連日、超・大盛況の賑わいとなっている「EXPO 2025 大阪・関西万博」。その中でも<ハイジと共に、テクノロジーの頂へ>をコンセプトに掲げるスイスパビリオンでは、アーティストの江原彩子が、グローバル企業・ネスレの未来に向けた活動そのものをジェネレーティブアートで表現した映像作品『A Taste of Good for Tomorrow』が展示されている。
『A Taste of Good for Tomorrow』に関する江原彩子スペシャルインタビューはこちら
そんなスイスパビリオンにて、特別なライブが敢行された。江原彩子がVJとして映像を、アンビエントアーティストの畠山地平と安河内秀太がサウンドを担当。ネスレのサステナビリティへの取り組みを踏まえ、映像作品に合う音楽を構築し、ライブで披露された。
ここでは、音と光によって特別な空間を紡ぎ出した3人に、ライブパフォーマンスのことやネスレの取り組み、そしてサステナビリティに対する思いについて話し合ってもらう。
大阪・関西万博は10月13日(月)までと、いよいよ終盤を迎えるが、こんな機会は滅多にない。ぜひ多くの方々に、生ミャクミャクを見に、そしてスイスパビリオンや会場の空気を味わいに、万博に足を運んでほしい。
CROSS TALK
江原彩⼦×畠⼭地平×安河内秀太

サステナビリティへの思いを音楽的に解釈して映像と共に表現
──今回、どういう経緯があって3人でライブを行うことになったんですか?
江原彩⼦(以下、江原) まず、私が制作したネスレさんの映像作品があって、その映像を使用してライブパフォーマンスを行わないか、という話をいただいたことが前提にあります。(安河内)秀太には、これまでに色んなプロジェクトで音楽を作ってもらっている経緯もあって、クリエイティブの面で絶大な信頼があり、ライブに参加してもらうことになりました。(畠⼭)地平さんのことは、秀太からも話を聞いていて、何年も前から存じ上げていたので、せっかくなら今までご一緒したことのない方と一緒にパフォーマンスをしようと思ってお願いさせていただいたんです。





──江原さんと安河内さんの繋がりがあり、そこに畠山さんがジョインされた形だったんですね。では、安河内さんと畠山さんはどのような関係なのでしょうか?
畠⼭地平(以下、畠山) 安河内くんと出会ったのはコロナ禍前くらいですね。
江原 もともと秀太と地平さんはセッションしていたんですよね?
畠⼭ そう。お互いにサッカー観戦が趣味で、2、3年前のUEFAチャンピオンズリーグの決勝を一緒に観ることになり。試合開始の朝方まで時間があったので、それならセッションしながら決勝が始まるまで待とうって話になってね。
安河内秀太(以下、安河内) そうでしたね、眠気も吹っ飛ぶほど楽しかった。僕は地平さんのことはアーティストとして昔から知っていたので、ライブ後に知り合ってから仲良くさせていただいている感じです。
──そんな3人でライブを作るにあたって、ネスレの取り組みを踏まえて、どのようなやり取りをしていったのでしょうか?
畠⼭ 江原さんが制作した映像がベースにあったので、そこからネスレさんのサステナビリティに対する取り組みや思いを音楽的に咀嚼してイメージを膨らませていくという作業でした。映像のコンセプトに対して、どんな音が合うのか考えながら、安河内くんと2人で音出しして試行錯誤していったんです。結果的に、序盤はサステナビリティ感にプラスしてスピリチュアルな雰囲気を演出しつつ、音楽と映像の世界に没入していけるメロディを表現しました。そこから徐々に盛り上がっていくように緩急をつけていった感じでしたね。



安河内 VJ映像の最後は光がキラキラしている表現だったので、そのイメージに合わせて、地平さんと2人でサウンドを構築していったんです。僕らはフィールドレコーディングも好きなので、音楽制作という面において自然の力が必要なんです。なので、ネスレさんのサステナビリティや自然に対する取り組みに対して、純粋に共感できる部分がありました。今は当たり前に享受しているものですけど、それがずっと続くとは限らないわけなので、感謝して大事にしなくてはいけないと、今回のライブを通じて改めて思いました。
江原 ライブではスイスパビリオンに展示している映像作品の延長線にある世界観を提示しているのですが、音楽に関しては私からは詳細なリクエストはすることなく、信用しているお2人にお任せしていた形です。さっき話にも出ましたので、最後のキラキラ音はすごく綺麗でしたね。
畠山 そうだね。そこは僕らの中でキラキラ音って呼んでいるんですけど、最後その映像にいくまでの演出にはこだわりましたね。直前まで少し音を下げてキラキラ音が映えるような感じにして。やはりライブの最後は、来てくださった方々に観てよかったなって喜んでもらいたいので、一瞬だけカオス状態にして高揚感が生まれるような流れを3人で作っていったんです。


自然と向き合うことは表現するうえで必要不可欠
──ネスレが掲げるサステナブルへの考え方が映像や音楽制作の念頭にあり、また、フィールドレコーディングのお話もありましたが、改めて、サステナブルに対してどう思いますか?
安河内 自然というのはとても完成されているもので、知れば知るほどに人間の力で太刀打ちできるようなものではないというか。圧倒される部分があるんですよね。そうやって長い年月をかけて完成されたものなので、ありがたみを持って大切にしなくてはいけないと強く感じます。私は湘南出身で、海で遊んだり、波打ち際の音を聞いて育ったんですけど、東京に来ると自然が少なく窮屈だなと感じることも多いので、やはり自分には自然が必要なんだと感じますね。地平さんも制作するにあたってそう思ったりすることはないですか?
畠山 いや、本当に思うよ。最近は自然を体感した方が絶対にいいと思って、意識的に山登りしたり海に行ったりすることも多くて。よく江戸時代って完璧にリサイクルが成立していたって言われるじゃないですか。昔の日本は人と自然が理想的な形で回っていたのかもしれない。そんな文化を持っていた国なので、それを現代のサステナビリティに昇華させて発信できるといいんじゃないのかな、なんて考えますね。
江原 私は、ネスレさんとコミュニケーションを取りながら作品を作っていくにあたって、2050年頃までにカカオやコーヒーの生産に適した土地が半分に減ってしまうかもしれないという話を聞いて衝撃を受けました。私も日々、コーヒーやチョコレートを口にしていますけど、危機的な状況であることを知ってすごく驚いてしまって。今回の大阪・関西万博で実際にパビリオンを体験して、環境に対する問題提起を行っているのを見聞きすると、すごく刺激を受けます。アーティストとしてできることは限られていると思うんですけど、表現を続けるうえで無視できないことだと強く思いました。
──では、ネスレの商品で好きなものはありますか?
畠山 僕はキットカットが大好きで1日に2、3ピース食べているんですよ。音楽制作の合間の休憩でリフレッシュする時に口にしていて、普段からネスレさんに馴染みがあったので、今回のお話はすごく嬉しかったですね。とにかく味が好きですし、季節によって異なるフレーバーが発売されるのも嬉しいです。スタジオに来たミュージシャンとも、どの味がいいか選んで会話したりしているので、もはや私の音楽制作には欠かせないものの1つになっています。
安河内 その話、さっき聞いたんですけど知らなかったですよ(笑)。僕はネスプレッソが実家にあって、昔からコーヒーはネスプレッソでした。
江原 自宅で手軽に美味しいコーヒーが飲めるのって、ちょっとした贅沢をしているようで、すごく心地いいですよね。
安河内 思えば、ネスプレッソもそうなんですけど、ミロやキットカットなど、身の回りに昔からあったけどネスレさんの商品だって知らなかったものも多いです。改めて振り返ると、こんなにネスレ商品を愛用していたんだって思います。


──最後に今回の大阪・関西万博について、気に入っている場所など、おすすめのところを教えてください。
安河内 各パビリオンはこれから回ろうと思っているんですけど、会場の雰囲気はやはりすごいですね。非日常が味わえて海外に来ているような感覚になります。散歩するだけでも楽しめると思いますよ。
畠山 ちょうど台風が近づいていて、大きな雲に夕陽が重なって壮大な景色が見れたんですけど、素晴らしかったですね。景色を楽しみながら散策するのもおすすめです。僕が特に好きなのは大屋根リング。あのリングの上で景色を見ながら歩くのはすごくよかったです。
江原 万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ということですが、全世界の人たちが、同じテーマについて考えて未来のことを思う機会って、今後もそうそうないことだと思うんです。この万博自体がすごく貴重なものだと思いますし、そうしたサステナビリティに対する取り組みも押し付けがましい形ではなく、エンターテイメントとして子供でも楽しめるような展示になっているのがすごくいいですね。誰もが楽しみながら地球の未来について考えることができる空間だと思うので、機会があればぜひ、万博全体の空気を体感してほしいです。
Interview&Text:Ryo Tajima(DMRT)
Photo:Peso
ARTIST INFORMATION
江原彩子
東京を拠点に活動するアーティスト。近年ではAIとジェネラティブアートを組み合わせた作品を中心に発表。作品制作を通して、世界中をキラキラしたものやワクワクする感情で溢れさせることを活動目的に、一つのソフトウェアや表現に限定せず、キラキラとした表現を追求するために様々な技術を研究し続けている。
畠⼭地平
1978年⽣まれ、神奈川県出⾝、東京在住の⾳楽家。2006年にKrankyより1stソロ・アルバム『Minima Moralia」を発表。以降、デジタル&アナログ機材を駆使したサウンドで構築するアンビエント・ドローン作品を世界中のレーベルからリリース。
安河内秀太
東京を拠点に活動するサウンドアーティスト。多彩な楽器や⾳響素材を組み合わせ、繊細で奥⾏きのあるアンビエントサウンドを創り出す。これまでヨーロッパや⽇本のレーベルからアルバムをリリースし、世界各地のアーティストとのコラボレーションやリミックス、コンピレーションへの参加も数多く⾏っている。