ジェイミー・カラムというアーティストの数ある作品の中で、最も印象深かったものは何かと聞かれたとしたら…? 僕ならやはり、2003年の『トゥウェンティサムシング』収録“Frontin’”を真っ先に思い出す。元々はファレル・ウィリアムスによる名曲であるが、ジェイミーの魅力を十二分にプラスした、素晴らしいアレンジだったことを今でも鮮明に覚えている。他にも、レディオヘッドの“High&Dry” であったり、ジェフ・バックリィやジミ・ヘンドリックスの楽曲等、ジャンルを越えた名曲の数々を、彼はカヴァーという形で新しく蘇らせてきた。ジャズをバックグラウンドに持ちながらも、ロックからポップスまで様々な音楽を自由に取り入れていくところも、彼の魅力の1つだろう。
クリント・イーストウッド監督の映画『グラン・トリノ』の主題歌も話題となった前作『ザ・パースート』以来、3年半振りの作品となる最新作『モーメンタム』は、〈アイランド〉への移籍第一弾。中でも、“Love For $ale”でのルーツ・マヌーヴァとのコラボレーションは新たなチャレンジとしてとても興味深いし、彼が「アルバムの心臓の鼓動」とも表現した“Sad,Sad World”や、ジェイムス・ブレイクにインスピレーションを得て作ったという“Pure Imagination”は、ジェイミーの音楽の深みがダイレクトに伝わってくる。
それに対して“Everything You Didn’t Do”や“The Same Thing”で聴かれるサウンドは、とてもポジティブでハッピーな気分にさせてくれる。特に“The Same Thing”に向けて彼が語った感想、「使い古したトランジスタ・オルガンのカオスとファズは、甘くて優しいピアノ・ソロよりも今の僕には合っているんだ!」何よりこの言葉こそが、今作への思いを最も的確に表しているのでは無いだろうか。ジェイミーは2010年にソフィー・ダールと結婚、子供も生まれ父親という存在になった。音楽へ向き合う上でも大きな心境の変化を経験し、さらなる自由を手に入れた天性のピアノ・マン。彼の魅力がぎっしり詰まったこのアルバムを、是非ともじっくりと楽しんでみて欲しい。
text by Yasumasa Okada[DESTINATION MAGAZINE]
Jamie Cullum – Everything You Didn’t Do
Release Information
デラックス盤:2013.6.19 on sale! 通常盤:2013.5.29 on sale! Artist:Jamie Cullum(ジェイミー・カラム) Title:Momentum(モーメンタム) ユニバーサル インターナショナル デラックス盤:UICI-1119/¥3,980(tax incl.) 通常盤:UICI-1118/¥2,300(tax incl.) |