キャリア集大成の新録ベストと、豪華ゲスト陣を迎えた傑作10thアルバム

前述した通り、3年ぶりとなるニュー・アルバム『ブロンディ・フォーエヴァー:グレイテスト・ヒッツ・デラックス・リダックス/ゴースツ・オブ・ダウンロード』は、ベスト盤と新作の2枚組。原題が『Blondie 4(0)Ever』と名付けられていることからもわかるように、本作はブロンディにとって10枚目のスタジオ・アルバムであると同時に、40年にもおよぶキャリア集大成の意味を持っていると受け取ることも可能だろう。

しかしながら、ベスト編に収録された11曲はすべてセルフ・カヴァー&再レコーディングを行い、徹底的にモダン・アレンジが施されている。中心人物のデボラ・ハリーとクリス・シュタインはもちろん、オリジナル・メンバーのクレマー・バーク(ドラム&パーカッション、コーラス)や長年のツアー・メンバーであるリー・フォックス(ベース)、10年に加入したトミー・ケスラー(ギター)、そして今や第4のメンバーとも呼べるマット・カッツ・ボーエン(キーボード&ピアノ)らも全面参加。ポップ・アートの旗手アンディ・ウォーホルによるデビーの肖像画をアートワークに採用していることからも、これまでリリースされてきた無数のベスト盤/コンピレーション・アルバムとは気合も位置付けも違うことがわかるはずだ。

何よりも驚くのが、往年の名曲が詰まった前半を経てDisc2の新作『ゴースツ・オブ・ダウンロード』を再生した時に、何らギャップや違和感を感じさせないこと。その勝因は、前作『パニック・オブ・ガールズ』(11年)を手掛けたジェフ・サルツマンを再びプロデューサーとして起用し、ライヴ感よりもデジタル録音ならではの緻密な作り込みにこだわった点が挙げられる。ブロンディの持ち味であるジャンルを越境したサウンドはそのままに、今作ではヒップホップ、エレクトロ、あるいはクリスがハマっているという南米コロンビアの伝統音楽・クンビアまでも果敢に吸収。クンビア/ヒップホップ・グループのシステマ・ソラール、米オークランド出身のラッパーことロス・ラカス、NYのロック・ミュージシャンであるミス・ガイといった豪華ゲスト陣を招き、リード・シングルの“A Rose By Any Name”ではなんとゴシップのベス・ディットーと熱いデュエットを披露するなど、14年現在のブロンディの絶好調ぶりを見事にパッケージングしてみせた。(どういうわけか、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの名曲“Relax”のカヴァーも収録)

Blondie“I Want To Drag You Around”(Lyric Video)

ちなみに、国内盤リリースの前日となる7月1日(火)はデボラ・ハリーの誕生日。40周年記念盤のリリースが誕生日の翌日、しかも年齢は69(ロック!)歳を迎えるということで、ロック界の頂点に君臨する女帝としてますます存在感を放っていくのだろう。ブロンディは現在、英<グラストンベリー>などの大型フェス出演を含むワールド・ツアーの真っ最中。実は、日本では06年9月に<Farewell JAPAN TOUR>と銘打った最後のジャパン・ツアーを敢行しているブロンディだが、再び脂の乗り切った今だからこそライヴが観たい! というわけで、奇跡の再来日公演の実現にも期待しようじゃありませんか。

(text by Kohei UENO)

Release Information

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