2013.02.03(SUN)DAY 2 @ Zepp DiverCity
4度目の開催となる今回の<Hostess Club Weekender(以下:HCW)>は、いくら洋楽不況と叫ばれようとも、届くべきリスナーにはきちんと海外のインディー・ミュージックが届いてるんだなーと実感させられる2DAYSだった。二日通し券が早々と完売するなど両日ともに超満員だった今回の<HCW>は、ダイナソーJr.にサーストン・ムーア(ソニック・ユース)という、USオルタナ二大巨頭をヘッドライナーに冠した昨年11月の第3回目よりも間違いなくオーディエンスの数が多かったし、客層も若かった。というか、<HCW>史上最大の動員数だったんじゃなかろうか? でも、それってすごく健全なことだとも思う。
今回は土曜日のヘッドラインをヴァンパイア・ウィークエンドが務め、日曜日はその盟友でもあるダーティー・プロジェクターズが見事なパフォーマンスでイベントを締めくくった。いずれも2000年代以降を象徴する素晴らしいバンドであり、彼らの現在進行形をまるっと目撃・体感・共有できるという意味で、<HCW>は単なるショウケース・イベントとは一線を画している。もちろん、フィドラーやアンノウン・モータル・オーケストラ、ヴィレジャーズといった初来日組や、バンド・オブ・ホーセズにラ・ラ・ライオットといったベテラン勢もフロアをしっかりと沸かせていた。ではさっそく、後半戦=2日目の模様をプレイバックしたい。
Report:Hostess Club Weekender DAY 2
トップバッターを務めたのは、元ザ・イミディエイトのメンバーであったコナー・J・オブライアンをフロントに据えたUKの5人組ヴィレジャーズ。MCで「ゲンキデスカ!?」と繰り返すコナー君は想像以上に小柄&キュートだったけど、ハイ・ポジションのアコギから繰り出されるメロディーと、ジェフ・バックリィもかくやのシアトリカルな美声、そこに「全員バンマスか!」ってくらい自己主張の強い各パートの音像が絡み合うアンサンブルはとてつもなくスリリングだ。とりわけノイズぶちまけまくりのギタリストとキーボーディストの拮抗が凄まじく、お互い主役を喰わんばかりの勢い。かと思えば5曲目の“My Lighthouse”ではそれぞれ楽器を投げ出してコーラス隊に徹してみたり、個人的にはブライト・アイズに近いワンマン・プロジェクト(名前もコナーだし)だと思っていただけに、これは大きな収穫だった。デビュー作はマーキュリー・プライズにもノミネートされた彼らだが、2ndアルバム『アウェイランド』(国内盤は3月6日(水)リリース)でさらなる成功をモノにするだろう。遅刻した人は後悔してください。
続いて2011年の<フジロック・フェスティバル>以来、4度目の来日となったラ・ラ・ライオットのお出ましだ。NY仲間のヴァンパイア・ウィークエンドやダーティー・プロジェクターズらと一緒ということで、リラックスしたステージになるかと思いきや過去最高にラウドでアグレッシヴ。ドラマー以外が全員ヨコ一列に並ぶという6人編成で、矢継ぎ早に繰り出される名曲・名曲・名曲…のオンパレードもさることながら、ひたすら高音ヴォーカルで駆け抜けるフロントマン=ウェス・マイルスのテンションには見てるこちらも心配になるほど。「キミたちはマジでベスト・オーディエンスだよ!!」と叫んでいたので、日本でパフォーマンスできることが嬉しくてしょうがないんでしょうね(笑)。絶好のタイミングでリリースされた最新3rdアルバム『ベータ・ラヴ』からのナンバーもばっちりハンド・クラップを巻き起こしていたし、脱退したアレクサンドラの代役を務めたチェリストもナイス・アシスト。終わってみればなんとワンマン並みの全16曲(!)もプレイしていたようで、バンドもオーディエンスも完全燃焼の笑顔を浮かべていたのが印象的だった。
3組目は「6人目のレディオヘッド」とさえ呼ばれる敏腕プロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチによる新プロジェクトのウルトライスタ。来日直前になってドラマーのジョーイ・ワロンカーが家庭の事情(奥さんの出産が予定日よりかなり早まったらしい)で不参加というニュースが駆け巡ったものの、ある意味でレアなライヴ・セットが拝めたと言えるかもしれない。ステージ上のナイジェルはベースを肩にかけながらプログラミングにキーボードにと奔走し、紅一点のローラ・ベッティンソンは孔雀のごとくカラフルな花飾りを頭に乗せて、シャーマニックな歌唱とダンスで魅了する。そしてIMAXばりに巨大なバックのスクリーンには“Bad Insect”や“Our Song”といった演目のミュージック・ビデオやカラーバーなどが投影されるのだが、これがまた独特の浮遊感を演出していて非常にトランシー。個人的にはUKのトリップホップにも通じる世界観で楽しめたが、良くも悪くも美術館のインスタレーションを見ているかのような高偏差値っぷりがライヴへの没入度を下げている気もしなくもないので、やはりジョーイの生ドラム=肉体性の不在は大きいのかもしれない。ナイジェル&ジョーイが参加するもうひとつのプロジェクト、アトムス・フォー・ピースと併せて今後の動向を見守っていきたいと思う。
常夏気分をグッと引き寄せてくれたのは、こちらも2011年の<フジロック・フェスティバル>ぶりに来日となったカリフォルニアの男女デュオ、ベスト・コースト。ヴォーカル&ギターのベサニー・コセンティーノ本人も「東京でプレイするのは初めてよ!」と告げていたが(フジ前にモーニング・ベンダーズとのジョイント・ライヴが予定されていたが、3.11の影響でキャンセルに)、シーサイドの「Zepp DiverCity」というロケーションにはぴったりのアクトだったと言えるだろう。世界ツアーを経て自信に溢れているのか、それともリズム隊をサポート・メンバーに任せることでボブ・ブルーノの負担が減ったおかげか、問答無用でグッド・メロディだらけだったベスト・コーストの楽曲が「ローファイ云々」を脱皮し、より強靭なグルーヴとアンサンブルで迫ってくる様は感動的ですらある。当然、名匠ジョン・ブライオンをプロデューサーに招いた2nd『ジ・オンリー・プレイス』からもまんべんなく披露してくれたわけだが、原曲のハッピー・サッドなムードはここにはなく、まるでハード・ロックのように化けまくり。「アハハ! 静かね~」とオーディエンスを笑い飛ばしたベサニーちゃんの姐御肌は、なんだかジョーン・ジェットを思わせたりもしました……。
次はいよいよ大トリのダーティー・プロジェクターズのレポート!!
各アーティストのセットリストも公開!!
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