DISC REVIEW

Foals

Text by
Taiyo Sawada

     

「UKロックの頂き」に昇りつめるまで

一昔前の感覚からすれば少し意外な、さらに元来ストイックで無欲なバンドが、2019年の現在、UKロックシーンの頂点に立とうとしている。それがFoals(フォールズ)だ。

その道のりには10年の月日を要しているが、当時を覚えている身からすれば、今日の彼らの状況は考えにくい。デビュー・アルバム『Antidotes』が登場したのは2008年。時代はヴァンパイア・ウィークエンドやMGMTと言ったニューヨークからのヒップスター・バンドが脚光を浴びカルチャー・メディアの話題をさらっていた。UKでは2002年のザ・リバティーンズ以降に隆盛を極めていたバンドのシーンが2005年末のアークティック・モンキーズの筒状でピークに達した後、徐々に下降していた頃。

フォールズは”Cassius”をキラー・チューンに、ポスト・パンク・リバイバルの後発組の
イメージでデビュー。フロントマン、ヤニス・フィリッパケスの才能が一部評価されたこともあり、アルバムは全英初登場3位と上々の滑り出しだったが、それがアメリカやヨーロッパ全土に届くことはなかった。ただ、マス・ロックをルーツに持つ彼らの、細かく切ったポストパンクの中ではやや異色のカッティング・ギターは、マス・ロックの需要の強かった日本ではこの当時からかなり好意的に受け入れられていた。

Foals – Cassius (video)

続くアルバムは『Total Life Forever』。リリースは2010年。UKロックが厳しい冬の時代に突入した頃だ。2000sに人気の多くのバンドがここをうまく超えられなかったことで勢いを失った。フォールズ自身も多少逆風を受け、最高位そのものは9位に下がった。だが、ここで彼らは早急で、ややもすると単調にも聞こえかねなかったポストパンク・グルーヴからドッシリとしたファンクにシフトを動かした。そして、彼らのメロディックな側面を開花させたスケールの大きなバラード”Spanish Sahara”でバンドとして一皮むけたのである。

Foals – Spanish Sahara

彼らが飛躍のチャンスをつかんだのは2013年、サード・アルバム『Holy Fire』を出した時だ。このアルバムで彼らは「ファンクネス」と「メロディアス」をしっかりとサウンドの軸として置き始めた。これまでのアッパー・ナンバー史上最もキャッチーな”My Number”、そしてトレードマークのカッティングのリフを使いながらもドッシリとメロディックに聞かせるミディアム・ナンバー”Inhaler”を軸としたこのアルバムはその時点での最高傑作との絶賛を浴びた。その結果、アルバムは全英2位を記録したのみならず、オーストラリアではナンバーワン。フランスやドイツでトップ30入りするなど躍進を遂げた。さらに”Inhaler”は全米オルタナティヴ・チャートで20位を記録するなど、アメリカも視野に入れ始めた。

Foals – My Number

Foals – Inhaler

さらに2015年には『What Went Down』を発表。アークティック・モンキーズで知られるジェイムス・フォードをプロデュースに迎えた今作で彼らはガッシリとした重量感を蓄えた。全英3位でヨーロッパ中でもヒットしたが、特筆すべきはこの中の”Mountain At My Gates”が全米オルタナティヴ・ロック・チャートで1位を獲得しアルバムも58位まで上昇と、アメリカでの成功の足係をつかんだこと。そして、このころになると、ところによってはフェスでヘッドライナーに手の届く位置に出演スロットが置かれるようにもなっていた。

FOALS – Mountain At My Gates [Official Music Video] (GoPro Spherical)

この間、メディアがフォールズを”ロック界の寵児”とばかりに騒ぎ立てるようなことはなく、一般的に知られるようなヒット曲があるわけでもなかった。彼らはただ、自分たちを成長させることだけに力を注ぎ、そこで出して行った結果が、彼らが本来聞かれるべきオーディエンスの規模となって跳ね返ってきたのみだ。それはバンドとして理想的な成長の課程だが、今これができるバンドが世界にどれほどあることか。

そして今、その前作から4年の月日が流れた。その間、フォールズからはベースのウ
ォルター・ジャーヴァースが脱退する事態なども起きていた、だが、それが、「フォールズこそが次のヘッドライナー・クラスのバンド」と考える、UKロックのメディアのファンの考えを覆すことはなかった。

そのことは1月に先行シングルの”Exits”が解禁された時からのファンの熱狂や、メディアのカヴァリッジ(取り扱い方)でも明白だった。もっともイギリスのロック界も近年の人気の落ち込みが目立つこともあり、アークティック・モンキーズやTHE 1975に続くスターが強く望まれている事情があるとは思うのだが、フォールズへの扱いはもう「大御所」のそれで、これまでになく彼らの写真がメディアをにぎわせる機会は確実に増えた。

FOALS – Exits [Official Music Video]

そして”Sunday”、”On The Luna”と解禁を重ねて今作『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』のリリースと相成った。「今回のアルバムは、時間差で2つのアルバムが出ることになる」。彼らからのこの異例の宣言で、フォールズのコンディションが良さそうなことはわかっていた。「曲が順調に書けていた」という充実ぶりをうかがわせるからだ。だから楽観はしていた。

だが、出来上がったそのPart 1は、こちら側の期待を軽く上回った。それはまるで、彼らのこれまでの軌跡を改めて高いテンションで詰め込むことによって、シーンの頂点に対して王手を打つような、これまでの彼らに感じたことのない強い意欲を感じることさえできた。
 とにかくアルバムの冒頭から「攻め」の曲の連打、連打!今回のアルバムのみならず、この後に行われるこのアルバムに伴うツアーでのライブを見越してのもののようでもある。

Foals珠玉の最新作『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』から紐解く「UKロックの雄」その軌跡 music190314_foals_2

ディスクレビュー:『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』

とにかくこのアルバム。その始まりから曲のつながりが絶妙にいい。
アルバムの序曲とでもいうべき”Moonlight”で幕を開けた直後には今作が誇るアンセム”Exits”が待っている。”Inhaler”、”Mountain At My Gates”といったガッシリとしたスケールの中にグルーヴの躍動を湛えた、フォールズ流アンセムの王道とも言えるナンバー。
まずはここで一喝入れる。

Foals – Moonlight [Official Lyric Video]

すると前半は、デビュー時から一貫したリズミカルなナンバーで、フロアを燃え盛がらさんとする。それも、パンク、エレクトロ、さらにヒップホップ風と、異なる音色とBPMでたたみかけてくるから、単調に陥ることなく、踊り続けることが可能だ。

Foals – In Degrees [Official Lyric Video]

そして後半の折り返しは”On The Luna”。間違いなく、今後のフォールズのライブでのクライマックスの一つになるであろう、フォールズ史上最高のロックンロール・チューン。ローリング・ストーンズを彷彿とさせる切れ味鋭いギター・リフと、少しずれてはいるキーボードのリフの微妙なズレが生む複合的なグルーヴ。

Foals – On The Luna [Official Music Video]

「ロックンロールもまだ工夫すればいくらでも行ける」手本をフォールズが自ら示してくれたような今後のロック界の観点からも頼もしい一曲。そして、その直後を、ヴィヴラフォンとスネアの細かい刻みの”Cafe D’Athens”がすぐさま続く。これもワールド・ミュージック風と、グルーヴの多様性が生きている。

Foals – Cafe D’Athens [Official Lyric Video]

そして短いインタールードの後は、バラード二連発でクロージング。前半に溜めて後半に劇的なダンスの大団円を迎える”Sunday”、そして混沌とした静寂の中、淡々と幕を閉じる”I’m Done With The World(&It’s Done With Me)”。各曲の充実ぶりもさることながら、ここまで適材適所に絶妙な曲の順列で完璧に構成されたアルバムもそう存在するわけではない。

Foals – Sunday [Official Lyric Video]

Foals – I’m Done With The World (& It’s Done With Me) [Official Lyric Video]

「part 2もロケット・ペンダントのように対になっているんだ」とヤニスは語っているが、こうしたクオリティ、流れ、サイズの三拍子取れた作品がもう一つ作れているということか。これは2枚組アルバムをただ曲を並べて漫然と作るよりもはるかに難しい行為だが、もし仮にそれができているのなら、それと同時にフォールズが時代を制すタイミングさえやって来そうだ。

そして、この勝負をかけたようなエネルギッシュな内容。ヤニスは今作の歌詞について「危険な現在の社会に対しての警鐘」と語っているが、いわば「断末魔において危機感を抱く人たちの精一杯の抵抗としてのダンス」ということなのだろうか。そんな風にも考えてしまいたくなるほどの強い生命力もこのアルバムには宿っている。

更に<SUMMER SONIC 2019>の追加出演者の中にもフォールズは名を連ねていた。このアルバムを引っさげた現在の彼らを生で観れるとあっては、否が応でも期待が高まる。

いずれにせよ、このアルバムがフォールズや世界中のロックファンにとって今後、
何事ももたらさずに終わるということは、まず考えられない。

Foals珠玉の最新作『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』から紐解く「UKロックの雄」その軌跡 music190314_foals_1

Foals『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』

text by Taiyo Sawada

RELEASE INFORMATION

Everything Not Saved Will Be Lost Part 1
エヴリシング・ノット・セイヴド・ウィル・ビィ・ロスト パート1

Foals珠玉の最新作『Everything Not Saved Will Be Lost Part 1』から紐解く「UKロックの雄」その軌跡 music190314_foals_3

Jon Spencer
Foals
発売中
¥2,400(+ tax)
仕様:歌詞・対訳・解説付

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