また、今回の撮影で一番の発見は、ベルギー出身のアンダーグランドHardcore DJ[KRTM]であった。アナログモジュラーセンセとPC、パッドを操作しながら、匠という言葉が相応しいパフォーマンスを披露し、音作りに並々ならぬ拘りを感じさせてくれた。[KRTM]は、今後大きな飛躍をするアーティストになるとそのときに感じた。
いよいよ、イベントも終盤。トリは「THE HAVOC」のオーガナイザーでもあるAKIRA、そしてTHUNDERDOMEの発祥の時から現在に至るまで一線で活躍するDROKZの共演アクトであった。金色のライトに照らされて交互にDJを行う二人。曲と曲を繋ぐ合間にアイコンタクトで音を重ねていく。音は激しいにも関わらず、静寂という言葉が相応しい不思議な感覚に陥った。
一方、<Dominator>のメインブースでは、迫力あるライトニングや、ファイヤーショーが行われ、多くのHardcoreヘッズが踊っていた。そして、二人のステージは、最高潮の盛り上がりを見せた。22時30分頃には、メインステージから沢山の花火の音が聞こえてきた。その時にこの日一番のハプニングが起きた。
二人のDJが笑顔でオーディエンスに向かって指をさしているのである。何かと思い、そちらを見ると、肩車をされた観客女性が「FUCK THE FIRE WORKS」と書いてあるピンクの旗を掲げているのだ。私はこの瞬間を逃したく無い一心で無我夢中にシャッターを切り続けた。
今年も激しい爆音の中、<Dominator 2016>が終了した。また、去年と比べて友達も増え、Hardcoreを通じて、いろいろなDJと話す機会があった。Hardcoreの本質は非常に「エデュケーティブ(教育的)」だと皆が口を揃えて語ってくれる。激しい音の中に“人の本質、学ぶ心、反骨心、勇気”が込められていると私は感じている。Hardcoreのイベント、フェスティバルを撮り終えた後は、素晴らしい一冊の本を読み終えた様な、なんとも言えない達成感を感じる。
日本でも素晴らしいHardcoreのイベントが開催されている。オランダでなくとも日本で最高峰の音楽を体験出来るので是非、その事にも触れさせて頂きたい。
AKIRAと交流が深いKousei Murakiが率いる「Superbad MIDI Breaks」は9月18日に〈Industrial Strength Records〉から、Rob Gee、Tymon、Dither、Mr. Madnessを招集し、<TOTAL DESTRUCTION Vol.15>を東京で開催し、福島ツアーも行った。〈Industrial Strength Records〉は、国籍も異なり各メンバーが一線で活躍するDJであり、このアーティスト達をステージの目と鼻の先で見る機会はオランダでは、まず無い。「Superbad MIDI Breaks」は日本を基盤としながらチームとしてインターナショナルな方向性を持ち、メインのゲストと共にアンダーグラウンドで活動する海外のアーティストをフィーチャーしている。オランダで「Superbad MIDI Breaks」の話題を聞くたびに、沢山の刺激を私は貰っている。
2016年11月20日(日)に渋谷CIRCUS Tokyoで<HARDGATE04>が開催される。<HARDGATE>は毎回、ヨーロッパのヘッドライナー・クラスが出演をしている。11月に開催される<HARDGATE04>も期待を裏切らない素晴らしいラインナップを招集している。アメリカ・ネバダ州の砂漠で行われた<Burning Man 2016>に初のHardcoreアーティストとして出演した、「Noize Suppressor」、またオランダ、イタリアのみならず野外フェスティバル、各イベントで毎回素晴らしいアクトを披露してくれる、ドクロの仮面をかぶった「F.Noise」、大人気ユニット「Fant4stik」の一員として世界中のビッグフェスを行脚する「Mat Weasel」がゲストとして登場する。
また<HARDGATE>の日本人DJにも注目してほしい。クロアチアのビーチフェス<HARD ISLAND 2016>に出演をした「Myosuke」を筆頭に非常にレベルの高い日本人DJ陣が参加している。<HARDGATE 02>に参加して感じたのは、イベント全体のクオリティが非常に高いということ。ブッキングが素晴らしい事は言うまでも無く、メイン、セカンドフロアの来場者の雰囲気や盛り上がり、VJの映像駆使した演出、スタッフの対応は丁寧である。また<Dominator2016>で共に過ごした、「Atneck & Offend」、良質な楽曲制作を作り続けている「Engage Blue」は個人的にお勧めのアーティストである。<HARDGATE>のチケットは毎回、ソールドアウト必死である。入場制限がかかる可能性もあるので、早めのチケット購入をお勧めしたい。
また、Hardcoreの音楽は様々な進化を遂げている。それは「Hardstyle」、「HardEDM」と言われている。徐々に時代に合わせた形で日本へ上陸していく可能性が高いと考えている。なぜならHardcoreとEDMは非常に親和性が高い音楽である。EDMのTOPDJ、HARDWELLも元々はHardcoreのDJであった。入り口としてHardstyle、HardEDMとして、多くの人にこの音楽の魅力を知って貰い、Hardcoreが元来持っているコアな側面にも興味を持つ人が増えてくれたら嬉しい。また昔からHardcoreを愛する人が培ってきたということは忘れてはいけないと思っている。
私がオランダでの3年間の取材で気がついたことはHardcoreはオランダ人の反骨心が宿った音楽であるということである。その精神がオランダからヨーロッパ中へ飛び火して、今は世界中へと広がりをみせている。私はこのHardcoreに魅せられている理由は、まさに反骨精神である。その心意気がこのHardcoreには沢山込められていると感じている。パンクスやバンドのHardcore、Hip Hopのレベルミュージックが好きな人には特にお勧めである。
最後に読者の皆様、本記事に名前を挙げさせて頂いたチーム、アーティストに心から大きな感謝と共に、記事や写真から一つでも皆様に発見や喜びが見つかれば、私としては嬉しい限りである。
photo by Atsushi Harada