多くのプロジェクトを成功に導いた、ヴィンスの作るサウンドは一貫してエレポップだ。それは、今作でも勿論健在だ。もし、エレポップを知らない女の子にエレポップってなに? と問われたら、「ヴィンス・クラークが作る音だよ。」と、優しく教えてあげよう。そして、彼の作るサウンドを聴かせてあげよう。アッパーなビートにキラキラしたシンセ、80年代屈指のメロディ・メイカーとも呼ばれる抜群のソングライティング・センスはエレポップを飛び越え、80年代以降に登場したポップミュージックの雛形と呼んでも過言ではない。この先も古びることはない、万国共通のポップミュージックと位置づけよう。そりゃ、そんな素晴らしいポップミュージックなら女の子だって虜になり、踊りだす。ただこれで、モテようものならそれは大きな間違いだ。

Erasure – “Elevation”

完全に話が逸れたが、コンスタントにリリースを続ける彼らを今ここでピックアップする理由。それは単純だ。本作が昨今のエレポップに劣らない、それどころか流石の貫録を見せつける、「これぞエレポップ!」な素晴らしい完成度なのだ。80年代~90年代初頭のヒットメイカーとして君臨したイレイジャー、王道のヴィンス・サウンドであり、王道のエレクトロ・ポップだ。完全フロア仕様の快楽的でポジティブなビート、高揚感抜群のシンセ、情熱的で影を感じるヴォーカル……これぞ王道であり、エレポップ・リヴァイヴァルは当然ながら、昨今のポップミュージックとも完全にリンクした完成度だ。

当時のファンが熱狂するのは当然だろうが、これを期にエレポップ・リヴァイヴァルを追いかける若者達も、80年代屈指のヒットメイカーのサウンドに触れてみるのはいかがだろうか?

(text by 武田 晃)

Release Information

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