「ジューク/フットワーク」。シカゴで生まれたこの新たなジャンルがここ数年、ジワジワと世界のクラブ・ミュージック・シーンを浸食している。BPM160(※BPM=1分当たりのビートの数で160というのはものスゴく早い!)の三連譜などを多用するトリッキーなリズム=Juke(ジューク)に合わせ、ダンサー達は足技を中心にした高速ダンスを踊る=Footwork(フットワーク)。この新しいミュージック、並びにダンスのフォーマットは、新しいながらもその歴史と混血具合が、実に刺激的なジャンルであることを知っているでしょうか? 今週末から、このシーンのエース格と称されるDJラシャドが東京・名古屋・金沢・大阪を回るツアーで来日します! Qeticではその予習編として今さら聞けない「ジューク/フットワーク」をまとめたいと思いマス!
まずその根源は、”シカゴ・ハウス”!
アメリカ・シカゴから生まれ、80年代に一世を風靡し、その後のハウスやテクノなどに多大な影響を与えたのが「シカゴ・ハウス」。そのシカゴ・ハウスは、エレクトロやヒップホップを根っこを持つマイアミ系のベース・ミュージック=「マイアミ・ベース」の影響と混ざり合い「ゲットーハウス」という粗野で強力なアンダーグランド・ミュージックを生み出します。
DJ Funk “House The Groove”
高速BPM&ループ感は今のジュークに通じるでしょ? こんなビートに合わせて踊り狂っていたダンサー達はフロアでダンスバトルを繰り広げ始めます。そしてこの「ゲットーハウス」が盛り上がる毎にBPMもさらに加速化、しまいには160クラスとなり、それが1997年頃から徐々に進化を重ね「ジューク」へと発展。それに呼応したダンサー達の足下ももちろん加速して「フットワーク」へと発展シマス。
クラバーを魅了するその混血性
高速ブレイクビーツとラガ(マフィン)が合わさり「ドラムンベース」が生まれ、2ステップとガラージのダークネスから「ダブステップ」が生まれたように、ハウスを起源とする「ジューク」もその混血性がクラバー達を魅了します。その血にはシカゴハウスはもちろん、ソウル、ヒップホップ、アシッドテクノ、ベースミュージック・・・BPMの高速感からはガバやブレイクコアなどのハードコア・レイブと共通点を見いだす人も多いデス。この後で述べますが、シカゴからヨーロッパへ飛び火したのは、そんなUKレイブやジャングルなどとジュークが似た熱いエネルギーを持っていたからでしょう。
ヨーロッパの”火付け役”たち!
そんな世界中の早耳な音楽ファンが注目するに至った大きな要因は、海を越えたヨーロッパの好事家たちがスポークスマンとなったからでしょう。日本のファンにおいてはμ-Ziqことマイク・パラディナスが率いる〈Planet Mu〉が出したコンピ・シリーズ『Bangs & Works Vol. 1』が挙げられ、その他、マーク・プリチャード(スティーブ・スペイセックとのユニットであるアフリカ・ハイテックの『93 Million Miles』は個人的には好きなジューク・アルバム!)や、今回来日するDJラシャドのアルバム『ダブル・カップ』をリリースした〈Hyperdub〉の首領コード9らが、ジュークの伝道師として挙げられます。〈Planet Mu〉から近年は〈Ninja Tune〉へ電撃移籍したマシーンドラムや、ドイツのモードセレクターが主宰する〈50 Weapons〉のアディソン・グルーヴ(DJラシャドのアルバムでも共作)ら、ここ最近では多くのクラブアクトがセットの中にジュークを取り入れてますね。
Machinedrum “Gunshotta”
EXILEも注目する”フットワーク”!
昨年驚いたのは日本のポップスター、EXILEのメンバーが本場シカゴまで行き現地のダンサーとフットワーク・バトルをするという内容の「フットワーク」ドキュメンタリーが、なんとNHKで放映されたこと。新たなダンス・フォーマットとしても「フットワーク」は大注目されており、シカゴの刺激的な音を求める若者の欲求から生まれたフットワークも世界へと飛び火します。今では世界各所で行われているダンス・バトルの多くで大胆に取り入れられているようです。
Juke / Footwork Mini Documentary feat Da Mind Of Traxman JP
シーンの大物たちがゾクゾクと登場!
今までアンダーグラウンドで活動していたシーンの大物たちが、そんなシーンの盛り上がりを受けて活動を活発化させます。まずはシカゴのゲットーハウス時代から活躍しジューク界の“ゴッドファーザー”とも言われるトラックスマン。若手で構成されるTEKK DJzクルーからはケー・ロックや、シカゴ・ウェストサイドのクルーFlight Muzikを代表するDJダイアモンド。D’Dynamicを率いるRPブーや、彼と敵対するEQホワイ(D.J. Aprilさんより、RPのクルーを離れたのは事実ですが、敵対ではなく現在も交流があるとの指摘を受けました)、DJラシャドとは高校からの同級生であるDJスピンなど、シーンが注目を浴び始めた2010年頃から、それまではDLを使ったイリーガルすれすれな活動をしていた猛者達がゾクゾクと地上に現れ(?)、その全貌が見えてきます。ヤバイ面子が出てくるワクワク感がまたシーンの熱気を生み出します。
シーンのエース・DJラシャドが登場!!
そんなシーンを牛耳る最大のクルーがTEKLIFEと呼ばれるクルー。その中心人物でありシーンの”エース”と言われる、DJラシャドが昨年、満を持してリリースしたアルバム『ダブル・カップ』は発売されるや否や様々なメディアが絶賛。シーンの叩き上げ感をビンビン感じさせる手練なビートに、アグレッシブさだけではないソウル、ヒップホップなどブラック・ミュージックのスムースさ、おまけにアシッドも加えられた多彩なアルバムは、”ローリングストーン”や”FACTマガジン”などの年間チャートにインするなど好評価を受けました。
DJ Rashad “I Don’t Give A Fuck”
彼にこのアルバム・リリースを懇願したという、コード9率いる〈Hyperdub〉。今週末に行われる、そのレーベル10周年を記念するイベント<Red Bull Music Academy presents Hyperdub 10>で彼が来日を果たします! 以上のまとめ歴史や背景をふまえつつ、ゲットーハウス期からジューク~シカゴ・シーンの生き証人が放つハイブリッド・サウンドを是非フロアで体感シマショウ!!
(text by Qetic・ダブルビー)
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