「韓流」という言葉が日本で市民権を得てから、早いもので15年近くの時が経つ。その最初のきっかけは2003年にNHKBS2で放送が始まった『冬のソナタ』。この純愛ドラマは中高年の女性を中心に爆発的な反響を呼び、主演のペ・ヨンジュンをはじめとする韓国人俳優・女優が日本でも大人気に。第一次韓流ブームは、韓国発のドラマや映画によって引き起こされたものだった。

その後、韓流ドラマのブームは一旦収束したものの、今度は2009年頃からK-POPによる第二次韓流ブームが到来する。BIGBANGに代表されるボーイズ・グループ、少女時代やKARAをはじめとする女性アイドル・グループが相次いで日本デビューを飾り、TV番組への出演やコンサート活動で日本国内での活動を活発化。東方神起、少女時代、KARAの3組が揃って2011年の紅白歌合戦に出場した事実は、当時のK-POPの勢いを最も端的に象徴しているだろう。

ただ、グループの乱立による飽和、東方神起とKARAの所属事務所との契約問題などが報じられたことで、アイドル・グループが牽引したK-POPブームも翌2012年には急激に冷え込むことになる。同年には、PSYの“江南スタイル”が世界中でヒットするという現象もあったものの、特に日本国内における韓流は、日韓の関係悪化などの政治的要因も手伝って、衰退の一途を辿っていった。

三度目の韓国音楽ブーム到来

しかし、気づけば今また、三度目の韓国音楽ブームが訪れつつある。しかも、今回の韓流ブームには、第一次・第二次と決定的に異なる点が2つある。一つには、今脚光を浴びているグループが、第二次におけるアイドル・グループのような画一的な特徴を持ったものではなく、音楽ジャンル・国籍・海外活動といった様々な点において多様なバリエーションを持っていること。もう一つは、政府による経済政策というトップダウン的な側面も持っていた第一次・第二次とは異なり、それらのカルチャーがより自然発生的に浸透していることだ。

例えば、今年相次いで日本デビューを果たしたTWICEやBLACKPINK。彼女達は、形態的には第二次K-POPブームと同じ多人数女性アイドル・グループではある。だが、各メンバーを見ると、TWICEは9人中2人が日本、1人が台湾出身。BLACKPINKは4人中オーストラリア出身、タイ出身のメンバーを1人ずつ擁する、多国籍なグループ構成となっている。

また、アメリカで三大音楽賞の一つに数えられる<アメリカン・ミュージック・アワード>の授賞式で、韓国のグループとして初めてパフォーマンスを行うことが決まっている防弾少年団も特筆すべきユニークな存在だ。

彼らはBIGBANGをロールモデルとして活動を開始したグループで、アイドル的な側面も併せ持ってはいるものの、音楽性はメンバーが音楽プロデュース等を手掛ける本格的なヒップホップ。

主にソーシャル・メディアを通じてグローバルに火が付き、今年5月にはアメリカの<ビルボード・ミュージック・アワード>で、トップソーシャルアーティスト賞を受賞。2011年の新設から昨年まで、この部門はジャスティン・ビーバーが6年連続受賞していたが、防弾少年団はその連続記録を止める快挙を成し遂げた。また、9月には、韓国のグループとして初めて「Spotify」のグローバルトップ50にランクイン。第二次K-POPブームのボーイズ・グループの多くに見られたトップダウン型の施策ではなく、SNSやストリーミング・サービスを通じたヴァイラル・ヒットによって世界的な人気を獲得しつつある。

上記のグループはメンバー構成やイメージにおいて、第二次のK-POPに通じる側面もある。だが、今注目を浴びる韓国発の音楽は、いわゆるK-POP以外にも多種多様だ。HYUKOHに代表されるロック・バンド。アメリカからも熱烈な視線を送られるキース・エイプらが牽引する、ヒップホップ・シーン。他にも、EXOを脱退したクリス・ウー(中国系カナダ人だが、所属事務所は今も韓国のSMエンターテイメント)や元2PMリーダーのジェイ・パークは、アイドル・グループ出身ながら、アメリカの気鋭ラッパーとの共演・共作を通じてヒップホップ・アーティストとしての人気を確立しつつある。

K-CLASSICと呼ばれるクラシカル・クロスオーバーの潮流

さらに、韓国の音楽シーンからは、さらにユニークなムーヴメントも生まれてきている。それがK-CLASSICと呼ばれるクラシカル・クロスオーバーの潮流であり、それを代表するのが4人の実力派からなるヴォーカル・グループ、フォルテ・ディ・クアトロだ。

防弾少年団、TWICE、HYUKOHら百花繚乱の韓国音楽シーン。その新たなムーヴメント「K-CLASSIC」の大本命、フォルテ・ディ・クアトロとは music_fdq_2-700x464

ミュージカル俳優としての経歴を持ち、グループのリーダーを務めるコ・フンジョン。ソウル大学校のクラシック声楽部の学士号を取得し、今は同大学の修士課程に学ぶキム・ヒョンス。キムと同じ大学で学んだグループ唯一のバス、TJソン。一度も正規の音楽教育を受けていないにも関わらず、コンテストを勝ち上がりシンガーとなったイ・ビョリ。

この4人がフォルテ・ディ・クアトロの結成に至った最初のきっかけは、2016年末から放送されたJTBC TVの番組『ファントム・シンガー』だった。韓国初のクロスオーバー・シンガー・グループ結成を目的とするオーディション番組において、彼らは番組の最終選考者の中から結成され、2度のファイナル・ラウンドにおいて聴衆と番組の視聴者による投票で初の勝者に。

韓国ではすでに国民的な注目を浴びており、今年5月から行われた14都市を巡る初のツアーは全てソールド・アウト。ソウルでのコンサート(6月8日)に至っては、4000席を発売後15分で即完売させるなど、その人気は過熱の一途を辿っている。

日本デビュー作『フォルテ・ディ・クアトロ』リリース

この度、11月1日に日本リリースされた彼らのデビュー作『フォルテ・ディ・クアトロ』は、韓国で5月に世界的レーベル〈デッカ〉から発売されたアルバムに“Destino~愛が変えたすべて(「Destino~運命」日本語ヴァージョン)”をボーナス・トラックとして加えたもの。オーディション時から多くの視聴者を虜にしてきた彼らの魅力が凝縮された、名刺代わりの一枚と言えるだろう。

収録されているのは、声楽・オペラの歌唱をベースとしつつも、より幅広い音楽ファンにリーチする多様な楽曲。『ファントム・シンガー』で披露されていた“オデュッセイア”や“愛の教科書”。『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ライフ・イズ・ビューティフル』といった映画のタイトル・ソングのカバー。コールドプレイ“Viva La Vida~美しき生命”から、韓国のR&Bグループ、ブラウン・アイド・ソウルの“ラヴ・バラード”のカバーまで。『ファントム・シンガー』の審査員から「天国から贈られた声のようだ」と評された4人のハーモニーによって、あらゆる楽曲がフォルテ・ディ・クアトロの美しい色に染まっている。

[공연] 포르테 디 콰트로(Forte di Quattro) – Fantasma D’Amore

第三次とも言える韓流の再ブームの中、K-CLASSICの潮流はどこまで大きな台風の目となっていくのか。それはひとえに、彼らフォルテ・ディ・クアトロの活躍にかかっているだろう。日本デビューを果たしたばかりながら、彼らはすでに2ndアルバムも完成済。タイトルは『クラシカ』で、よりクラシックに近い作品となっているという。今後は日本を含む近隣諸国でコンサート・ツアーをやりたいとの願望を語っており、さらなる飛躍が期待される。

また、韓国では『ファントム・シンガー』のシーズン2も放映中で、彼らの後を追う後継シンガーも続々と頭角を現し始めているようだ。韓国音楽シーンの中でも一際ユニークな輝きを放つフォルテ・ディ・クアトロと、彼らが牽引するK-CLASSICの未来に、ぜひとも注目しておいて欲しい。

フォルテ・ディ・クアトロ紹介映像【11月1日、日本デビュー決定!】

RELEASE INFORMATION

フォルテ・ディ・クアトロ

2017.11.01
フォルテ・ディ・クアトロ

限定盤(SHM-CD)
¥3,980(tax incl.)
防弾少年団、TWICE、HYUKOHら百花繚乱の韓国音楽シーン。その新たなムーヴメント「K-CLASSIC」の大本命、フォルテ・ディ・クアトロとは music_fdq_3-700x692

限定版

通常盤
¥3,240(tax incl.)
防弾少年団、TWICE、HYUKOHら百花繚乱の韓国音楽シーン。その新たなムーヴメント「K-CLASSIC」の大本命、フォルテ・ディ・クアトロとは music_fdq_1-700x692

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フォルテ・ディ・クアトロ 日本公式サイト

text by 青山晃大