えてくれないまま、当然の様に会場前で門前払いとなった。この他、〈Ostgut Ton〉などDEKMANTELのパーティーは全てSOLD OUTになっていたと聞く。人気のパーティーのほとんどが前売りの時点でSOLD OUT、当日入場は一切受付けない。
たとえキャパシティーに達してなくても入場させないというのが<ADE>ポリシーのようだ。ここでも日本の常識は完全に覆されてしまった。

今回で18回目となった<ADE>はアムス市内のクラブ80ヶ所で450のパーティー、2000組以上のアーティストが出演し、30万人以上という過去最高の動員数を誇った。今年は政府のバックアップがなくなり、メインスポンサーにサムスンが付いたことにより、エントランスフィーの急激な値上がりが気になったが、どのパーティーにおいても必要以上に収容することはせず、音を楽しめる環境を徹底しているように思えた。

<ADE>は元々コマーシャルなダンスミュージックフェスという歴史があるようで、前回行ったときもアンダーグラウンドなアーティストからは否定的な意見が多く見られたが、今回はアンダーグラウンドなコンテンツが増えており、その背景として<ADE>のディレクター陣の中によりアンダーグラウンドな音楽をフォーカスするような動きがあったとも聞いている。風営法問題でシーンそのものが危うくなる日本とは大きく異なり、考えさせられる事も多い。日本で生まれ日本のシーンで育ったのでこの状況を打破するのは一人一人の意識をより高く持ち皆で協力して行く必要がある様に思った。“と、参加していた〈Foureal〉のShinya Okamoto氏は語る。

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海外(特にヨーロッパ)へ行くとクラブカルチャーの捉え方の違いに落胆させられることがある。求める側であるオーディエンスと受け入れる側であるクラブやアーティスト、そして政府までもが同じ目線でいれるということは、パーティー全体に圧倒的なクオリティーの違いが出る。日本においては奇跡の様にさえ思える。存在さえ危ぶまれている日本において、自分のルーツにさえなったこのカルチャーを終わらせたくはない。外で学んだ多くのことを自分の言葉で可能な限り伝え、広げていきたいと強く思った。

Text by Kana Miyazawa
Photo by Tsuyoshi Yamada , De Fotomeisjes(RA)
Special thanks to Knock(vast) , Shinya Okamoto(FOUREAL)

ライタープロフィール

宮沢香奈(Kana Miyazawa)
セレクトショップでのプレス経験をもとに、インディペンデントなPR事業をスタートさせる。国内外のブランドプレスやパーティーなどのファッションPRとクラブイベントや大型フェス、レーベル、アーティストインタビューなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。今までにBIG BEACH FESTIVAL2009, 2011、rural2011,2012、XLAND2012、横浜ベイホール15th、ageha 10th anniversaryなどを手掛ける。ファッションにおいては、2012AWより国内初となるUNITED NUDEのPRに就任。その他、フリーライターとして執筆活動も行っている。