満を持して、大型ビジョンに「NEXT ARTIST」に「Hi-STANDARD」が映しだされると、この日一番の歓声が“3人組”に贈られる。ステージに立つや、難波章浩氏(Vo/B)が「カメラをポケットに閉まってくれ〜」と観客に訴え、「心に俺たちのサウンドを刻んでくれよな」と呼びかける。“MAXIMUM OVERDRIVE”で堰(せき)を切ると会場は熱狂のるつぼとなる。1週間ぶりに、3年ぶりに、15年ぶりに、はたまた初めて見る者が入り混じった会場は曲を重ねるごとにヒートアップしていく。難波氏と横山健氏(G)の独特のテンポ、コミカルながら味のあるMCで観客を沸かせ、「NOFXの後に俺たちがやる日がくるとは……」とこの日のステージを誰よりも感慨深く思っていたようだ。
Hi-STANDARD(photo by Teppei Kishida)
難波氏は「今日はいろんな事を思い出しちゃってさ、マイクに会ったり、ライアンに会ったり、『GROWING UP』のときのレコーディングの風景を走馬灯のように思い出した」と振り返る。「俺たちは〈FAT WRECK〉で育てられた、〈FAT〉ファミリーなんだ」と“生い立ち”に感謝すると、横山氏も「〈FAT〉がなければ、Hi-STANDARDも、今の俺たちもない」と回想する。
その直後に「トニー聞いてっかな」と天に向かって話しかけ、“Dear My Friend”を熱唱。終了後には感極まる場面もみせ、「届いたかな」と難波氏がつぶやくと「届いたよ」と横山氏が相槌を打つ。「トニーがコーラスを入れてくれた曲をやろう」と“MY SWEET DOG”を披露。
Hi-STANDARD(photo by Teppei Kishida)
その後もファット・マイクがコーラスに参加した“WAIT FOR THE SUN”が始まる前に「マイク歌ってくんないかなぁ〜」と催促し、ステージそでにいたマイクがステージに出てくると会場は愛情のある笑いに包まれた。この日ならではのステージに、観客は酔いしれる。
終盤に入ると「この曲が〈FAT〉で出たときは震えたよね」と回想し、「〈FAT WRECK〉の皆さま、いつまでも輝いていて下さい」のMCで始まった“STAY GOLD”では会場全体が絶叫する。「トニーに届けましょう」とMCして開始された、“CAN’T HELP FALLING IN LOVE”では大合唱が起こりLIVEは終了した。どの曲もどよめきと歓声をもって迎えられたハイスタの年内2本目のライブは熱狂のなか終了。
盛大なイベントの最後を飾ったのはNO USE FOR A NAMEのトリビュートライブ。前途の哀悼のメッセージで埋め尽くされた巨大なトニー・スライの遺影がステージに掲げられ、この日の出演者たちが次々にステージに立った。亡き友人を偲び、彼らの曲をカバーし観客も熱唱した。愛と夢に満ちた<FAT WRECKED FOR 25th YEARS>は、こうして幕を下ろした。
photo by Teppei Kishida
会場を出るとすっかり夕闇に包まれ、小雨が降りしきっていた。そんな雨の中「あ~ぁ、夜行バス乗り過ごしちゃった」と、地方から来たと思われる青年の声がそこかしこで聞こえてきた。「まぁいいや」と語ったファンの満足気な横顔がこの日の余韻を感じさせた。
そういえば横山氏は、MCで「こういうイベントに来てたファンが何年か経ってステージに立つ、ってありえるからね」「俺たちがそうだった」と語り、「NOFX見て、かっこいいなと思って、一緒にやれたらいいな、カルフォルニア行けたらいいな、って思ってたら、行けちゃったのよ」「わけも分からずCD渡してさ(笑)」と、懐かしむ一幕があった。
この日、幕張にいた青年たちがバンドを組み<FAT WRECKED FOR ◯◯ YEARS>に、いつの日か名を連ねることを願いたい。この日唯一の日本人バンドHi-STANDARDもそうして這い上ったことを聞いたなら、荒唐無稽な夢ではないはずだ。
PROGRAM INFORMATION
MTV LIVE: FAT WRECKED FOR 25 YEARS 先行ダイジェスト
2016.01.11(月・祝)
START 23:30/FINISH 24:30
BS スカパー!
MTV LIVE: FAT WRECKED FOR 25 YEARS
2016.01.30(土)
START 20:00/FINISH 22:30
MTV
NOFX、Hi-STANDARD、ラグワゴン、ストラングアウト、グッドリダンス、スナッフ、スウィンギンアターズ、ウエスターンアディクション、トイギター、マスクドイントルーダー、フラットライナーズ(番組内で放送されるアーティストは変更になる場合があります。)
MTV オフィシャルサイト FAT WRECKED FOR 25 YEARS オフィシャルサイト
FAT WRECKED FOR 25 YEARS
text by Tsutomu Yamaguchi
photo by Kohichi Ogasawara