音楽、本、映画、アプリからなる4つのフォーマット

驚くのが、本作が音楽作品のほかに本、映画、アプリからなる4つのフォーマットからなるマルチメディア・プロジェクトであること。まず本は、イギリスの誉れ高きペンギン・ブックスから発売中。300ページ超(!)のハードカヴァーで、グリフ自身がツアーの調査結果を記している。こちらも本国イギリスで公開中の映画は、真実と虚構(妄想?)がぶつかりあうツアー・ドキュメンタリーだとか。トレイラーを見る限り、C級テイストの手作り感覚も意図的に交えているようだ。さらには、携帯アプリも制作。こちらはテキストに動画、アニメを交えたキャッチーなゲーム(サウンドノベル?)っぽい作りで、日本でもApp Storeから500円で購入できるので、気になる方はレッツ・プレイ!

100 Unread Messages

もちろん、アルバムの内容は今回も一級品だ。疾走感たっぷりのロカビリー調“100 Unread Messages”のように古き良きアメリカを意識したテイストに、打ち込み多用のネジがいかれたモンド・ナンバー、かつての名曲“Run!Christian Run!”にも通じる哀愁バラードまで、違和感だらけのままズラリと並ぶ。ある種の感傷を引き出すためには、たくさんのクエスチョンマークがときに必要であることをグリフは心得ている。ピッチフォークも「これをSFAの新作として発表しても、誰も文句は言わないだろう」と評しているが、何を題材に取り上げようとサプライズを必ず欠かさない、真のポップ職人ここにあり。

(text by Toshiya Oguma)

Release Information

[amazonjs asin=”B00IWYMRXE” locale=”JP” title=”アメリカン・インテリア(初回限定盤)”]