向井秀徳や星野源らと共演したジャズピアニスト・スガダイローの演奏、“鍵盤の魔術師”とも呼ばれる世界的ピアニスト・オマール・ソーサと日本が世界に誇るタップダンサー・熊谷和徳の共演、映画音楽やTV CMソング等も手がける畠山美由紀と日米を拠点に活動するスモーキー・ヴォイス・エミ・マイヤーの“歌姫競演”等、様々なエンターテイメントを提供し、大盛況のうちに幕を閉じた<ジャズ・ワールドビート 2016>。

現代ジャズをメインとしながらも様々な音楽が体感できるイベントが今年も<ジャズ・ワールドビート 2017>として開催。参加者を楽しませる豪華なラインナップは、去年に負けずとも劣らない内容となっています。

まずは、国内のみならず世界各国での演奏活動でジャズ界に大きな影響を与え続けるピアニスト・山下洋輔と、昨年に引き続き登場のスガダイローの共演は見逃せない大きなポイント。多くのピアニストが山下洋輔に憧れ、その背中を追い続けていますがスガダイローもその一人。憧れの“大先輩”とどのような演奏を魅せるのか、特別なステージになることは間違いありません。

「山下洋輔 x スガダイロー/Chiasma」CM動画(7/2発売)

二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandのパフォーマンスも必見。昨年サンリオピューロランドで行われた音楽イベント<KIDS DAY>のために結成されたユニットKIDS DAY BANDでスチャダラパーのBoseや、小山田圭吾らとタワーレコード限定でシングルをリリースするなど、幅広い活動を続ける二階堂和美。

二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band / 『いてもたってもいられないわ』

そんな彼女と、17人のオーケストラ&3人組女性ヴォーカルから成る総勢 21人のビッグバンド・Gentle Forest Jazz Bandがコラボレーション。昨年この特別な編成で<アラバキ・ロック・フェスティバル>や<サマーソニック>等に出演し観客を魅了しました。さらに円熟味を帯びる彼女たちの演奏に期待が高まります。

そしてなんといっても注目はポルトガルが生んだ至宝、アントニオ・ザンブージョ。カエターノ・ヴェローゾからも賞賛されたという彼の音楽がここ日本で体感できる貴重な機会となります。そこで今回、アントニオ・ザンブージョについてあまり知識がない、という方のために彼の来歴や音楽についてご紹介。これを読めばアントニオ・ザンブージョについて、ひいては<ジャズ・ワールドビート 2017>を“より”楽しめる内容となっていますので、ぜひ目を通してイベント当日を迎えましょう!

世界の音楽を堪能!「ジャズ・ワールドビート 2017」大注目のアントニオ・ザンブージョの魅力に迫る music_jazz2017_1-700x495

text by Qetic

ポルトガルとブラジルの音楽的な架け橋のような存在

世界の音楽を堪能!「ジャズ・ワールドビート 2017」大注目のアントニオ・ザンブージョの魅力に迫る music_jazz2017_4-700x467
遠いようでいて近く、近いようでいて遠い——ポルトガルとブラジルは、このような関係にある。言うまでもなく、ポルトガルとブラジルは、距離的には遠い。また、歴史的には、ブラジルは1500年にポルトガルの艦隊によって偶然“発見”され、ブラジル帝国として独立するまでの1823年に至るまでの長い間、ポルトガルの植民地、王国と公国、ポルトガル・ブラジル及びアルガルヴェ連合王国といった関係にあった。つまり歴史的な関係は深く、言語の面でも繋がっている。とはいっても、ポルトガルの公用語イベリア・ポルトガル語と、ブラジル・ポルトガル語は、文法や発音、単語などの点でかなり違いがある。

また、音楽に関しても、ポルトガルを代表する音楽はファドで、一方のブラジルはサンバ。この二つの音楽は、かなりかけ離れたものとして一般的には認識されているのだろう。しかしながら、ファドは、大航海時代にポルトガル人が異文化に触れたことによって生まれた音楽であり、ポルトガルの内部から生まれた民謡ではない。アフリカから奴隷として連れてこられた人々をはじめとする多様な人種と文化が混在しているブラジルとの出会いの中から生まれたポピュラー音楽(文化的混淆音楽)、それがファドだ。より具体的に言うと、ファドは、感傷的な歌謡モディーニャと軽快な踊りの音楽ルンドゥーを起源として、19世紀半ばに形成されたと言われている。 
 
アントニオ・ザンブージョは、こんなポルトガルとブラジルの「遠いようでいて近く、近いようでいて遠い」関係を浮かび上がらせてくれる希有なアーティストであり、両国の音楽的な架け橋のような存在、と言っていいだろう。