今年9月にリリースされた、FILTERの2ndミニアルバム『Our Breathing』のリリースツアーファイナルが、11月29日(金)に新代田FEVERにて行われた。この日のゲストとして迎えられたのは、ankJABBA DA FOOTBALL CLUB空きっ腹に酒の3組。音楽性で言えば“異色”とも捉えられる共演だったが、FILTERの音楽性もまた、様々な音楽的カラーを吸収し、自分たちの色として生み出し、昇華しているものだよなと思い至った。そんなFILTERが、自分たちが掲げる「多幸感を与えるバンド」という土台を更に強固なものにしながら、ライブを通じて更に前進していくというエナジーを感じる作品となった『Our Breathing』。その過渡期的作品を引っ提げた彼らのライブの模様をレポートする。

LIVE REPORT
2019.11.29(FRI)@新代田FEVER
FILTER presents
<Our Breathing Release 7都市 TOUR 2019東京>

ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_09-1440x961
photo by yui

「今日は色んなところから人が集まっているから、行けるところまで行こう!」――この日のFILTERのライブは、豊方 亮太(Vo/G)の開会宣言とも呼べる言葉と“Into The Fire”でスタートが切られた。そして、音が鳴りだしたその瞬間から巻き起こるのは、満場のシンガロング!全員一致で熱気と一体感を生み出しながら、スタートダッシュを切るかの如く、そのまま“Symphony of Hope”“Day After Day”へと突入していく。「曲の合間に歌いどころを作って緩急をもたらすのではなく、一曲全部が歌いどころだったら楽しいでしょ?」という彼らの信条に満ち満ち溢れているライブの中で、「隙」という概念は存在しない。どこがキラーフレーズなのか?と聞かれても、「全部!」と答えるしかないのだ。だからオーディエンスであるこちらも、曲が終わると喉がカラカラになっていることが多い。

そういった意味で、彼らはステージとフロアで境界線を引かない。葛西 達也(Ba/Cho)木村 彰(Dr/Dho)の安心感のあるベースライン、あベス(Key/Vo)の煌びやかな歌声と鍵盤の音色、高野 優裕(Gt/Cho)と豊方のギターアンサンブル。メンバー5人が放つ声とサウンドと共に、オーディエンス全員が歌い、クラップで音を、ステップで風と熱気を生み出すことで、FILTERの“ライブ”は完成するのだ。

ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_01-1440x2157
photo by 中村里緒
ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_04-1440x962
photo by 中村里緒

前作のリリースツアーから始まり、さらに今作のレコーディング、リリース、そしてツアーを行ったという2019年を「重要な年だった」と総括しながら、“Friend Like Me”をプレイすると、ミディアムテンポのメロディに合わせて自然とクラップが沸き起こる。さらにそこから、エネルギッシュな“Brad Pitt”、ラテンのリズムに血が沸く“Rumba”を続々と投下!先述した「全員参加のライブ」というバンドの信条と、聴く人の衝動を突き動かすパンク魂迸る重厚なビート。そして多彩な楽曲テーマ。彼らの楽曲は、バンドとして育み守り抜いてきた軸の部分をぶらさぬまま、1曲1曲でコンセプトが異なっているから、聴いていて単純に楽しい。

以前、FILTERのメンバーにインタビューをした際、彼らは「元々は、ディズニーシーのような音楽をやりたいと思っていた」と語ってくれたが、ライブを体感するとその所以がよく分かる。オーケストラを思わせる重厚で豊かなサウンドスケープやメロディの中に散りばめられた多国籍な音楽性がもたらすトリップ感と、ライブハウスで自らが歌い身体を揺らしているという実感。そうした現実と非現実の奏和が、こちらのワクワク感を刺激してくる。そして、そうした発想=ブレーンの部分をFILTERの土台として十分に構築した上で、今の彼らからは、バンドとしてのフィジカルとメンタルの強さが、ライブから溢れんばかりに伝わってくる。

夢見心地で終わらせるのではなく、「俺たちの音楽は最高だ」という揺るがぬ自信と意志の強さを持って、5人が全身全霊で人の心の奥にある衝動の核を突いてくるような、生々しく、熱気迸るライブをするのが現在のFILTERだ。だからこそ、彼らのライブでは誘発されるまでもなく声が上がり、拳が上がり、身体が動く。「感動する」というのは「感じて、動く」と書く。それゆえFILTERのライブは、正真正銘、全員が感動しているという最高の空間なのだ。

ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_02-1440x962
photo by 中村里緒
ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_05-1440x962
photo by 中村里緒
ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_03-1440x962
photo by 中村里緒

けれど、そういったトータルバランスは、彼らの中からするっと生み出されたものでは決してない。MCの中で豊方が「この半年、友達や他のバンドマンと話していて、このままじゃだめだと直感で思えた。だから『Our Breathing』の曲には間違いなく自分たちの“最高”を詰め込んだんだけど、この最高ではない““最高””に、この先到達したいと俺は思った。結局は、音楽に自分自身を詰め込んで、俺は俺でいることが大事だということに気付かされた」と語っていた。

インプットするにもアウトプットするにも、何かしらのセンスは必要なのだと思う。FILTERの音楽が生み出す楽しさやワクワク感は、FILTERという5人の音楽的センスの賜物であることには間違いない。そうしてバンドとしての自身の音楽性を確立してきた彼らだが、FILTERはそこで満足をしたり、努力を惜しんだりするようなことは決してしない。「やるならば、とことんやる」というストイックさ、バンドを愛する屈強で真っ直ぐな想い、そして「音楽で楽しみ続けたい/楽しませ続けたい」という飽くなき好奇心と向上心。そういった精神性が、彼らを更なる「最高地点」へと向かわせているのだろう。

これからも高みを目指し続けると誓った彼らは、あベスがメインボーカルを務めるシティポップ感溢れるナンバー“All Night Long”や、美しい爆発力に感極まった“Last Dance”を経て、ラストに「この曲が出来たことで助けられた」と語られた“Stand By Me”を届けた。この曲に込められた「いつまでも、傍にいてくれよ」という願いは、これまでのようにメロディから感じたインスピレーションや世界観を優先したものではなく、豊方の心の底から湧き出てきたものだ。少しずつ、けれど着実に、FILTERが変わり始めている。アンコールの“Pray Tonight”が鳴り終わった後、その余韻の中に身を置きながら、新しい何かが始まる予感がした。

祝祭のようなライブ、福音のような幸福感溢れる音楽、そして今作で気付いた「歌詞に対する自身の投影」。それらの融合の先に、見たこともない新しい景色が広がっている――そんな予感だった。FILTERはこれからまた、私たちに真新しい最高の景色を見せてくれるのだろう。その未来を、傍で見守り続けていきたいと心から思えた夜だった。

ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_07-1440x962
photo by 中村里緒
ライブレポート|まだ見ぬ“最高”に向かうFILTERが会場の全員と作り出す、最初から最後まで大熱狂の空間 music191213_filter_livereport_08-1440x961
photo by yui

Live Photo by 中村里緒/yui
Text by 峯岸利恵

EVENT INFORMATION

FILTER presents
『Our Breathing Release 7都市 TOUR 2019東京』

2019.11.29 (金)
OPEN 18:30/START 19:00
新代田FEVER
TICKET:¥2,800

LINE UP:

FILTER
ank
空きっ腹に酒
JABBA DA FOOTBALL CLUB

詳細はこちら