2021年10月、渋谷・青山ZERO(ゼロ)の人気パーティ<Block Party>が15周年を迎えた。幅広い世代のファンが訪れたアニバーサリーでは最後の一曲が鳴り終わるまで、誰もが思いおもいに音楽を楽しんでいた。

2006年にZEROの前身・LOOPで始動してから現在に至るまで、まさに170回以上もの開催を重ねてきた<Block Party>が、15年間でフロアに示してきたアティチュードとは。主催チームならびに関係の深いアーティストに話を聞いた。

空間と観客、音楽が一体となる空間<Block Party>

10月10日(日)、<Block Party 15th Anniversary>が開催される1時間前になると、<Block Party>にデコレーションで参加するJambow!が、ZEROのフロアに飾りを取りつけ始める。

会場であるZEROは“Back to Basic”をキーワードに、レコードの音を忠実に再現するよう設計された場所。良質なクラブミュージックが流れるベニューとして、都内でも幅広い世代に愛されている。その空間が、オープンに近くにつれて徐々に華やかに変化していく。

Jambow!は毎回デザインのテーマを決めながら、フロアに異なるデコを手がけている。一貫して決めているのは「できるかぎり自分たちで作れるものは作る、DIY精神!」。この日は風船だけではなく手作りの旗も交差させ、周年を示す「15」のオブジェをDJブース上に配置した。

Block Partyが15年間向き合い続けたクラブカルチャーの“原点” music211028-block-party-dazzle-drums-1

「<Block Party>は毎月パーティを開催するごとにテーマを決めていて。そのテーマやフライヤーデザインをベースに、デコのアイディアを考えることが多いですね。訪れてもらうたびにデコを楽しんでもらえるよう、毎回異なるデザイン――なるべく遊び心に溢れたデコになるよう意識しています。

ちなみに15周年は、とにかくHAPPYで明るい気分になるようなイメージ。また今までの感謝の気持ちを込めてデコを施しました」(Jambow!)

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今回は<Block Party>のロゴでもあるオウムが翼を広げて空を飛ぶ姿もあった。オウムはパーティーの初回からフロアを見守り続けている、いわばマスコット的な存在。普段はDJブースの脇に留まっているはずの彼(彼女)が羽ばたく様子に観客も驚愕。カメラを向ける姿もあった。

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<Block Party>の良さは、訪れた誰もが居心地よく過ごせるところ。ドリンクを手に談笑する人もいれば、DJブースを覗き込んで「何の曲ですか?」とDJに話しかける人もいる。あるいはストイックにフロアで踊る人……と、過ごし方が多種多様なのだ。

その空間がもつ寛大さは、ライティング(照明)も関係している。2013年7月、ZEROがオープンしてから新たにジョインしたのは、Yellowやelevenといった伝説的な都内のクラブでライティングを手がけてきたMachida。「<Block Party>だからこそ意識するライティング」があるという。

「早い時間でもフロアに入りやすいカジュアルさはずっと気にかけています。またJambow!のデコからインスピレーションを受け、各回のイメージに合わせたラインティングを意識していますね。

<Block Party>は音楽を楽しむ感覚をフラットに戻す場所。原点回帰というほど大袈裟な話じゃないですが……音楽の好きな人達が、それぞれのやれることを持ち寄ってパーティを作ることの面白さを再認識します」(Machida)

Block Party “15th Anniversary”@0 Zero After Movie

パーティがクローズに近くとフロアへ人が集中し、熱も上がっていく。最後には、デコからライティング、バーカウンター、音楽、そしてオーディエンスが一体となり、大団円を迎える。ハウスミュージックを前に、誰もが目を輝かせて一心に踊っていた。

15年続いた“みんなが一緒になって作る”コミュニティ

2006年、ZEROの前身であるLOOPでスタートした時のラインナップは、Dazzle DrumsをはじめT.B. Brothers、Kengo、Jambow!、MEET、MIYAKO DUB squall。パーティ名の由来は、1970年代のアメリカで盛んに行われた“ブロックパーティ”から取られている。

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2007年12月に開催されたBlock Party at LOOP

広場や公園、廃墟などにスピーカーを持ち込み、近所の人びとが集まる──彼女・彼らはそういった“みんなが一緒になって作るパーティ”を目指した。誰もが気軽に訪れることができるよう、初回からエントランス料金は1,000円。今でこそ珍しくはないが当時は破格の値段設定で、クラブ界隈でも話題になったという。

パーティの中心的存在であるDazzle DrumsのNagiは、<Block Party>が目指したパーティのあり方について、次のように語る。

「仕事や学校と家の往復だけだったのが、音楽を媒介にひとつ遊び場が生まれる……各々が自分の立場を気にせずに遊べるコミュニティがあればいいと思いました。だから、毎月同じ場所で、誰もが訪れやすい日曜午後に開催するようになったんです」(Nagi)

そのうえで「ずっと『海外のDJしか聴かない!』と思っているような人たちにも刺さるようなクオリティのDJを意識し続けてきた」と彼女。コミュニティには音楽の知識をもったオーディエンスも自然と増えていったそうだ。

Dazzle Drums、Jambow!と共に初回から参加しているのは、都内を中心に活動するDJのKengo。さまざまなベニューでプレイする彼にとって、<Block Party>は「どう新鮮に楽しんでもらえるか試行錯誤する」場だという。

「ハウスミュージックの醍醐味は“混ざり合い”だと思うので、ジャンルや新旧はなるべく広くとるようにしています。特に<Block Party>は毎月開催。あえて定番曲を外したり、別のジャンルと混ぜてみたり……と、パーティのテーマに沿って新しいことに挑戦することが多かったです。今は前回と曲が被らないようにしながら、自分の個性を出せるようにしています。ここで積み重ねてきた経験は、今の自分のスタイルの基盤になっています。

ありがたいことに、<Block Party>のお客さんは昔から遊んでいる人だけではなく、ダンサーさんや音楽をしっかり楽しむ人も多い。これからもより良いプレイをできるよう、アップデートしていきたいです」(Kengo)

しかし彼らの歴史を辿るうえで驚くべきは「良質なダンスミュージックを毎月オーディエンスへ提供し続けていること」だけではなかった。

ドイツ国際平和村への募金活動や、世界各国語で書かれたメッセージカードをラウンジに吊り下げた“War Is Not The Answer Message 9.11”の開催、そして2012年3月11日(東日本大震災から1年後)におけるフード持ち寄り・入場無料の“Potluck”。まさに「音楽が社会貢献として何ができるか」を追求し続けている。

その背景には、彼女・彼らがリスペクトするNY発のダンスミュージックパーティ<Body&SOUL>の「人種・性別・国籍などの隔たりを音楽で乗り越えよう」というスタンスが影響している。

ハウスミュージックは、まさに愛と平和を歌い上げる音楽。9.11に続き3.11、そしてコロナ禍……と、心が折れそうになる出来事が続いても、<Block Party>はその度に「音楽やパーティが世界平和に繋がるように」という一心でイベントを行い続けているのだ。

なお、昨年はコンピレーションアルバムをリリースし、売り上げ$1977.22のうち半額をZEROに寄付した。15年間の軌跡を見守り続けてきたベニューサイドは、<Block Party>をどう捉えているのだろうか。ZERO店長のYuki Teradaは、毎月開催されるパーティをバーカウンターや音響スペースから見守るなかで、彼女・彼らの存在を次のように捉える。

「毎回違うテーマに沿った内装、照明をパーティスタッフが持ち寄り準備して毎月開催する。ただでさえ大変なことなのに、それを15年も続けるという事はとても労力の要ることだと思います。そういう意味で、“パーティ”に焦点を当てて考えてみると、Block Partyはレアな存在。特にDJがより身近になり、プレイヤーが増えつつある昨今では、貴重なのではないかと。いつも大切な事を勉強させていただいてます」(Terada)

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2016年9月に開催されたBlock Party at ZERO

やれることを持ち寄ってパーティを作ることの面白さ

そして、音楽を通し社会と関わり続けた彼女・彼らが築きあげた“近所”のコミュニティは、徐々に世界へと拡大。国内のみならず、それまで親交のあった海外のDJがゲスト出演する機会も増えていった。2009年12月には、ニューヨークのクラブカルチャーを語る上で欠かせない存在・ダニー・クリヴィット(Danny Krivit)がOpen to Last(たった1人のDJがオープンからクローズまでの長時間をプレイすること)を行う回もあった。当時、彼はなんと16時間もDJをし続けたのだ!

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彼はBlock Partyの記憶について、次のように振り返る。

2009年12月、友人・Dazzle DrumsのためにLOOPのBlockPartyでプレイできたのはとても光栄だったよ。ちょうどその日は、僕のショート・ジャパンツアーのラスト公演。素晴らしいサウンドシステムと友人たちに囲まれていたし、音楽的にも自分のフルパワーで挑めたな。残念ながら当時のプレイリストは作っていないんだけど、パーティがピークに達した瞬間の1曲ははっきり覚えている。それはディープ・パープル(Deep Purple)が1968年にリリースした“Hush”。60年代の曲をスピンして、あそこまで冒険的な気分になることはなかったね。とても嬉しかったし、我ながらいいDJができた。今でもあの耽美なひとときの記憶は思い出せるよ……僕は16時間もDJをやったんだ……本当に最高だった!(Danny Krivit)

In Dec. 2009 it was an honor to play for my good friends Dazzle Drums for their “BLOCK PARTY” at club Loop.
It was the end of a short Japan tour for me & time to stretch out musically amongst friends on a great sound system.
I regrettably didn’t make a playlist, but I remember very well championing one song in particular,
“Hush” by Deep Purple 1968. It’s not often I feel adventurous enough to play a song from the 60’s,
but I was so happy I did, as it really went over well.
I remember having such a fabulous time… I played for 16 hours… very special!
Danny Krivit

2015年にはアシッドジャズのキーパーソンであり、ネットラジオ局World Wide FMの主宰・ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)が偶然<Block Party>を訪問。それをきっかけにDazzle Drumsの2人が南フランス最大の音楽祭<Worldwide Festival 2016>に出演する……ということもあった。ストイックに回数を重ねながらも、<Block Party>ではミラクルを起こし、新たなことに挑戦できる土壌を確実に蓄えていたのだ。

そして2021年11月、彼らはまた新たなスタイルに挑戦する。15年間のキャリアで初の野外パーティ<Block Party CAMP>を、滝と渓流の高山キャンプ場で開催することになったのだ。9月から続く全国ツアーの目玉として企画された当キャンプイベント。出演者はおなじみのDazzle Drums、Kengoをはじめ、Kuniyuki、TOSHIO MATSUURA、SHUYA OKINOといった錚々たるメンバー。そして滋賀と北陸のローカルDJやダンサーたちも集う。

また、会場がある滋賀県ならではのフードが出店するなど、滋賀の“近所”コミュニティも最大限に発揮。2日目朝には無料ヨガ体験もあり、参加者同士の交流も期待できるだろう。

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今回のキャンプパーティが生まれた背景について、Nagiは「各土地の人々との交流ができるイベントを作りたかった」と語る。

「自然の美しさだけでなく、滋賀近郊で音楽と関わっている皆さんの魅力も一緒にお伝えできたら、という思いで企画しました。実は滋賀との交流が始まったのも、Dazzle Drumsが初めて滋賀Club MoveでDJした15年前からだったんです」(Nagi)

こういった挑戦ができるのは、彼女・彼らが15年という歳月のなかで“パーティの原点”に継続して向き合い続けてきたからだ。Dazzle DrumsのKeiとNagiはこの15年間での変化、そしてこれから<Block Party>が目指す先にある“フロアのあり方”について、次のように語る。

「15年の中で、お客さんの移り変わりはありました。最初は顔見知りが多かったけど、今では半分くらいがあまり見ない人。それでも黙々と音楽を聴いて踊ってくれるんです。そういう人からも受け入れられるパーティになったのはとても嬉しい。

また、“ディスコやハウス・クラシックス=昔の人”というイメージは10年前くらいにあったのですが、最近は若い人も頑張って掘ってるんです。下手すると我々より知ってることもありますし、彼らがウケる曲、というのが自分たちの世代とズレているのもまた面白い。そういったギャップを受け入れつつ楽しんでいきたいです。コミュニティの方向も含めて、一つに固まらず、世代を越えていければと思っています」(Kei)

「クラブにおける世代交代の波が訪れたからこそ、私たちも新しい挑戦ができるようになりました。今、曲を知らない状態でどこまで楽しんでもらえるか……ということに、当たり前のように若い人たちがトライし続けているんです。私たちも、それが今できるようになった状態。本当に良い流れが訪れていると思います」(Nagi)

Text by 高木 望

INFORMATION

Block Party CAMP

2021.11.06(土)〜11.07(日)
滝と渓流の高山キャンプ場(〒526-0201 滋賀県長浜市 高山町2324)

Live:Kuniyuki

DJ:松浦俊夫、沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)、DJ K-SUKE(CLUB MOVE)、ELLE DRIVER、KEN(BAILAMOS)、Sergio Rorinandes、Hajime Arai、きんぱ(El Musica)、Dazzle Drums 、Kengo(Block Party)

Dance Showcase:ACTIVATE YOUR DANCE GENE、KANSAI BAKUDAN、PERI & MIZUKI

Yoga:Hiroki Maruyama (PIRO)

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