脅威のアンファンテリブルっぷりをまざまざと見せつけた、
未来の大型ダンス・アクト=ディスクロージャー
数十名のローディーがセット・チェンジに取り掛かること30分、爆音のSEが鳴り響く中へディスクロージャーことローレンス兄弟が遂にステージへ現れた。ラップトップ、シーケンサー、キーボード、サンプラー、パーカッション、シンバル、カウベル…etcといった様々な機材が並べられたテーブルがまるで合わせ鏡のように向かい合い、左サイドにベビーフェイスの兄貴ガイ、右サイドにワルガキっぽい髭面の弟ハワード(19歳!)がポジショニング。絶叫に次ぐ絶叫をかき消すごとく鳴らされたオープニング・ナンバーは、ハワードがメイン・ヴォーカルを務める“F For You”だ。宇宙までぶっ飛ばされそうなほどスペイシーな電子音のウワモノに、下半身直撃のビート、ひたすら小刻みでパーカッシヴなドラムス、そしてスムース&セクシーなハワードの歌声が波状攻撃となってオーディエンスを否応なしに踊らせまくる。続く“When A Fire Starts To Burn”もDJプレイのようにシームレスに繋げられ、ガイがサンプラーによるヴォーカル・ループでじわじわとBPMを高めていく。いっぽうのハワードは生ベースでサウンドの屋台骨を支えているし、マーキュリー・プライズにノミネートされた1stアルバム『セトル』のボリュームと同様に、ステージから放たれる視覚的情報量もハンパではない(海外ではお馴染みのVJが無かったのは残念だが…)。
「トキオー! ウィー・アー・ディスクロージャー。ハイ!」とガイ兄貴が挨拶すると、シニード・ハーネットをフィーチャーした“Boiling”を筆頭に、“Tenderly”~“Flow”などの女性ヴォーカルものトラック大量投下でディープ・ハウス~UKガラージ・モードにシフト・チェンジ。生楽器から打ち込みまで、必要最低限の音だけを掬い上げながら信じられないほどの集中力でグルーヴを構築していく2人の姿は、ザ・エックス・エックスのライヴにおけるジェイミー・スミスさえ彷彿とさせる。ハワードが「コンバンワ! これが日本での初めてのショーだよ」と、慣れない日本語も交えて挨拶してからの中盤ではトライバルで肉体的なビートも徐々に顔を出し、4つ打ちハウスを再解釈したような“Grab Her!”を経て、この夜最大のハイライトとなったクラブ・アンセム“White Noise”を披露。アルーナが再びステージに踊り出ると「待ってました!」と言わんばかりの大歓声が飛び交い、サビでは野外フェスかと見紛うほどの大合唱に。その後もローレンス兄弟の勢いとオーディエンスのテンションはまったく衰えることなく、終盤の“Confess To Me”~“Running(Remix)”~“Running(Vip Rimix)”という、オルタナティヴR&B界のミューズ=ジェシー・ウェア大フィーチャーの壮絶なコンボにはワタクシ、マジで感無量でした。ハイムのデビュー・アルバム『デイズ・アー・ゴーン』にも参加しているジェシーのライヴ・パフォーマンスは本当に本当に素晴らしいので、いつかディスクロージャーとの生コラボが日本でも見られると良いなー。
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ロンドン・グラマーをフィーチャリングしたソウルフルなハウス“Help Me Lose My Mind”は言わずもがな、「また絶対に戻ってくるからね!」とガイが感謝の言葉を延べてからのクライマックス“Latch”では、サンプラーから「ダッダー♬」のヴォーカルが鳴らされるだけでオーディエンスも狂喜乱舞、無数のスマホがリキッドルームのフロアをライトアップした。およそ80分にも迫る驚愕のライヴはいわゆる「顔見せ」なんてレベルではなく、この若き音楽サラブレッドたちの底知れぬ才能とセンス、そしてアンファンテリブルっぷりをまざまざと見せつける格好の舞台だった。おそらく、ケミカル・ブラザーズやベースメント・ジャックス、あるいはダフト・パンクなどの初来日公演もこんな感じの衝撃だったのだろう。あのナイル・ロジャースともコラボ・セッションしたという噂もあるし、ディスクロージャーが世界中のビッグ・フェスでヘッドライナーを任される日はそう遠くないはずだ。
text by Kohei Ueno
photo by yuichiihara
Release Information
Now on sale! Artist:Disclosure(ディスクロージャー) Title:Settle(セトル) Universal Island/Pachinko Records UICI-1127 ¥2,300(tax incl.) Track List |