漫画、アニメ、J-POPなど、日本のポップカルチャーがフィーチャーされ続けているヨーロッパ圏。毎年、フランス・パリにて開催されるヨーロッパ最大のジャパンフェス<Japan Expo>の来場者数は25万人を超えるほど! 今や日本文化とヨーロッパは、切っても切れない関係にあります。

そんな親日家の多いことで有名なヨーロッパですが、近年、なんらかの形で「日本っぽさ」が感じられるアーティストや楽曲が、ヒップホップを中心とした音楽シーンを賑わせているんです。

今回は、「視覚的」「聴覚的」の2つの観点別に、日本的要素を感じることのできるヨーロッパのヒップホップ/R&Bアーティスト、ビートメイカーをご紹介します。

Category1:視覚的日本要素

まずは直感で、アーティスト名、アートワークといった視覚的に感じられる日本要素を持ったアーティストをご紹介。

J Lamotta すずめ

現在ベルリンで活動中のトラックメイカーでありシンガー/ラッパーのJ Lamotta すずめ

Flying Lotus(フライング・ロータス)が主宰するレーベル〈Brainfeeder〉のメンバー RAS G(ラス・ジー)や、故J Dilla(ジェー・ディラ)の実弟 Illa J(イラ・ジェー)とのコラボレーションでも大きな注目を集めました。

日本人なら思わず二度見してしまいそうな、インパクトのあるアーティスト名こそがまさに注目していただきたいポイントです。ちなみに、名前以外に日本的な要素はありません(笑)。

アーティスト名にしれっと入っている日本語 “すずめ”は、“Sparrow”という曲が収録された彼女のファーストEPのアートワークを日本人デザイナーが手掛けたことに由来するとか。そんな、日本人的にはなかなか違和感のあるアーティスト名ですが、彼女が生み出すサウンドは本物。作り込まれたネオソウルやジャジーヒップホップなトラック、そしてどんなムードにもガッチリとはめてくるセクシーな歌声が魅力です。

J.Lamotta すずめ & The Dizzy Sparrow – Wanna get to know you

Mujo情

ハンガリー・ブダペスト出身のビートメイカー、Mujo情。こちらも前述のJ.Lamotta すずめと同様アーティスト名にも日本要素が香りますが、実は彼の作品の随所にも日本的なものを感じることができます。

それもそのはず、Mujo情はOMSBなどSIMILAB周りへの楽曲提供で知られるなど、日本のヒップホップシーンにもゆかりのある人物なんです。

例えばBandcampで2013年に配信されたこのアルバム。ジャケットはさる事ながら、“NINJA”、“SHOGUN”、“SAMURAI”など、曲名にも見覚えのある日本語がちらほら。日本語のセリフがサンプリングされたりなど、至るところに日本愛を感じます。

他にはアニメネタのものや、ジャケが高倉健の『Yakuza Roll』という個人的に大好物なノリの作品も。トラックは1分〜2分の聴きやすい長さのものが多く、近年になるにつれてジャジーなロービートが多い印象のMujo情。当時と方向性は少し違いますが、今年リリースされた最新作『Clouds』は必聴のクオリティです。

Category2:聴覚的日本要素

次は対照的に、よく聴くと日本の伝統楽器のサウンドやJ-POPネタが使われている、そんな聴覚的に楽しめる日本的要素を持ったアーティストを紹介します。

Triptik

こちらは最近のシーンのアーティストではありませんが、まさに日本風! ということで選定。1994年から2004年まで活動したフランスのヒップホップグループ Triptikです。

1998年にリリースされたアルバム『L’ebauche』に収録されている “Triptik”では、ど頭から聴き馴染みのある日本の伝統楽器、三味線のサウンドがメインループとして使われています。90s全開のスクラッチとフランス語で蹴られていくバースも相まって、不思議と新鮮な感覚に陥る……!

Triptik – Triptik (Ototshiba)

Vanilla

最後にご紹介するのはUKのプロデューサー兼ビートメイカーの Vanilla。自身が日本旅行からインスピレーションを受けて制作したという2015年9月にリリースされたデジタルアルバム『Origin』は、全体を通してほのかな日本の香りが漂う作品で、個人的にも大好きな一枚です。

その中でもぜひ注目したい一曲が、“Rainy Day”。サンプリングネタはなんと、80年代シティポップの王道、吉田美奈子の同名曲 “Rainy Day”。冒頭からがっつり本人に歌わせるそのまま使いの手法は、彼のシティポップへのリスペクトや愛が感じられます。

こちらが元ネタのアルバム。言わずもがな、最高です。

いかがでしたか? ヨーロッパ圏以外にも、世界中の音楽シーンで注目されている日本文化。もしかしたら、みなさんの好きなアーティストやアニメも今日もどこかでサンプリングされているかもしれません。