ーーリミキサーを選んだ基準や理由はどうですか。
S 繋がりがちゃんとあって、友達の中でも未知のものに期待をかけて、フィジカルで出してない人を基準にして、それでいて気持ちが分かってくれる人を日本からは選びました。海外勢はレーベルメイトですね。みんなあったこと無い人だけど、レーベルメイトだと向こうも知っているから頼みやすいというのもある。僕が直接メールしたんですけど、反応が凄い良くて2つ返事でやりたいやりたいと、なんで今まで繋がらなかったんだろうという感じでした。
Jesse Ruins “Lana(Diane Halls Remix)”
Jesse Ruins “Talk To Alicia(WMX Bestial Mouths Remix)
ーーインストを入れたことは。
S やはりインタールードが好きだからですね。タイトルもそうだけどリミックス EPみたいな感じではなく一つの作品にしたかった。だからタイトルもコンセプトを言葉にしてリミックスだけではなくインタールードを入れて作品性を出したかった。
ーーリミックス集にも作品性を出したかった。その作品性や美意識の源泉は何でしょうか。
S 雰囲気なんですよね、割とざっくりとした。それを感覚的にやっている。だから自分の中でイエス/ノーがあって、感覚的にこれは違うかな、これはありかなっていうのを分けてて、その中で自分なりに納得出来る作品ができあがってきたんで、最初から”こういう感じ”というものは無いんですよね。いろんな自分のバックボーンがあったうえで、今聞いているものとか、そういう雰囲気を集めて、自分の頭の中でもやっとしたものをこれはダメこれは良いってのを分けていってる感じ。
ーーそういった良い悪いという判断基準を形成していったものとして、この人の考え方には影響を受けたという人はいますか。
S 〈BIG LOVE〉の仲真史さんからは多大なる影響を受けました。上京する前から仲さんのブログとかを読んでたりしていました。ちょっとこう視点から反対だったりするところがあるじゃないですか普通と。例えばダメなものが良かったりするとかっていう感覚とかそういうのは凄い影響を受けましたね。なんか直感的に良いっていうものに疑問を感じるというか、ちょっとこれなんだろあれっていうものを考えて聞いてみたりとかそういう音楽の聞き方にはモロに影響を受けました。
ーーJesse Ruinsの始まりについて教えてください。音楽ブログ「Gorilla vs Bear」に『Dream Analysis』がポストされたのが世界で知られるきっかけだと思いますが。
S 当時は、海外の音楽ブログを凄く見ていました。毎日新しいものが上がっていたじゃないですか。その中でも「Gorilla vs Bear」は影響力も大きくて、そこに載ること自体想像していなかったんで、あまり期待せずに連絡したんです。よかったらMP3を送るよみたいな感じで。そうしたら、すぐ返事が来てポストしたいって。
ーー「Gorilla vs Bear」の人が運営しているレコードレーベル〈Forest Family〉からオファーは来なかったんですか。
S すぐに 7インチを出したいと言って来ました。〈Forest Family〉は当時TennisとかCultsとか新しいものを沢山出していて、Keep Shelly In Athensとかも凄い新しいことをやっている感じがあった。その真っ盛りのときに話が来たんで、びっくりしました。自分も買ってたんで凄く嬉しくって、すぐにお願いしますって言ったんだけど、結局なんだかんだで出なかったんですけどね。
Cults “Go Outside”
ーー他のレーベルからはどうでしたか。
S 本当そういうレーベルからのオファーはたくさんあって、全部知ってるレーベルから来るからびっくりしました。〈Forest Family〉からはじまって〈Lefse〉、〈Cascine〉、〈Double Denim〉、〈Secretly Canadian〉・・・あと忘れたけど。〈Captured Tracks〉と契約するときに、〈Terrible〉、〈Last Gang〉と来て、どこにしようかという感じで。
ーーその中から〈Captured Tracks〉と契約しました。
S “Dream Analysis”を CMで使いたいって話が来て、それが契約料が 1万ドルくらいだったんです。UKの〈Double Denim〉から 7インチを出してましたけど、そんなどこの誰かもわからない日本の知らないやつに日本円だと100万円だしてくれる。そういう感覚が本当に凄いなって思いました。でも、その契約をすると、今度は〈Captured Tracks〉との契約が難しくなってしまうこともあって。〈Captured Tracks〉から出すっていう意味ってのはその時は凄くあるなって思ったんで、そのCMの話は断って〈Captured Tracks〉と契約しました。
ーー〈Captured Tracks〉から EPが出て、Jesse Ruinsが思ったように伝わったとか広がったという感覚はありますか。
S 海外での認知とか、広がり方に関してはうまくいっているなと感じます。FacebookでJesse Ruinsのページとかを見るとたくさん「いいね」がついていて、一番比率を占めているのはアメリカなんですよ。次がちょっと間があいて日本、そのまたすぐイギリス、でヨーロッパ、東南アジア、南米という感じ。やっぱりダイレクトにすぐ反応が来るのは海外の方ですね。なんかポストしても、7割くらいが海外の人の反応。その中で見ると海外での広がりっていうのはあるのかなと。
ーーしかし〈Captured Tracks〉からファーストアルバムは出ませんでした。その理由はなんでしょうか。
S オーナーに言われたのは、コミュニケーションに問題があると。でも、それは最初の段階でわかっていたことなんですよ。英語もあんまりできないですよって伝えていたし。自分達以外にも前後に何人か辞めた人がいたんですよ。Cosmetics、Hoop Dreams、The Jameses、Dignan Porch(※13)とか。僕の勝手な想像ですけど、レコードの売り上げが、あんまりよくなかったのかなと。あくまで想像ですよ。
※13. 〈Captured Tracks〉卒業アーティスト一覧はこちら
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