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I Saw You Yesterdayのことを知ったのは、彼らが昨年の5月に初のフィジカル作『DOVE』をリリースした時だった。日本離れしたサウンドは〈Captured Tracks〉に所属するバンド、例えば4月に来日をしていたビーチ・フォッシルズなどと並べられ、この1年で多くのインディーファンの心を掴んできたと思う。

3月に行われた新イベント<ZONE>に出演の際も、ライブ前、またライブ中でも“I Saw You Yesteredayコール”が止まらず、その人気の高さを実感した。さらに今年の4月にリリースした新作『Topia EP』は音楽業界でも話題を呼び、その名前を聞くことが増えた。

I Saw You Yesterday “Topia” (Official Music Video)

果たして、こんなにもインディーファンの心を掴んだ理由は一体なんだろうか。

ライブや音源では知ることができない彼らの真髄を探るべく、“I Saw You Yesterdayというバンドについて”メンバーに話しを訊いた。

I Saw You Yesterdayが時代に溶け込む理由|注目のインディー・ポップバンドに初インタビュー interview_isyy_2-1200x800

Interview:I Saw You Yesterday

——昨年の『DOVE』リリースから、I Saw You Yesterdayの名前を色々なところで聞くようになったのですが、リリースしてから周囲の反応や、自分たちの意識に何か変化はありますか?

下田 英雅(Gt/Vo) そうですね、一つ大きいと感じているのは、リスナーが意外と日本よりも海外の方が多いということです。たとえば、SpotifyやYouTubeが普及をしているおかげで、日本でバンド活動をしていても、海外のリスナーまで届くことが増えていて。だからこそ、最近は日本らしさ(=キャッチー)というのを随所に出していきたいと考えています。完全に洋楽をやろうっていう意識がなくなったことは、前作リリースからの意識の変化ですかね。

——海外のリスナーが多いのは意外です。どこの国が多いですか?

下田 アジア圏の人が多いと思うんですけど、南米とかも多いですね。ペルーとか。

村上 魁(Gt/Cho) Facebookとかはけっこう垣根が低いから、いろんなところで、意外とね。

鈴木 一繁(Ba) Facebookである南米の人が『インディーワールドカップ』っていう、インディー・ポップバンドを集めたワールドカップもどきの遊びをしてて、出場するバンドを各国ひとバンドずつ出していくんですけど、「日本:I Saw You Yesterday」って書かれてたよね。

——それはすごいですね。

鈴木 「ワールドカップ出れちゃった!」みたいな(笑)。

下田 YouTubeのコメントを見ても、やっぱりコメントをしてるのは圧倒的に海外の人が多くて。更に言えば、自分が寝てる間に再生回数が伸びてるから「これは時差あるな……。」って、何となく分かったり。日本にいながら世界の人が聴いてくれているからこそ、日本らしさっていうのはすごく意識するようになりました。

——海外バンドのような雰囲気があるからこそ〈Captured Tracks〉に所属するバンドと比喩されることや、並べられることも多いと思うのですが、ロールモデルにしているバンドっていますか?

一同 いないなぁ。

下田 いないよね。ただ根底にいるのはスマッシング・パンプキンズ(以下、スマパン)ですね。サウンド含めた表層的なところは全然違うけれども、メロディーの綺麗さや印象的なフレーズなどの楽曲の根底的な部分は強く意識していて。そういうところから、「良い音楽ってこういうものだよな」って思ったりして。そういう意味で言ったら根底にあるのはダイナソーJr.だったりとか、ペイヴメントですね。ヨ・ラ・テンゴや、ライドも好きだし。

The Smashing Pumpkins – 1979

村上 でもある意味いまの若者にとって90’sのバンドって、90’sの頃の人たちにとってのビートルズみたいになっているのかも。当時、オアシスやニルヴァーナのカート・コバーンとかが、「ビートルズを好き」って言うのと同じ状態になってきていて。でも必ずしも彼らがビートルズみたいなサウンドか、って言ったらそうではないし。多分僕らもそれに近いものがあるんじゃないかな。

下田 めちゃくちゃ咀嚼してるんだよね。

村上 あれから20年、30年経っている時代としては確かに根底にはそれがあるけど、また時代は変わってるよね。

下田 僕たちUSインディって言われることがすごく多いんですけど、本当のことを言うと〈Captured Tracks〉って言われて初めて知ったぐらいなんですよ。“Girlfriend”とかを制作していた時に「〈Captured Tracks〉って何?」って。

鈴木 「マック・デマルコってだれ?」「ビーチ・フォッシルズ?」「これでDIIV(=ダイブ)って読むの?」みたいな(笑)。

下田 それでダイブっていいぞって(笑)。

村上 でもそれってある種すごいなって、同時代性っていうか、勝手に共鳴していたということだよね。

下田 ダイブとかビーチ・フォッシルズを聴いて、「俺たちと同じ音楽やっているやついるんだ」って思いました。ただよく考えてみると当たり前で、ダイブって多分、ニルヴァーナを自分なりに咀嚼して、今のムードに合わせてやっているんだと思っていて。そいう意味で言えば、僕たちはスマパンだったり、ペイヴメントだったり、同じルーツを持ちながら、今のムードに合わせて音楽を作っているので、それは似たようなものになるよね、と。

村上 サウンドムードを察知するのが速かったね。

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——なるほど。

下田 根底に僕はすごく悔しさみたいのがあって。大学の間、ずっとバンドをやっていたんですけど、誰にも評価されなかったんですよ。音楽って人に初めて評価されて成立するものなので、次は絶対に評価されるものを作りたいと思っていました。いまのバンドは正直、楽曲の根幹の部分はこれまでと変わってないつもりなんですけど、ある意味すごく割り切れたのが、音楽って時代によって移り変わる、ファッションみたいなものだよね、ということです。だから、いつまでも僕が好きな90’sのスピリットを引きずって、そのサウンドであり続けても、今のムードにはフィットしなくて。だったら、サウンドを柔軟に変えて、その時代の時々に合うようなものを作り続けていって、それでまぁ評価されたらいいなと思ったのがI Saw You Yesterdayです

——そういったことも含めて、今回のEPに入っている“City Girl”と“Topia”はどういう風な意識で制作をしましたか? キャッチーさを出していきたい、ということも話していましたね。

下田 『Dove』に比べるとかなりポップになっています。『Dove』の時は分かりやす過ぎるメロディーを作ることにすごく抵抗があって、毎回メロディーに悩んでました。その中でもみんな一番いいと思った楽曲は”Lisbon”なんですよね。それで”Lisbon”のMVを作ったんですけど、YouTubeでの再生回数がいまいち伸びなくて、伸び続けていたのは”Girlfriend”だったんです。その時にキャッチーなものが求められていると感じて、だから、そのキャッチーさというのを意識しながら楽曲を作りました。

I Saw You Yesterday – “Girlfriend”

『Dove』では低いボーカルの帯域しか使ってなかったのを、今回はけっこう高い帯域を使ってボーカルが立つようにしたり、実際のプロダクションではボーカル含めて、ちょっとリバーブを弱めてます。なので、前作と比べてドライでキャッチーな雰囲気にはなってるのかなと思いますね。

——音作りでそれぞれがこだわった部分は?

村上 『DOVE』の頃は綺麗な景色を眺めている感覚で作っていた部分があるんですけど、今回はもうちょっとズームインしたような、立体感があるものを出していきたいなと考えていて。前作に通ずるキラキラ感は残しつつもエグ味を出していけば、単純に美しいものに対して、綺麗なだけじゃなくて、ちょっとした影ができて、立体感を帯びてくるんじゃないかと思ったので、今回のギターはそういうことを意識して作っています。

——鈴木さんはいかがですか?

鈴木 こだわっている部分というか、腹にくる低音は出さないっていうことを意識してます。僕のベースに対する考え方や聴こえ方、立ち位置は周りの人と若干違っていて。僕の中で楽曲をどれだけ邪魔しないかっていうのがテーマですね。

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——ドラムの内城さんは昨年の11月から加入ですね。

内城 悠(Dr) 僕は『Topia EP』には参加をしてないんですけど、このバンドに入ってから意識しているのは鈴木と一緒で。楽曲の邪魔をしないということを前提として、ベースとドラムでノリを出していくことを考えています。ベースとドラムが合ってたら、体は自然と乗ってくるものだから。そこを合わせつつ、音とかではあまり存在感を出さないようにしています。

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——内城さんが加入してから、バンドでの変化はありましたか?

鈴木 今まで2年ぐらい同じメンバーで活動をしていたんですけど、メンバーが入れ替わって、第三者の視点を持った人が入ったことで、すごく大きく変わったと思ってます。彼は言ったことを体現できるので、色々なやり方を試すことができますね。

村上 『Dove』をリリースした後は腹の探り合いのような部分があって、でもかと言って抑制してるかっていうと各々好き勝手にやっている部分も強すぎたので、それがちょっとしたカオスになりつつありました。ただ彼が入ってまとまりがよくなった部分があるというか、激しい瞬間の為に我慢する、抑制する気持ち良さを覚えてきたのかなと思います。

下田 腹の探り合いになってしまったのは、こういうジャンルをどうやってやったらいいんだろうねっていうところがあったんです。みんなこういうジャンルをやるのが初めてだったんですよ。でも今になってわかったのは、このバンドの主役がかい(村上)くんということなんです。かいくんのギターをどうやって前に出していくかっていうことを考えていて、すごくテクニカルな話をすれば、最近は自分のギターのミドルを削ってるんですよ。ミドルって一番人の耳に聞こえてくるものなので、そこはかいくんが出す帯域だと思っています。そうやってある程度、各々の立ち位置がわかってきて、メンバーの中で主役がかいくんという共通意識があるから、控えめなベースを弾くとか、ドラムも悪目立ちしないとか、それは僕も一緒で。

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鈴木 僕はかいくんも主役だと思うけど、やっぱり下田の歌もかなり主役級だと思っています。かいくんのギターと下田の歌が主役。だから、かいくんを主役って言っているけど、実はかいくんが弾いていないところも多いです。

下田 でも弾いてないところが多いからこそ、弾いた時にガッとくるよね。「来た来た来た!」みたいな。

村上 歌とギターが主役かな、このバンドは。

下田 僕も歌っていない時間って、他のバンドに比べて長いんですよね。例えば3分半の曲があったら歌ってるのは1分半ぐらいなんじゃないかな。ギターもボーカルも同じ割合で作ってます。“Lisbon”とかがそうで、ギターもサビのようなイメージですね。ギターとボーカルが交互にくることで、ダブル主役としてやり過ぎないというか。

村上 ギターとヴォーカルが一辺にきても、何を聴いたらいいか分からなしね。

I Saw You Yesterday – “Lisbon”

下田 初めに海外のリスナーが多いという話をしましたが、彼らって非英語圏であることが非常に多いんです。そうすると英語が母国語ではないから、あんまり歌詞の意味が聴いているだけでは伝わらないんですよ。そこで何を重視すべきかを考えると、英詞独特のリズムの気持ち良さだと思っていて。なので、気持ちよく聴こえて、響きからかっこよさを感じてもらう為に、韻を踏むことを一番大事にしています。語尾でだいたい韻を踏んでいるんですけど、韻を踏むことで末尾にくる単語が制限されてしまうので、正直、歌詞は意味を重視しづらいっていうのはありますね。ただ何も考えていない訳ではなくて。一つとしては、あえて抽象的な言い方をしてあらゆるシュチュエーションが想像できるようにして、リスナー自身の体験と重ねて楽しんでくれたらいいなと思ってます。

村上 歌も楽器の一つとして捉えているから、韻を踏むっていうのはサウンド部分と近い、ギターと近いものがあるのかな。

“Lisbon”

I’m always here ‘cuz I just wanna know
I’m always aware that I just need to go
いつだって知りたいからここにいる
でも行かなきゃいけないってことにも気付いてる

Stay in my own
‘Till the sun comes up and lights my days
太陽が出て僕の日々を照らすまで閉じこもっていよう

Here comes the dawn
I will leave my heart and escape
ほら夜明けが来た、
心を置きざりにして逃避行をする

It is too late
You are not the girl I used to know
who feel the pain
もう遅い、
僕の知ってる痛みを感じる君じゃなくなってた

——バンド内の共通認識がしっかりと出来上がっているんですね。改めてI Saw You Yesterdayとして活動する上で、軸にしているものは?

下田 そういった意味でいうと、聴き心地がいいものを作りたいと思ってます。僕たちは変わったコードは使わずに、シンプルに3つ、4つのコードで楽曲を構成しているんですよね。やっぱり変わったコードだったり変わった響きを入れると、すごくイレギュラー感が出てしまって……。もちろん、時にはイレギュラー感を与えてリスナーの期待を裏切ってあげることも大事なんですけれども。これは僕の持論なんですけど、100回あったら99回はリスナーの期待に応えてあげた方が音楽として心地いい。だからコード進行をすごくシンプルにしているのは、そっちの方が耳なじみもいいし、シンプルなコードのループにすることでリスナーが「え、このあとこんな音がくるの?」ってならないので。だから、そういう心地良さみたいなのをすごく重視してます。

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——確かに心地よさというか、メロディーがスッと耳に入ってきますよね。

下田 あと底抜けに明るくしない、どこか憂いがあるようなメロディーにすることによって、過度なメジャーコード感を消して、どんなテンションでも聴ける、24時間いつだって聴ける音楽というのを意識しています。

村上 1つの感情じゃないっていうのが音楽の良さだからね。

下田 最初の話にも繋がるんですけど、歌詞に関してもあえて具体的なことは書かずに、リスナーの想像に任せるっていうのはそこがあって。あまりにも具体的なことを言うと、聴く側のシュチュエーションを狭めることになる。例えば失恋がテーマの曲だったら失恋をしている時に聴きたいじゃないですか。だけどそうじゃないって言うのはやっぱりリスナーに委ねるというか。

村上 でも無難ということや、何となく環境音楽を作っているということではなくて。リスナーが持ってる心を刺激して、自分の中で想像してもらう。新しい体験をしてもらえたらと思います。

下田 個人的にはiPhoneの純正イヤホンで聴くことを推奨したいですね。耳栓型のイヤホンで家で集中して聴くんじゃなくて、どちらかと言うと環境音を聴きながら、AR的に音楽を楽しむというか。リスナーの日常に合わせて溶け込むってすごく大事だなと思っているので。

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——確かに限られたシーンがあまり想像できないですよね。残像みたいな、溶け込むって言われて納得しました。だから、色んな人の心に刺さるのかもしれないですね。また海外のリスナーが多いということですが、今後どこに向けて音楽を発信していく予定ですか? やっぱり海外?

下田 最近すごく意識しているのはアジア周辺ですね。もちろん日本のバンドだし、日本をベースとしてやっていくことは変わらないんですけど、アジア諸国を意識しながらやっています。またもう1つ言うなら、音楽を長く続けたいなと思っているんですよね。自分たちのことをすごく好きになってくれる人がいて、で、そういう人たちに囲まれながら、見守られながら、自分たちのペースでやっていけたらと思ってます。

——5月26日(土)にはリリースパーティーもあり、これからツアーも始まりますね。I Saw You Yesterdayの新たな姿が見れそうです。

下田 これは自信を持って言えるんですけど、めちゃくちゃパワーアップしています。去年のリリースパーティーを見てくれたりとか、1年前のI Saw You Yesterdayを見てくれている人たちからすると、もう全然別ものだと思えるぐらいに進化をしていて。同じ曲をやっていても、全然違う風に見えると思いますね。あとは1年ぶりぐらいに大阪に行くので、そういう成長した姿を見せられたらいいなと思います。

村上 今しか見れないよね。これからまた変わって行くし。

鈴木 内城が入ってほやほやだしね。

下田 内城の初期衝動が見れるよね。そういうのに期待しながら、ライブを見てもらいたいです。

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RELEASE INFORMATION

Topia EP

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EVENT INFORMATION

<“Topia EP” Release Party by I Saw You Yesterday>

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2018.5.26(土)
open 15:00 close 22:00
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ACT
I Saw You Yesterday
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DJ
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DJ’s
村田タケル
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FOOD
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Photo by Kodai Kobayashi

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まおまお

ライター

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