2019年11月16日(土)、台湾台北市の国立國父紀念館(こくふきねんかん)にて、インディーズミュージシャンを中心に贈られるミュージックアワード<金音創作獎(英:Golden Indie Music Awards)>が開催されます。

この音楽賞は、行政の支援のもと行われ、台湾のインディーズシーンでは知らない人がいないほどのイベントなのですが、日本でご存じの方はそう多くないのでは……?

そこで今回はそんな方のために、<金音創作獎>のコンセプトや、ノミネートされたアーティスト達についてお伝えします!

<金音創作獎(Golden Indie Music Awards)>とは?

16日開催、台湾インディーズミュージックの祭典!<金音創作獎>とは? 01_2019-GIMA-ceremony-1440x960

<金音創作獎(英:Golden Indie Music Awards)>とは、中華民国(台湾)政府文化部影視及流行音樂產業局が主催する音楽賞で、2010年の初開催以来、今年で10年目を迎えます。

<金音創作獎>の目的は、クリエイティブなミュージシャン達が発信するすぐれた作品を発掘し、台湾を流行音楽の発信地としてアピールすること。6月ごろに開催される台湾最大の音楽賞<金曲獎 Golden Melody Awards>と比較すると、インディーズミュージシャンたちに多くのスポットライトが当たるのが特徴です。

部門の構成は、ノンジャンルの「ベストアルバム賞」「ベストバンド賞」をはじめとし、ジャンルに特化したロック、民謡、ヒップホップ、電子音楽、ジャズ、R&B、オルタナティブポップアーティストなど、合計24部門。

この賞をチェックすれば、今、台湾インディーズシーンや、クリエイティブなシーンで注目されるアーティストを一気にチェックできるでしょう。

それでは、今年はどのようなアーティストたちがノミネートされているのでしょうか?

文字数の都合上、全てをご紹介するのは難しいのですが、日本から特に注目したいアーティストたちをご紹介します!

Elephant Gym 大象體操

大象體操 Elephant Gym – 凝視 Gaze at Blue【Official Music Video】

日本でも高い人気を有する、インストゥルメンタルを主体としたロックバンドElephant Gym。2018年リリースの最新アルバム『Underwater』では音楽性の広がりを見せ、台湾国内のみにとどまらず、2019年3月に行われた初のUSAツアーがsold out。同5月に日本の渋谷WWWXで開催されたWONKとの2マンライブも大盛況で幕を閉じ、世界的にも活躍の場を広げました。

2020年1月には、日本では初となるワンマンツアー<The Rats and The Elephants>の開催が決定。その後、半年間の充電期間を予定しています。

Elephant Gymは、今年の<金音創作獎>で最多の6部門にノミネートされました。ベストアルバム賞、ベストバンド賞、ベストロックソング賞、ベストクロスオーバー&ワールドミュージックアルバム賞、同ソング賞に加え、ベースのKT Chang(張凱婷)は、ベストプレイヤー賞へ。このうち何部門受賞するか、ぜひ見届けたいですね!

Amazing Show 美秀集團

美秀集團 Amazing Show-電火王 King of Light (.aka KOL) 【Official Music Video】

近年、台湾のインディーズシーンでは、台湾語ロック※が流行を見せています。なかでも、台湾語ロックと電子音楽を融合させた、Amazing Show(別名:Bisiugroup)が大きな支持をあつめているのをご存じでしょうか?

2018年の最新アルバム『電火王』は今年、代官山蔦屋で開催された「平成台湾100アルバム展」でも紹介されました。キャッチーなメロディーに加え、ライブでハンドメイドの楽器を使用するなど面白い取り組みが評価され、ベストバンド賞ベストライブ賞ベストロックアルバム賞ベストロックソング賞ベストフォークソング賞の5部門にノミネートされています。

※台湾語について……台湾の公用語は北京語をベースとした普通中国語であり、台湾語は中国語の方言のひとつとして位置づけられています。近年、「音楽を通して故郷の言葉への愛を表現しよう」と、若い世代のアーティストたちが台湾語で曲を作る動きも広がっています。

Go Go Machine Orchestra

Go Go Machine Orchestra – Ouverture

台湾の電子音楽シーンで注目株といえば、エリートサウンドクリエイト集団のGo Go Machine Orchestraです。特に、シンセサイザーを担当するMADは、ニューヨーク・タイムズ誌でも紹介されたコンテンポラリーダンス集団「クラウドゲート」の一部作品へサウンドクリエイションで携わるなど、その実力はお墨付き。アナログ盤をリリースするためのクラウドファンディングを成功させたことでも話題になりました。

高品質のサウンドをライブで再現する演奏力も評判を呼び、今回は、ベストライブ賞ベストクロスオーバー&ワールドミュージックアルバム賞の2部門にノミネートされています。電子音楽や、実験音楽がお好きな方は要チェックです!

Reversing into Garage 倒車入庫

倒車入庫 Reversing into Garage〈殖民家 Colonist〉 Official Music Video

現在の台湾インディーズ音楽シーンでは、シティポップ、ポストロックなどオシャレな音楽性のアーティストがトレンドです。そんな中、パンクシーンから存在感を感じさせるバンドといえば、Reversing into Garage。このバンド名は、ガレージロックへのオマージュであり、ロックの黄金期が終わることを否定しています。活動初期の楽曲は、空の倉庫(=ガレージ)と携帯電話で作成していたとの情報も。

Reversing into Garageの目標は、社会の虐げられた人々に音楽を届けると同時に、すべての人の心へ生きるエネルギーを届けることです。2019年に発表したアルバム『庸人自擾』の同名のリード曲、”庸人自擾”がベストロックソング賞にノミネートされています! また同アルバムは、シンガポールのFreshmusic AwardsでBest New Groupにもノミネートされ、国外にも評価を広げました。

Eli Hsieh 謝震廷

謝震廷 Eli Hsieh【愛麗絲 1993】(Official Music Video)

かつて人気オーディション番組に出演し、圧倒的な歌唱力で天才少年と呼ばれた、現在26歳のEli Hsieh。2018年にリリースの”愛麗絲 Where Are We Going? ”が評価され、ベストオルタナティヴ・ポップアルバム賞オルタナティブポップソング賞ベストシンガーソングライター賞の3部門にノミネートされています!(筆者の推しでもあります。)

Joanna Wang 王若琳

Joanna Wang 王若琳《Sabrina Don’t Get Married Again! 莎賓娜,不要再結婚了!》Official Audio Video

台湾の著名な音楽プロデューサー王治平を父にもつ、女性シンガーソングライターのJoanna Wang。幼少よりロサンゼルスで過ごし様々な音楽性に触れて育った影響から、楽曲ごとの歌い分けに定評があり、中華圏でもっとも期待されるシンガーソングライターのひとりとされています。

2018年リリースの”摩登悲劇”ではソウルフルな歌声とハイクオリティの楽曲が評価され、ベストシンガーソングライター賞ベストオルタナティヴ・ポップアルバム賞ベストオルタナティヴ・ポップソング賞にノミネートされました。

YELLOW

YELLOW – 不開燈俱樂部 BKD Club (Official Music Video)

今、自然なグルーヴにより人気のユニットといえば、ボーカル兼作曲家の黃宣 Hsuan Huangを中心に演奏技術の高いメンバーで結成されたYELLOWです。2018年にファンク、R&B、ソウル、ジャズなどの様々な要素が融合した3曲入りのEP『都市病』を発表し、ベストライブ賞ベストR&Bソング賞の2部門にノミネートされました。

LINION

LINION – Stay there

LINIONは、台湾淡水生まれの若手シンガーソングライターです。2016年に、ロサンゼルスにある全米三大音楽アカデミーのひとつであるMI(Music Insitute)を卒業し、2017年に台湾に戻り、音楽創作活動をはじめました。

バンドサウンドと自由なリズムを組み合わせたファーストアルバム『Me In Dat Blue』がベストR&Bアルバム賞にノミネートされています。

本場のブラックミュージックを学び、Neo-soulとR&B、そして現代台湾のカルチャーを融合させた楽曲に要注目です!

Kay Huang 黃韻玲

黃韻玲 Kay Huang【藍色啤酒海】Official Music Video

例年、音楽シーンへの貢献者に贈られる「特別貢献賞」。今年は、ベテランの女性音楽プロデューサー、女性歌手、女優と3つの顔をもつ黃韻玲 Kay Huangに贈られます。

Kay Huangは、女性アーティストが台湾の音楽シーンで注目されていなかった1980年代から、独創的な音楽を創り続け、音楽クリエイターたちにとって、ロールモデルになっています。

また、Kay Huangが評価されているのは、自分自身の音楽製作のみならず、潘越雲、趙傳、周華健、辛曉琪など、多くの優れたミュージシャンを養成した点にあります。常に謙虚で、ポップミュージック、舞台劇、映画サウンドトラックなどの分野にも幅広く貢献した点が評価され、今回、特別貢献賞に輝きました。

台湾のクリエイティブな音楽シーンをお見逃しなく!

今回は、台湾の音楽シーンの豊富さを感じられるインディーズミュージックアワード、<金音創作獎>について紹介しました。今回、紹介しきれなかったノミネート作品ならびにアーティストについては、<金音創作獎>の公式ホームページで公開されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

皆さんも、お隣台湾から発信されるクリエイティビティに富んだ音楽シーンを感じてみてはいかがでしょうか?

Text:中村めぐみ
Cooperation:TAIWAN BEATS Brien John / 張凱鈞 / 張家綸