ジャズヒップホップ・シーンを先導してきたShinSight Trioのトラック・メイカー、Shin-Skiによるソロ・プロジェクト、ALMA DE STELLA(アルマ・デ・ステラ)の傑作1stアルバム『Zenith Sky』が届いた。チルウェイブを経由した幻想的なドリームポップとでもいうべき、シンセサイザーが奏でるリズミカルなメロディが、無国籍な風味を醸し出すエレクトロ・ヴォイスと絡み合い、極彩色な夢の世界へと誘う音絵巻に仕上がっている。DE DE MOUSEファンが共鳴することはもちろん、capsuleやダフト・パンク好きな20代、TM NETWORKで音楽に目覚めた30〜40代。そして、シンセポップ好きなコアな洋楽ファン層へ刺さるであろう、ジェネレーションを超越したエレクトロニック・ミュージック作品が完成したことが興味深い
「1曲1曲が、⾔葉で紡がれる物語ではなく、個別の絵のような感覚。僕が想像している風景や情景を音だけで描いた絵画だと思ってくれればいい。このアルバムは“画集” みたいなもの」と、Shin-Skiが語る通り、そもそも音楽とは、映画、小説、TVドラマ、コミック、スポーツ、絵画などなど、あらゆるカルチャーに溶け合える存在だ。空をテーマに制作されたという『Zenith Sky』では、人間の創造力のスイッチを刺激し、固定観念を解放するかのような快楽ポイント高い1枚となっている。琴線を刺激するせつなき音像が、人ぞれぞれの妄想センサーを喚起するであろう濃縮されたイメージの世界。リスナーごとに十人十色な物語が繰り広げられていくのだろう。
Shin-Skiによる制作風景をのぞいたわけではないが、本作を聴いていると、クリエイターがモニターと対峙しながらデスクトップ上で繰り広げられる音楽制作現場が思い浮かんだ。音のパーツをデータとしてハードディスクに取り込み、波形によって可視化されるデジタル・オーディオ・ワークステーション時代、真っ白なキャンバスに絵を描くことと、メロディやトラックを譜面へ埋めていく作業は、紙一重なスタイルなんだなと『Zenith Sky』を聴いて感じたのだ。しかしながらアウトプットされる制作物は、見える作品(アートワーク)と、見えない作品(音楽)で提供される面白さを、ALMA DE STELLAは本作『Zenith Sky』で、意識的に表現されていることが興味深いなと思った。
さらに、見える作品(アートワーク)と、見えない作品(音楽)を融合したイメージビデオ“Skyjumper”は、iPhoneのみで撮影されていることに注目したい。都内近郊と関西近郊の道路と空に焦点を当てた作品で、まさに楽曲で描かれたテーマ性である、瞬間移動を可能とする不思議なチカラ=Skyjumperが、縦横無尽に日常空間を走り抜けていく動画に仕上がっている。
“Skyjumper”
全12曲収録、まるで絵画のような音絵巻を展開するアルバム作品『Zenith Sky』。聴き所は、ピアノが優しくリズムを刻んでいく“Planet Promenade”、イントロのフレーズから泣ける“Skyjumper”、疾走感に溢れたハイエナジーなポップチューン“Ozone Surfer”、おだやかなる至福世界が描かれる“Peaceful Void”、沖縄音階が心地良い“Photon Swan”、次なる世界へのトンネルを表現する“Aero Stop”、音のミストを全身で浴びるかのような“7 Drops of Your Rain”、元気いっぱいトライバルな“Ray of The Sun”、あらゆる世界の音がごった煮状態な“Celestial Timbre”、ゆるふわドリーミーな“Dream Flight of A Niece”、脳みそグッドハッピーな“Air Trap”、そして天空へとたどり着いた“Zenith Sky”などなど、個性豊かな楽曲たちによって彩られたアルバム作品となった。
サウンドと呼応するSF的な世界観を醸し出すジャケットアートワークは、『大友克洋GENGA展』メインビジュアル、『ルミネ×エヴァンゲリオン』アートディレクション、『ERECT Magazine』のアートディレクションを手がける話題のコラージュ・アーティスト&グラフィック・デザイナー、河村康輔氏が手がけている。Shin-Ski本人による楽曲解説と共にまるで画集のような音楽作品『Zenith Sky』について、コメントが届いてるので、チェックして欲しい。
(text by fukuryu)