汗をかき、喉が渇き、がっつり焼けた3日間──「“いつものフジロック”をお天道様も祝福してるのかもね〜」なんていう来場者の声も、綺麗事ではなく心地良かった。

7月29日(金)〜31(日)に、<FUJI ROCK FESTIVAL’22>(以下、フジロック)が新潟県・苗場スキー場で開催され、7月28日(木)の前夜祭からのべ4日間で6万9000人が参加した。

振り返ると2020年の開催延期を経て、昨年のフジロックは「日本人アーティストのみ」「アルコール禁止」をはじめ、徹底した新型コロナウイルス感染対策の中で開催された“特別なフジロック”に。一方で今年は“いつものフジロック”をテーマに掲げ、コロナ第7波の影響を考慮したガイドラインを設定した上での開催ではあったものの、海外アーティストが数多く参加し、場内でのアルコールも解禁となった。

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まず今年の<フジロック>におけるトピックは、冒頭でも触れた“天気”! もうとにかく晴れた。レインウェアをバッグから一度も出さなかったほどで、期間中に雨が降ったのは記憶の中で2回。それも短時間で、シャワーのように気持ちいい天気雨が降り注ぐのみだった。

そしてライブに関しては、やはり海外アーティストの参加が何よりのトピック。ライブレポートではないので割愛するが、3日間それぞれのトリを務めたヴァンパイア・ウィークエンド(VAMPIRE WEEKEND)、ジャック・ホワイト(JACK WHITE)、ホールジー(HALSEY)などの超メジャーなアーティストから、モンゴルのバンド・ザフー(THE HU)やブルックリン出身の奇才ラッパー・ジェイペグマフィア(JPEGMAFIA)、ロンドン発のシンガーソングライター・アーロ・パークス(ARLO PARKS)など、ブッキング担当の“フジロックらしさ”への気概を感じるようなアーティストまで。海外アーティストの参加も“いつもフジロック”の条件のひとつであることを痛感する、開催前の期待以上に素晴らしいライブが3日間を通して多かった。

また、まだ観たことのないアーティストをタイムテーブルでチェックし、自分の直感を信じてステージに足を運ぶときのワクワク感や背伸び感──それこそが<フジロック>ならではの醍醐味であることも再確認させてくれた。

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ここでお酒のお話も少し。今年の<フジロック>ではアルコールが解禁され、会場内にはありし日のフジロックの景色が帰ってきた。それでも夜のオアシスはかつてに比べるとまだ余裕があり、常連組の「俺たちのパレスよ〜!」という叫びも切実だ。やはり自然×音楽×お酒の組み合わせが僕たちの愛す<フジロック>であり、遠まきながら見た去年の閑散とした<フジロック>の光景は、もうあれが最後でいい──そう思わざるをえなかった。

<フジロック>の生みの親・日高正博氏は公式メディア・富士祭電子瓦版のインタビューで、<フジロック>に“ルール”はなく、あるのは長年かけてお客さんと作ってきた“共通認識”だと語っていた。同時に、「ルールってなると、俺は『ぶっ壊せ!』ってなっちゃうからさ(笑)」とも。あと<フジロック>自体に言及した話ではないけれど、生粋のロックンローラー・甲本ヒロト氏もかつて言っていた、「ルール破ってもマナーは守れよ」と。

こういうことを言うとまた揚げ足を取られそうだが、大事なのは時代の流れや社会情勢に応じて変わるルールに盲従せず、好きなものがあるなら、それを守るためのマナーを共通認識としてコミュニティで持つこと。それが<フジロック>の場合、再び引用するが「好きな音楽を通じて、ゴミは自分で片付ける。食事は自分で何とかする。譲り合え。喧嘩するな。終わったら後片付けをちゃんとして帰ろう」(日高正博)なのだと思う。

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今回の<フジロック>に限らず、“いつもの”ことをするためには、“いつも以上の”ことをしなければいけないのが世の常。それがコロナ禍という未曾有の事態の中、日本最大級のフェスを開催となると、想像するだけで腹と心が痛い、準備と労力と覚悟が必要だ。

それらを背負って開催を実現した運営スタッフ、そして苗場の人々にも感謝したい。実際、期間中に泊まった民宿の方たちのホスピタリティ精神には頭が下がる思いで、直接的な言葉はないけれど、表情や行動から「よく来てくれたね」という気持ちが伝わってきた。

“いつものフジロック”を開催するための、いつも以上の想い。結果的に節目の25回目を迎えた2022年の<フジロック>は、昨年の逆風を乗り越え、コロナ禍における日本の野外フェスの新たなフォーマットと、そう遠くない“出口”を見せてくれたように感じる。

最終日、エントランスゲートに浮かぶ「SEE YOU IN 2023!!」の文字がとびきり眩しい。来年こそ口元を塞ぐものなどなく、自然と音楽とお酒に酔いしれながら、何も気にすることなくコール&レスポンスもハグもできる瞬間が訪れることを切に願う。

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Text by ラスカル(NaNo.works)

INFORMATION

FUJI ROCK FESTIVAL ’22

2022年7月29日(金)30日(土)31日(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場