ったく無名の新人バンドのデビュー曲が、一人の女の子ブロガーのポストをきっかけに口コミで話題を呼び、全世界で900万枚のヒットを記録する――そんな“Pumped Up Kicks”でのブレイクを経て、デビュー作『トーチズ』が新人インディー・ポップ・バンドとしては異例の200万枚を売り上げ、瞬く間に人気バンドの仲間入りをしたフォスター・ザ・ピープル

その後は<サマーソニック>や<コーチェラ>を含む各地の巨大フェスティバルに出演、<グラミー賞>にもノミネートされた。そんな彼らのセカンドアルバム『スーパーモデル』が、ついに完成! 新曲5曲のお披露目の場にもなった1月の地元LAでのチャリティー・ライヴでは、新作のアートワークを施した巨大壁画の前にファンが集結。続いてシングル“Coming Of Age”のMVが公開されるとインディー/ポップ・リスナー、はたまたケイティー・ペリーまで世代も立場も様々な人々がラヴコールを送り、ここ日本でもその熱は沸騰寸前だ。昨今の洋楽不況も何のその、ポップ・シーンを照らす光(=トーチズ)として若手屈指の人気を集めるフォスター・ザ・ピープル。彼らがここまで愛されるのは、一体ナゼ? 今回は4つのポイントに分けて、バンドの魅力を覗いてみよう。

・ぐるっと360°、誰にでもアプローチできる全方位対応のポップネス

作曲を担当するマーク・フォスターが最も影響を受けたソングライターはビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン。デビュー後にLAで前座を務めた際には「昔自分がビーチ・ボーイズを観た会場に、出演者として立てるなんて…」と感激したほどで、彼ら特有のキャッチーで心躍るメロディーの核がビーチ・ボーイズ風のエヴァーグリーンな楽曲にあるのは間違いない。とはいえ、マークは同時にエイフェックス・ツインやカニエ・ウェストを筆頭にありとあらゆる音楽を聴く生粋のポップ・マニア。そのため彼らの楽曲はクラシックさとモダンさ、そして様々なジャンルのちょうど中間に位置していて、ぐるっと360°、どの方面にもポップな形でアプローチしていく。また、“Pumped Up Kicks”の歌詞が実は孤独な青年が“流行りのスニーカー(=pumped up kicks)”を履く少年を銃で狙う内容だったりと、“愛の欠落”などを表現したダークな歌詞を、手拍子や激キャッチーなコーラスでポップなものに変換するのも彼らならではだ。

Foster The People“Pumped up Kicks”

・ルックス、ファッション、変なダンス…? ‟等身大の親しみやすさ“

そんな間口の広さは、ルックスやファッションにも顕著。海外のファッション誌の取材で語ったメンバーのこだわりは「シンプル&スタイリッシュ」で、H&Mやお気に入りのセレクトショップのものを取り入れた服装や、すぐ隣に住んでいそうな親しみやすい風貌は、彼らの音楽にもそのまま通じる雰囲気だ。また、マーク・フォスターがライヴで見せるへんてこなダンスや、ゆるキャラが大集合した『トーチズ』のアートワークから伝わるのは、敷居を上げずに「みんなで楽しもう」ということ。たとえば“Pumped Up Kicks”のブレイクのきっかけを作ったドイツの女の子ブロガーにバンドからお礼のメールが届いたという話からも、彼らの気さくな性格が伝わるはず。そもそもバンド名は「フォスター・アンド・ザ・ピープル」を縮めたもので、3人が口々に語るのも「人のために音楽を作りたい」ということだ。

Foster The People“Houdini”

次ページ:パワフルでアグレッシヴなライヴの魅力!!