女性版サイモン&ガーファンクルとも形容できる、2人の音楽的ルーツ
『ザット・シング・リアリティ』
次に、「デュオ」であることに注目したい。女性のフォーク・デュオといえばフリーク・フォークの代表格であるココロージーや、スウェーデンのファースト・エイド・キット、最近だとフランス/キューバの天才双子イベイーなど血のつながった「姉妹」の活躍が目立つものの、ボウのように友人同士で結成した女性フォーク・デュオというのは意外と珍しい(日本にはたくさんいるが……)。
>> Beau – Animal Kingdom
しかし、ボウの歌と演奏はまるで姉妹かと思えるほどに息がピッタリ。なんでも2人の母親は大親友だったそうで、ヘザーとエマはお互い生まれたときからずっと一緒に過ごしていた幼馴染とあって、「女性版サイモン&ガーファンクル」とも形容できる関係性、つまり運命共同体なのだ。
てっきり音楽の趣味もまったく一緒かと思えば、ヘザーはロネッツやシュープリームスのようなモータウン・サウンドから、T・レックス、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドといったロックの王道的なバンドをフェイバリットに挙げ、エマはニール・ヤングやデヴェンドラ・バンハート、ココロージー、そしてジョニ・ミッチェルといったフォーク系/シンガー・ソングライターの名を多く挙げている。アルバム『ザット・シング・リアリティ』には、そんな両者の音楽的ルーツがあちこちで見え隠れしているので、注意深く耳を傾けてみてはいかがだろうか。
アメリカのトップ・クリエイターをも虜にする“美意識”と、抜群のアート感覚
最後に、自ら「Beau(=美しい)」と名乗る彼女たちの“美意識”についても触れておこう。冒頭で「トータルで自分たちの『世界』をつくり上げることができるアーティスト」と書いたが、ボウはまさにそれを体現するアーティストだ。その証拠に、“One Wing”のMVはLAの映像プロダクション・チーム「Nautico」と共同ディレクションを手がけており、どこかシュールでグロテスクな世界観は楽曲のアンニュイな雰囲気とも絶妙にマッチしている。
>> Behind the Scenes: Summer Blues
Behind the Scenes: Summer Blues from Urban Outfitters on Vimeo.
また、「アメリカでもっとも重要な写真家」と評される写真家ライアン・マッギンレーが米『Wonderland』誌の10周年記念号でボウの2人を撮影、今作『That Thing Reality』のアートワークも彼の手によるものだ。さらに2年前には、アーバン・アウトフィッターズのルックブックにヘザーとエマがモデルとして登場、それを撮影したのはなんとソフィア・コッポラの姪にあたる映画監督/脚本家のジア・コッポラである。そう、ボウの2人が放つ強烈な磁力は、アメリカのトップ・クリエイターたちをも次々と虜にしているのだ。
この抜群のアート感覚は、エマの母親が画家/バレリーナであったことも無関係ではないはず。ボヘミアン・テイストな彼女たちのファッション・センスも素晴らしいので、ぜひボウのインスタグラムをフォローしてみてほしい。
Behind the scenes of our music video shoot for 'Animal Kingdom' shot by @matthewcharof our dear friend. VIDEO LINK IN BIO ⚡️
ファッションやアートを縦横無尽に横断しながら、古き良きフォーク・ソングをも思わせる「リアル」な歌を紡ぐボウ。すでにパリやロンドンでのライヴを成功させ、つい先日にはマイク・スノウのソールドアウト・ショーで前座を務めたばかり。世界的なブレイクも時間の問題だろう。
RELEASE INFORMATION
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