サブスクリプション・サービスは、唯一レーベルとアーティストにお金が払われるようになる方法だと思う
——最近はSpotify、TIDAL、Apple Musicといった定額制のサブスクリプション・サービスが主流となりつつあります。レーベル・オーナーとして、この状況をどのように感じていますか?
良いことだと思っているよ。人々に音楽について学び直してもらう必要があると思うんだ、明らかに人々は僕らの世代がレコードを買っていたのと同じようにレコードを買いたがらなくなっていて、そこにドイツの科学者がMP3を開発して、古い世代にとっては好むと好まざるとに関わらず変化せざるを得なくなった。そこでどうにかして、何らかのカタチでみんなにまたお金が払われるようにならなきゃいけないし、それが良いことか悪いことかは別として、今のところ(サブスクリプション・サービスが)唯一お金が払われるようになる方法だと思う。僕自身はヴァイナルが好きだし、モノとして音楽を手に入れることが好きだから、サブスクリプションはつまらないと感じるけれど、それがこの業界を救う手だてであることは否定できないよ。退屈な中年男になりたくはないけれど、僕はレコード・ショップの目的や存在意義を今でも信じているんだ。ただレコードを買いに行くだけの場所ではなくて、ショップに行く前には知らなかったレコードに出会ったり、人に出会ったり、ショップ全体の環境や壁に貼ってあるポスターだったり、そういうものはデジタルでは再現できないよ。
——たしかに。
面白いものは今も生まれていて発展しているし、中には僕が好きなものもあるけれど——たとえばアーティストのキュレーションによるプレイリストとかね。たとえばセイント・ヴィンセントのファンならアップル・ミュージックにアクセスして彼女の作ったプレイリストを聴くことができて、最初のトラックが自分の知らないアーティストで、それが気に入ったからそのトラックをクリックして買って……っていうことが可能になっている。ファンがあるアーティストを気に入って、「そのアーティストが紹介しているから」っていう理由で別のアーティストを見つけてさらにそれを購入することで、「アーティストが別のアーティストのプロモーション」をするようになっているっているのは、素晴らしいことだし興味深いと思う。自分の好きなアーティストが何を好きなのか? っていうのはいつだって興味深いことだしね。だから、デジタルの世界にも良い面はあるけれど、純粋にビジネス上の観点から話せば、アップル・ミュージックは良いものになることを心から願うよ。いまだに業界はメジャー・レーベルが支配しているし、彼らには数十年にわたるカタログがあるから、まだまだ資金力も豊富だ。それでインディーのミュージシャンたちを圧迫したり、金を出し渋るようならクソ食らえと思うけれど、長期的に見ればみんなにとって利益のあることだと思う。
——では、サブスクリプション・サービスには、アーティストにとってどんなメリット/デメリットがあると考えていますか?
レーベルにとってのメリット/デメリットと同じだよ。みんなが公平な取引ができるようにしないといけないんだ。メジャー・レーベルはいじめっ子みたいなものだからさ。彼らはアップルなんかと交渉に交渉を重ねて、インディーはまったく蚊帳の外なんだ。僕らはアーティストたちのために闘わなきゃならないし、アーティストたちは自分たちのために立ち上がらなきゃならない。タフな闘いだけど、でも僕らはインディペンデント・レーベルであり、インディペンデント・ミュージシャンだから、闘いには慣れているのさ。とはいえ、サブスクリプション・サービスが存在しなければ、みんなお金を一銭も払わずにダウンロードするだけなんだから、必要ではあるんだよ。今の世代のミュージシャンたちは、次の世代のために辛抱しないといけないかもしれないけれど、いつかは状況が変わると思うし、5〜6年のうちにはもっと安定した状況になって、今Spotifyが払っているよりもマシな収入が入るようになると願いたいね。
——いっぽうで、熱心な音楽ファンの間ではヴァイナルやカセットテープのようなアナログ・フォーマットの人気が再燃しています。今後、CDが消滅してサブスクリプション/アナログに二極化されていくと思いますか?
そう思うね。そして、それは良いことだと思うよ。もちろんデジタル音楽は制作のコストを下げていて、製品のために投資する必要を無くしている。それに対してヴァイナルは残念ながらコストがバカ高くついて、工場も減ってしまっているけれど、美しくて素晴らしいモノを手に入れることができるし、僕らのレーベルのアーティストを好きな人たちはヴァイナルを好きな人たちであるっていうのは、とても良いことだと思う。そのおかげで僕らは少しばかりの利益をあげることができている。生産業者がこれ以上コストを上げさえしなければ、続けることができると思うよ。CDなんかは地獄にでも行けばいいさ。もうたいした存在理由なんてないんじゃないかな(笑)。
——実は、日本では今なおタワーレコードの実店舗が存在し、CDが売れ続けていることをご存知ですか?
知ってるよ。今でもCDが一杯並んでいるんだろ? 最高だね(笑)。
——実際の店舗に行ったことはありますか?
行ったことはあるけど、もう随分前の話だね。最後に行ったのは95年ころにプライマル・スクリームと行った時だな。日本には90年代前半に3回くらい行ったよ。
——2012年にモリッシーが来日した際、「どんな寺院や建造物よりも渋谷のタワーレコードに感動した」と語っていました。
ハハハハ! 彼は面白い奴だね。
——最後に、〈ヘヴンリー〉として今後成し遂げたいこと、もしくは現在のジェフさんにとっての“夢”を聞かせてもらえませんか?
「ハッピーでい続けること」…かな。25周年を迎えてみて、昔思っていたよりも素晴らしい経験ができている。人々からたくさんのお祝いを受けたり、僕らの中にある特別なものに気がついたりすることができてね。だから(レーベルを)続けられる限り続けていきたいね。たとえ僕が今の立場を退くことになっても——僕が一緒に仕事をしている若い人たちは本当に素晴らしいし、僕の18歳の息子も学校を卒業して働き始めたんだ。それで最近になって、「もしかしてこれは僕がいなくなってからも続いていくのかな?」って考え始めるようになった。少なくとも、今〈ヘヴンリー〉は安心して任せられる人たちに支えられていると思う。だからまだレコードを出し続けたいね。僕らには素晴らしいバンドたちがいるし、彼らにふさわしい成功をモノにしなきゃならないと信じているよ。うん、それが夢だね。
今知っておくべき最新〈ヘヴンリー〉情報!
今後注目すべき〈ヘヴンリー〉アーティストは?
キッド・ウェーヴとともに、今後注目すべき〈ヘヴンリー〉のアーティストは、ロサンゼルス出身の4 人組サイケポップ・バンド=フィーヴァー・ザ・ゴースト! その表現しがたいオリジナリティあふれるサウンドとルックスが話題の彼らはフレーミング・リップスのウェインも大絶賛。要注目です!
フィーヴァー・ザ・ゴースト
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質問作成・文: Kohei UENO
インタビュー協力:〈Hostess Entertainment Unlimited〉