EVENT REPORT

Alternative Tokyo

Photo by Yukari Morishita
Text by 名小路浩志郎

     

今年で4回目の開催となる<Alternative Tokyo>が、3月16日(土)に開催された。新木場から渋谷WWW、WWW Xに場所を移して開催された今回、はっきりいって「神回」であったと断言してしまおう(来れなかった人、ごめんなさい)。その現場をレポートしたい。

「Tokyoに集る表層的なものだけでは計れない人々の考えや楽しみも広義で探って行く」

ホームページの開催趣旨にはこう記されている。いわゆるキャンプ型のフェスの目的が「開放」なら、<Alternative Tokyo>の目的は「探求」だろう。ART展示やトークセッション等を通じて、時代の流れに捕われない普遍的な都市カルチャーを探求する、それが<Alternative Tokyo>である。

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その良質の音楽へのこだわりは、トップバッターとして登場したカネコアヤノからもひしひしと感じられた。バンド編成による彼女を見るのは初めて。CDの印象、可憐なルックスからはちょっと想像できないほど、これはもうパワーポップの世界だ。バンドとの息もぴったりで、MCをまったくはさまず、腰に直撃するビートをぶちかます。「恋しい日々」「エメラルド」といったクセのある楽曲もこのバンドセットだとまったく違ったパワーにあふれた仕上がりになるのが本当に素晴らしかった。

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続いてはイ・ラン。ライヴを見るは今年の1月以来だけど、飄々としていているが毒がある。毒っ気とスウィートなサウンドが混じり合っているのが、類まれなる彼女の個性といっていいだろう。

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とはいえイ・ランを途中で抜けて、近田さん・曽我部さんのトークショーに潜り込んだ。「ポピュラーミュージックの行方」というトークタイトルが妙にそそったからだったが、これが大当たり。オルタナティブな立ち位置ながら、ポピュラーミュージックや歌謡曲と密接に寄り添って音楽活動を続けてきた2人ならではの、奥深い内容。2人が歌謡曲について語った「音楽は料理に似ている。まずいと食べられない(近田)」「だから歌謡曲に近いですね。人に饗するものである、ということ(曽我部)」は、本質を見据えたベテランらしい発言であった。いまの音楽ビジネスの状況から、話は2人の共通項でもあるラップの話に。海外のラップが「歌」になってきているという示唆も、興味深かった。

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トリプルファイヤーを挟んで、次は折坂悠太。注目のアーティストだけあって、さすがに超満員である。“揺れる”からしっとりと始まり、“坂道”“さびしさ”といった佳曲をギター一本で紡いでいく。とにかく声が素晴らしくよく響く。最後は会場とのコール&レスポンス、そして折坂は謎のダンスアウト、そのままステージを去っていくという、なんとも不思議で、でも心が温まるステージだった。

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曽我部恵一 抱擁家族は、今回初めてのステージアクト。昨年末、全編ラップの『ヘブン』、さらにクロスオーバーな『There is no place like Tokyo today!』の2枚をたて続けに発表した曽我部だけに、なにをやるのかと期待して見たが、驚いた!

なんと曽我部はドラムを叩きながらラップしているのだ!

他のメンバーは、サニーデイ・サービスのサポートでも活動している細野しんいちがキーボード、平賀さち枝がギターとボーカル、そしてスティール・パンやマンドリンでマルチに音を彩るMC.sirafu。MC.sirafuは、片想い、ザ・なつやすみバンド、うつくしきひかり、ceroやoonoyuukiといった現在の音楽シーンにおける重要バンドの数々に在籍する注目の存在で、彼の存在がバンドにしっかりとした色を生み出していた点は見逃せない。荒削りではあったが、いいものを見た。

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青葉市子のステージは、例によって静謐なムードにあふれた、見事なステージだった。“いきのこり●ぼくら”“iam POD(0%)”“四月の支度”といった、アルバム『0』からの曲が多い。MCでは折坂悠太を毎日聴いているとコメントし、ついつい“旋毛からつま先”の替え歌を披露したりするお茶目さを見せた。

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近田春夫はもともと自身のユニット「活躍中」での出演の予定だったが、急遽、近田春夫+DJ OMBの2人でのアクトに。とはいえ会場をとことん盛り上げる近田っぽさがしっかり発揮されていた。

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続いては、若手人気ジャズ・ドラマーとして引っ張りだこの石若駿が、自身のライフワークと語るSONGBOOK PROJECT。メンバーは、石若駿(Pf)、ceroでおなじみの角銅真実(Vo,etc.)、吉田ヨウヘイgroupの西田修大(Gt)の3人。とにかく石若のローズと角銅の透明感のあるヴォーカル、そしてエクスペリメンタルなギター・ワークで全体を包み込む西田の息がぴったりすぎる。ゲストとしてcero等で活躍する光永渉(dr)、Marty Holoubek(b)も参加。静謐で緊張感にあふれた世界観が伝わってくる、素晴らしいアクトであった。

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ラストは蓮沼執太フィル。こけら落としとして登場以来とのことで、WWWへは4年ぶりの出演。冒頭は、なんと イ・ランを呼び込んで数日前につくったという新曲“70万円を探して”を披露。歌詞は彼女がtweetでも告白しているように、最近70万円を落としてショックでたまらないという気持ちを歌ったものらしい。ほのぼのしたいい共演だった。

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フィルが揃い、傑作『アントロポセン』からアップテンポな“NEW”で、早くも会場はヒートアップ。これまでさまざまな場所で彼らの演奏を見てきたが、総勢16人が乗るには一番狭いステージだったかも。ライブハウスゆえの音のこもり具合はあったが、PAが素晴らしくて、聴こえていなかった音が聴こえてくる。それぞれの楽器が奏でる印象的なフレーズがふいに強調されて響いてくるような感覚だ。

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アンコールの“Hello Everything”で、<Alternative Tokyo>は幕を閉じた。

実は裏の見ものは「BOYCOTT RHYTHM MACHINE:VERSUS」である。これはアーティスト同士による異種格闘技戦をテーマにした即興バトルである。2004年に渋さ知らズ、DCPRG、大友良英NJO、ROVOらによる新録のコンピレーションアルバム『BOYCOTT RHYTHM MACHINE』、2006年には7つの即興対決をドキュメントしたCD+DVD『BOYCOTT RHYTHM MACHINE II VERSUS』をリリース。以降はライブとして、これまでに全20戦行われてきた伝説のアクトが、ここに蘇ったのだ。

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まず「VERSUS I」は青葉市子 vs 角銅真実。音楽を奏でながら、色々な野菜とくだものを切っては食べたり、ミキサーに入れて飲みものにしたりと、ある意味パフォーマンス・アートのようなバトル。

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「VERSUS II」は、松下敦(ZAZEN BOYS / Buffalo Daughter) vs 大垣翔(トリプルファイヤー) vs 林頼我(公募選抜)。この3ドラムバトルは圧巻であった。公募で参加した林が、圧倒的な存在感とテクニックを披露。林のペースに付き合っている感じではあるものの、松下、大垣も何度も何度もしかける、本当に異種格闘技さながらだ。いつ終わるのかといった感じの30分近い激しいバトルの末、フィナーレでは林が瞬時にシンバルを外して床に投げつけて終わるという、すさまじいエンディングで幕を閉じた。

アート展示では気鋭のアーティスト、市原えつこが大根をなでると喘ぎ声をあげる「セクハラインターフェース」をメインに展示。

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<Alternative Tokyo>は飽和状態の音楽フェスのあり方に一石を投じている。都市型フェスであるとともに、規模的にもキュレーション力や企画力が問われるので音楽好きには垂涎のイベントである。これを1万円以下で楽しめるのは死ぬほどコスパがいい。

フェスの雰囲気は好きだけど、どちらかというと音楽こそ楽しみたくて、出かける手間暇を考えると逡巡する僕のような人間にとって、<Alternative Tokyo>のような都市型フェスの台頭を切に願う。

Altervative Tokyo

2019.03.16(土)
OPEN 13:00 / START14:00
@渋谷WWW、WWWX

MUSIC
活躍中(近田春夫+恒田義見+高木英一)/ 蓮沼執太フィル / 曽我部恵一 抱擁家族 / トリプルファイヤー / 折坂悠太 / 青葉市子 / イ・ラン / カネコアヤノ(BAND SET) / SONGBOOK PROJECT /BOYCOTT RHYTHM MACHINE VERSUS LIVE in Alternative Tokyo

ART
市原えつこ

Talk Session
「ポピュラーミュージックの行方」 近田春夫 × 曽我部恵一 × 柴那典

主催/企画/制作: CREATIVEMAN PRODUCTIONS / WWW
協力:vinylsoyuz

オフィシャルサイト

Text by 名小路浩志郎

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Photo by Yukari Morishita

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