② Qetic読者が特に注目しておくべき3つの部門

前回の各国世論アンケートを振り返っても、世界各地のフェスティバルのラインナップを見ても、ここ数年はEDM、ポップス、アイドルなどに追いやられつつあるロック・シーンですが、「年間最優秀アルバム」と「最優秀ロック・アルバム」では我らがベック先生が気を吐いてますし、<コーチェラ・フェス>での盛り上がりも体験してきた身としては、「最優秀新人賞」にノミネートされたバスティルとハイム三姉妹にも頑張ってほしいところ。

そこでQetic読者的にも注目してほしいのが、「最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム」。2010年代はフェニックス、ザ・ブラック・キーズ、ボン・イヴェール、ゴティエ、そして昨年はヴァンパイア・ウィークエンドが受賞を飾ってきましたが、今年はアルト・ジェイ、アーケイド・ファイア、ケイジ・ザ・エレファント、セイント・ヴィンセント、ジャック・ホワイトの5組がノミネート。アーケイド・ファイアは前作『ザ・サバーブス』(10年)で「年間最優秀アルバム」を受賞していますし、ジャックはホワイト・ストライプス時代に受賞経験アリの大ベテランですが、ここはセルフ・タイトルの新作が過去最高の評価(『クロスビート』誌のアルバム・ランキングでも1位でした)を獲得した、アニー・クラークことセイント・ヴィンセントを推しメンしておきましょう。2月には絶好のタイミングで来日公演も控えているだけに、満を持してのカムバックに期待!

St. Vincent – “Birth In Reverse”

その他の注目部門としては、「最優秀ダンス・レコーディング」と「最優秀ダンス/エレクトリカ・アルバム」の2つ。前者は昨年、フォクシーズをゲスト・ヴォーカルに迎えたゼッドの“クラリティ”が受賞しましたが、今年は<エレクトロックス>での来日も記憶に新しいクリーン・バンディットや、昨年の<フジロック・フェスティバル>初日をダンス空間に変えたディスクロージャーとベースメント・ジャックスの名前があり、クラバーならずとも結果が気になるラインナップ。いっぽうの「最優秀ダンス/エレクトリカ・アルバム」は、昨年はダフト・パンクが文句無しの受賞でしたが、今年は<サマーソニック>で初来日も果たしたリトル・ドラゴンやデッドマウス、ロビン&ロイクソップのコラボに混じってエイフェックス・ツインがノミネートされたことは大きな話題になりましたね。もしエイフェックス・ツインが受賞したら、自家用戦車で会場に現れるのでは……なんて妄想も膨らみます。

Aphex Twin – “minipops 67 [120.2][source field mix]”

③ 2014年の授賞式で実現した感動・驚愕のパフォーマンス

<グラミー賞>における最大最高のハイライトといえば、やっぱり豪華絢爛なライヴ・パフォーマンス。奇妙な卵から孵化してみせた第53回のレディー・ガガは衝撃的でしたし、USCマーチング・バンドをバックに従えた第51回のレディオヘッドに、リアーナ、スティング、ブルーノ・マーズの三者がコラボした一昨年のライヴもSNSなどで大いに盛り上がってましたね。ここでは昨年の授賞式でオーディエンスと視聴者を圧倒した、3組のパフォーマンスをプレイバックしてみましょう。

▶ 授賞式が結婚式に!? 同性婚を祝福した感動の1コマ
昨年の授賞式で大きな反響を呼んだのが、何と言ってもマックルモア&ライアン・ルイスの“セイム・ラブ”でした。この曲は米ワシントン州で同性婚法が成立したことにインスパイアされた楽曲で、同性婚の支持をストレートに表現したもの。パフォーマンスは会場に待機していた33組の同性愛カップルを含む新郎新婦の結婚式が、<グラミー賞>の舞台で行われるというコンセプトで、女優のクィーン・ラティファ、メアリー・ランバート、そしてマドンナも共演。ビヨンセ&ジェイ・Z夫妻もスタンディング・オベーションで祝福しておりました。

Macklemore & Ryan Lewis – ‘Same Love” Grammy’s 2014

▶ ダフト・パンクが御大スティーヴィー・ワンダーと共演
<第56回グラミー賞>の“顔”といえば主要2部門含む5部門制覇を成し遂げたダフト・パンクでしたが、授賞式で行われた一夜限りのスペシャル・コラボ・ライヴには世界中から喝采が贈られました。何しろダフト・パンク、ファレル・ウィリアムス、ナイル・ロジャースといった『ランダム・アクセス・メモリーズ』(13年)の参加組だけでなく、スティーヴィー・ワンダーまで客演して音楽ファン垂涎の共演を繰り広げてしまったのですから! それこそテレビ出演自体が08年のカニエ・ウェストのパフォーマンス中にサプライズ出演した以来で、未だ『ランダム・アクセス・メモリーズ』のライヴ・ツアーが実現していないことを思うと、どれだけレアな瞬間だったのかが窺えるというもの。

Daft Punk Pharrell Williams ft. Stevie Wonder 2014 Grammys

▶ シルク・ドゥ・ソレイユ顔負けのアクロバティックなステージに大興奮!!
17歳とは思えぬ貫禄を見せつけたロード、ポール・マッカートニー&リンゴ・スターの夢の共演などもある種の「事件」でしたが、一番の「珍事件」だったのがP!NK(ピンク)姐さんでしょう。当日のパフォーマンスではなんと、舞台の上から宙吊りになって熱唱。もともとオリンピックを目指していた体操選手というだけあって、シルク・ドゥ・ソレイユ顔負けのアクロバティックな美技の連発に場内も大興奮。その後はFun.のネイト・ルイスも飛び入りして名曲“ジャスト・ギヴ・ミー・ア・リーズン”を熱演し、2人の圧倒的なヴォーカルに魅了されました。

P!nk & Nate Reuss performing live at The Grammy’s 2014 “Just Give Me A Reason”

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