日曜日の朝に亡くなったルー・リードの訃報は瞬く間にSNSで拡散され、ベックはヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのカヴァー“Sunday Morning”をユーチューブに投稿。パール・ジャム、ザ・キラーズ、アークティック・モンキーズといったバンドは急遽ライヴでトリビュート・パフォーマンスを行い、僕がツイッターでフォローしている範囲だけでも、ほぼすべての海外アーティストが哀悼の意を示していた。
そしてアメリカ現地時間の10月28日午後10時、LAのキャピタル・スタジオから生中継された新作『リフレクター』のお披露目ライヴにて、アーケイド・ファイアはアルバムのクロージング曲“Supersymmetry”の演奏中にルー・リードの“Perfect Day”と“Satellite Of Love”を(ほんの断片ではあったが)歌った。それまでツイッターでもフェイスブックでもルーの逝去について言及を控えていた彼らにとって、声高に「R.I.P.」と告げて“過去”に追いやってしまうことだけはしたくなかったのだろうか? 振り返れば、アーケイド・ファイアは喪服姿で音楽シーンに登場し、2000年代における名盤のひとつ『フューネラル』(04年)でデビューを飾ったバンドだ。「フューネラル」とは、言うまでもなく「葬式」という意味。アルバム完成前に相次いでメンバーの近親者が亡くなったことが、『フューネラル』のコンセプトに影響していることは有名だが、彼らはこの『リフレクター』においても重い十字架を背負っている。しかしながら、そのサウンドは過去最高にダイナミックで、楽しく、賑やかだ。
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