米ワシントンD.C.で起こったハードコアムーブメントとオルタナティヴ・ロックが融合して90年代に生まれた「エモ」バンドの1組として知られ、99年の3作目『Clarity』や01年の4作目『Bleed American』でその代表格となった“エモの絶対王者”ジミー・イート・ワールド(Jimmy Eat World)。彼らの通算10枚目の最新作『Surviving』が11月27日(水)にリリースされる。
今年は1994 年の自主制作デビュー盤『Jimmy Eat World』から25周年を迎えるアニバーサリーイヤー。このタイミングで、日本では「ジミー・ドリンク・ワールド」というオリジナルビールを醸造し、新作発売とバンドの25周年を祝福するためのイベント<ジミー・ドリンク・ワールド! ~JEWデビュー25周年記念&『サヴァイヴィング』リリース・パーティ~>が開催される。
ジミー・イート・ワールドといえば、08年にアサヒスーパードライのCM「人生」篇で『Bleed American』(01年)の収録曲“Sweetness”がCMソングに起用されたことも記憶に新しい。果たして「ジミー・ドリンク・ワールド」は、どんなビールになっているのか……!? レーベルからの打診を受けて今回のビールを醸造し、イベントを開催する日本橋・コレド室町テラス内のブリュワリーレストラン「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE(クラフトロック ブリューパブ アンド ライブ)」に向かった。
「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE」は、「クラフトビアマーケット」が手掛けるクラフトビール醸造所併設のレストラン。自家製ビールと厳選された各国のクラフトビールが約15種類揃い、ボリュームたっぷりのカットステーキを筆頭にしたメニューとともに、醸造所で出来たばかりのフレッシュなビールを楽しむことができる。また、店内には音楽ライブのためのスペースが設けられており、不定期で行なわれる生演奏ライブも楽しむことができる。
まずは「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE」を運営する株式会社ステディワークスの代表・田中徹さんと、醸造長とともにビールの醸造を担当するブルワーの大庭 陸さんに4種類のホップの香りや苦みが存分に楽しめるIPA(インディア・ペールエール)仕立てのオリジナルビール「ジミー・ドリンク・ワールド」に込めた工夫や思いを聞いた。
Interview:
田中 徹(株式会社ステディワークス代表)
大庭 陸(ブルワー)
──まずは、ジミー・イート・ワールドの25周年を記念したオリジナルビール「ジミー・ドリンク・ワールド」の醸造の話が来たときの率直な感想を教えていただけますか?
田中 徹(以下、田中) 僕らはスタッフ一同音楽が大好きですし、自分自身、ジミー・イート・ワールドの音楽がずっと好きでした。実はもともと「自分の店をつくりたい」と思ったきっかけも、「いつも好きな音楽がかかる、楽しいお店をつくりたい」という動機からだったんです。そこで2011年から「クラフトビアマーケット」として各地にお店を展開し、今年の9月に『CRAFTROCK BREWPUB & LIVE』をオープンしました。この店舗は特に音楽との親和性が高く、店内で音楽の生演奏を楽しんでいただくこともできます。今回醸造を担当してくれた醸造長も自分と同様ジミー・イート・ワールドが大好きな人間なので、私たちとレーベルの方とで相談をしながら、バンドの音楽に合うようなビールを考えていきました。
──その際、大切にしたテーマのようなものはあったのでしょうか?
大庭 陸(以下、大庭) 今回、ジミー・イート・ワールドのみなさんから、「デラックスなIPAをつくってほしい!」というテーマをいただきました。そこで、通常のIPAに使われる柑橘系の香りや苦みが特徴的なホップだけを使うのではなく、そこにトロピカルフルーツのような香りを持つホップも多く加えることにより、様々な要素の香りが複雑に溶け合い、味わいに厚みを与えています。
田中 「デラックスIPA」というのは、CDの「デラックス・エディション」のようなものだと考えました。そこで、人気のホップ4種類を贅沢に使ったビールに仕上げています。とはいえ、味としては完成された、派手過ぎない、バランスの取れたものにすることも意識しています。ジミー・イート・ワールドの音楽は、派手な要素はありつつも、どっしりと地に足がついた雰囲気が魅力だと思うので、ジミー・イート・ワールドが好きな方が飲んだ時に、その音の雰囲気を感じていただけるようなものにしたいと思っていました。
──では最後に、イベントがどんなものになりそうか教えていただけると嬉しいです。
田中 イベント当日は、ジミー・イート・ワールドから影響を受けた日本のアーティストのみなさんによるアコースティックのカバー・ライブが行なわれます。出演アーティストの方々には、ジミー・イート・ワールドのカバーだけでなく、オリジナル曲のアコースティックセットも披露していただく予定です。そして、この日にオリジナルビール「ジミー・ドリンク・ワールド」が初披露となります。入場無料のイベントなので、みなさんにぜひ楽しんで来ていただけると嬉しいですね。
通常の4倍のホップを使って醸造された「ジミー・ドリンク・ワールド」のお味はどう?
今回の「ジミー・ドリンク・ワールド」はホップの風味が強いIPA仕立て。「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE」に併設された醸造所で、時間をかけてじっくりと醸造されていく。
まずは仕込みとして、麦芽を温水と合わせて60分前後放置し、麦芽が持つ酵素の力ででんぷんを糖に変換。その後、麦芽の殻や取り除く濾過作業を経て、搾り取った麦汁を60分間煮沸。ここでIPAの風味を決定づけるために、ホップを加えていくそうだ。「ジミー・ドリンク・ワールド」で使われているのは、コメット、アイダホ7、サブロ、ストラータという、アメリカ原産の4種類のホップ。つまり、すべてバンドの出身地のもので統一されている。
ホップのもつ香りの成分は熱を加えると飛びやすいため、「ジミー・ドリンク・ワールド」では60分間の中で何回かに分けてホップを加え、バランスのいい風味を実現。香りと苦みをしっかりと感じてもらうため、煮沸作業の最後にもホップを加える“ひと手間”をかけている。
煮沸が終わると、遠心力を使ってふたたびカスを取り除き、約20℃に冷却。そこに酵母を加えて発酵させる。この工程は、おおよそ1週間~10日ほどかけてじっくりと行なわれるそうだ。仕上げとして、ここでも最後にホップを漬け込み、香りをより一層際立たせているとのこと。こうして、通常の4倍ほどのホップを使ったデラックス仕様のIPAが完成する。
実際に飲んでみると、柑橘系やトロピカル系の香りが混ざり合った豊かな香りと、心地よい苦みがダイレクトに広がるような雰囲気。出来立てのフレッシュな飲み口も印象的だ。
当日はこのビールを、バンドの希望を踏まえて日本らしいデザインを施した25周年仕様のオリジナルパイントグラス(非売品)で提供。当日会場で『Surviving』を購入した方には、このグラスが抽選でプレゼントされる。また、今回のオリジナルビール自体は、イベント翌日以降もストックがなくなるまで「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE」で販売する予定だ。
デビュー25周年、通算10枚目の最新アルバム『Surviving』を紐解く
約3年ぶり通算10枚目の最新アルバム『Surviving』は、前作『Integrity Blues』に引き続き、元メディスン(Medicine)のベーシストで、M83の『Hurry Up, We’re Dreaming』(11年)やパラモア(Paramore)の『Paramore』(13年)、ウルフ・アリス(Wolf Alice)の『Visions of a Life』(17年)など、様々な作品のプロデュースを手掛けるジャスティン・メルダル・ジョンセン(Justin Meldal-Johnsen)がプロデュース。前作での作業に手応えを感じたこともあり、制作はかなりいいムードで進んだという。とはいえ、彼らが前作と同じような作品をつくろうとしたかというと、決してそうではない。ジム・アドキンス(Jim Adkins)は、本作のテーマとして「やりたくないようなことを続けて生き残るよりも、何か常に新しいことに挑戦していくのが真の生き方だ」という趣旨の言葉を綴っているが、バンドは前作とは異なる新しいサウンドを生み出すために奮闘していったそうだ。
Jimmy Eat World – All The Way (Stay) (Official Video)
その結果、今回の『Surviving』は、1曲目“Surviving”や2曲目“Criminal Energy”を筆頭に、前作の特徴でもあったジャスティン・メルダル・ジョンセンが得意とする音響的なギター・サウンドとは異なる、パキッとした音でドライブしていくエネルギッシュな楽曲を多数収録。前作と比べると、質感としては『Clarity』や『Bleed American』といったバンドを代表する作品群によりタフな雰囲気を加えたタイプのサウンドになっている。同時に、中盤には深く沈むようなシンセベースなどを取り入れたエレクトロニックなアプローチが印象的な“555”や、軽快なサックスソロがバンドの演奏とともに盛り上がっていく6曲目“All The Way (Stay)”などの新機軸も追加。“All The Way (Stay)”では、サックスとともにこの楽曲に華を加えているコーラスを、『Bleed American』の頃にともにツアーを回っていたレイチェル・ヘイデンが担当している。
Jimmy Eat World – 555 (Official Video)
そして6分越えのラスト曲“Congratulations“では、イントロから徐々にバンドの演奏が盛り上がり、終盤に向けて轟音ハード・ロックに変貌。楽曲ごとに様々なアイディアを盛り込みながら、10作目とは思えないフレッシュな音を全編に詰め込んでいる。国内盤CDには、ボーナストラックとしてアンドリューW.K.のカバー曲”Party Hard“も収録されている。
また、今回のアルバムジャケットは迷路を模したものになっており、これは「旅を続けて、サヴァイヴしていく」というイメージから生まれたものだそうだ。つまり、本作で彼らが表現しているのは、ときに迷い、ときに袋小路に陥ったとしても、それを跳ねのけて先へと進んでいく強い意志のようなものなのだろう。デビューから25周年を迎えた今もなお、未来に向けてバンドがギアを上げていくような雰囲気が何よりも印象的な作品になっている。
<ジミー・ドリンク・ワールド! ~JEWデビュー25周年記念&『サヴァイヴィング』リリース・パーティ~>の開催日は11月27日(水)。ジミー・イート・ワールドの音楽を愛する人々が集まる場所で、彼らのデビュー25周年を祝ってみてはいかがだろうか。
Text by 杉山 仁
Jimmy Eat World
1993年、幼少期以来の友人であったジム・アドキンスとザック・リンドを中心に米アリゾナ州メサにて結成。1994年、自主制作盤『ジミー・イート・ワールド』でデビュー。フジロックへは2回出演、2017年にはMAN WITH A MISSIONとの東名阪ツアーなど、幾度の来日を経験している。
RELEASE INFORMATION
Surviving
2019.11.27(水)
Jimmy Eat World
SICP-6232
¥2,200(+tax)
国内盤ボーナス・トラック:
「パーティー・ハード(アンドリューW.K.のカヴァー曲)」収録
歌詞・対訳・解説付
EVENT INFORMATION
ジミー・ドリンク・ワールド!
~JEWデビュー25周年記念&『サヴァイヴィング』リリース・パーティ~
2019.11.27(水)
COREDO室町テラス1F CRAFTROCK BREWPUB&LIVE
OPEN/START 19:30
入場無料(※ただし、未成年者は入場できません。)
Special acoustic performance by:
Bearwear
Hollow Suns
The Winking Owl