TuneCore Japanが新たに始動させた「BLUEW」は、恵比寿のBLUE NOTE PLACE(以下BNP)を舞台にインディペンデントアーティストを紹介するショーケースイベントだ。特別な空間で世代やシーン、そして人を紡ぎ、新しい音楽カルチャーを醸成(=brew)していく。そんな思いが込められたこの夜には、開演前から満ちみちた期待感が漂っていた。
今夜、ここで共鳴するのは二人のシンガーソングライター。J-POPの情緒とK-R&Bのビートを自在に行き来するSom。そしてR&B/SOULを軸に、時に優しく、時にダイナミックに人間の深層を浮かび上がらせるZIN。BNPというスタイリッシュな空間でありながら、そこには「音楽で誰かを、そして自分を救う」という、切実で温かい体温が通っていた。
暗闇の先にある「自分」に会いに
先にステージに現れたSomは、公募オーディションで選ばれ、ステージに立った。BNPにとってもオーディションから出演者を決めるのは初の試みだという。そんな記念すべきステージに、彼女はドラム、ベース、キーボードを迎えた久々のバンド編成で臨んだ。会場は、カラッとしたバンドサウンドと彼女のスモーキーな歌声に包まれる。

ハイライトは、1月にリリースされた新曲“ミッドナイト”だ。「もがいてもがいて書いた」というその曲について、彼女はこう語っていた。
「生活を進めていくと、楽しいことも苦しいこともあると思うんですけど、しんどい中でも自分のことをもっと救いたいなって思うことがあって。しんどいことから抜け出したいという気持ちが、見方を変えれば『その先の自分に会いたい』という気持ちになるんですよね。会いたい自分に向かって進んでいく、それが原動力になる、そういう気持ちで書いた曲です」
自分を救いたいという切実な願いから生まれたこの曲。でもその音は、暗闇にいる誰かの手を引くような、優しい強さに溢れていた。

Somのステージが終わり、心地よい余韻が会場を包む中、DJのji2kiaがドロップしたのはMoonchildの“The List”。個人的にも大好きな曲だ。Somの世界観を引き継ぎながら、ZINへとしなやかに空気が紡がれていく。

音楽を「共に生き抜く力」に
煌めくキーボードの音色が鳴り響き、腰にくる骨太なベース、粘り気のあるドラムが重なっていく。ZINが拍手で迎えられ、会場の熱が動き始めた。
バンドサウンドが次第にスイングし、グルーヴが膨れていく。その波に乗り、ZINの歌声も熱を増す。一曲目の“The Sign”が終わる頃には、みんな彼の色に染まっていた。

彼は生粋のエンターテイナーだ。
客席に語りかけながら、MCのたびに会場の熱をひとつ上のステージへと引き上げていく。
「戦争が他人事ではなくなってきている今、同じ空間で同じ空気を吸って同じ音を聴いているのは、すごく奇跡だと思う。音楽は衣食住の中にはないけど、すごく自分の人生を豊かにしてきてくれたもの。だから止めずに、皆さんの元に届け続けていきたい」
歌い始めて約20年、自分のありのままを表現できるようになったという彼の信念は、まっすぐで強いものだった。

“Midnight Run”と“相愛”で会場が一体になり、ラストの“Buddies”で愛が溢れたとき、ZINは優しい声で言った。
「しんどい世の中、みんなで生き抜いていきましょう。支え合って。ひとりじゃない」 ーその言葉が、この空間にいる全員を救ってくれた気がした。

バンドメンバー全員のクオリティもまた、圧倒的だった。各方面をひた走るミュージシャンたちが奏でる音は、一音一音がとても濃密だ。特に、ZINのバックを務めたドラムのRyuya Inoueが見せたソロは圧巻。あの32小節で、会場の全員が彼の虜になっていたはずだ。
こうした現場があることで、フロントマンだけでなく、バックを支えるプレイヤーたちの才能にもスポットライトが当たる。アーティストが信頼する仲間をフックアップし、リスナーに新しい出会いを届けてくれる。そんな循環を作ってくれる「BLUEW」に、心からリスペクトを贈りたい。

異なるスタイルを持つZINとSomだが、二人が音で示してくれたのは、私たちがこの世の中を進み続けるための光だった。BLUE NOTE PLACEで醸成されたこの熱量は、誰かの明日を照らしていく。こうした場所がある限り、私たちはまだ見ぬ才能と出会い続けることができる。一人のリスナーとして、この先に待つ新しい出会いに、胸が高鳴っている。
INFORMATION
INDEPENDENT ARTIST 100 – 2026

未来へ繋ぐ、カルチャー・アーカイブ
100組を決定する本投票フェーズがスタート
インディペンデントアーティストのための音楽デジタルディストリビューションサービス「TuneCore Japan」は、新たに未来のカルチャーへ繋ぐプロジェクト「TuneCore Japan INDEPENDENT ARTIST 100 – 2026」のノミネートアーティストを発表。
プロジェクト始動の2月10日から3月9日までの推薦フェーズを経て、ノミネートアーティスト200組が決定。
3月18日より、最終選出となる100組を決定するための「本投票」が開始された。