トイ・ドールズの“Geordie’s Gone to Jail”(Japanese Ver.)
こちらもオリジナルの歌詞を日本語訳したオルタナティヴ版。イギリスのパンクロックバンド、トイ・ドールズの“Geordie’s Gone to Jail”の日本語訳曲で、現在では、アルバム『Idle Gossip』のデラックスバージョンにボーナストラックとして収録されている。
本来は、無実の罪で投獄された若者に起こった悲劇を描いており、悲哀と反体制的な気骨に溢れた楽曲なのだが、それをカタコトの日本語詞で歌い直しているので、何とも言えないユーモアが生まれており、そのギャップが堪らない。
クラシックの楽曲や童謡など、意外性のあるカヴァー曲で知られるトイ・ドールズであるが、如何にもこのバンドらしいジョーク感覚とパンキッシュな感性が同居したカタコト日本語ナンバーだ。
スティクスの“Mr. Robot”
プログレッシヴなアメリカンハードロックを鳴らしていたスティクスが、当時、隆盛を誇っていたニューウェーヴ、テクノポップの影響をモロに受けて1983年にリリースした楽曲。「ドモ、アリガト、ミスターロボット」というシュールかつ破綻した日本語詞とピコピコしたサウンドで、ハードロックファンからはイロモノ的な楽曲と評されることも多いが、突き抜けたポップ感と奇妙な日本語詞からは、この時代の音楽特有の冒険心に満ちたドキドキ感が伝わってくるのも確か。
ガビガビしたヴォコーダーヴォイスで、日本のハイテクノロジーを表現してみせたサウンドは、“20年早かったダフト・パンク”と言ったら、幾らなんでも褒め過ぎか。たどたどしい日本語が生み出すネジ曲がったジャポニズムと、キッチュでビザールなポップ感が堪らない。後に、日本のポリシックスもカヴァーした名(迷?)曲だ。
スナッフによる日本語カヴァー曲全て
歌謡曲のメロディーとリズムは、海外ミュージシャンの琴線にも触れるものがあるのか、世界中にカヴァー曲が存在している。中でも、メロコア系のバンドによるパンキッシュな歌謡曲カヴァーは白眉な楽曲が多い。NOFXやフー・ファイターズのメンバーを中心に結成されたミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズも日本の楽曲のみを集めた企画盤をリリースしているし、パフィーやコブクロの楽曲をカヴァーしたドイツのジャイガンターなども様々な日本語楽曲を残している。
そんなバンドの先達といえる存在が、英国のスナッフだ。日本のハイ・スタンダードにも多大な音楽的影響を与えたことでも知られるスナッフだが、バンドのヴォーカル&ドラマーのダンカンは、日本人ミュージシャンと一緒にサイドプロジェクトを始めるなど、大の親日家で日本通。スナッフでは、アニメソング、歌謡曲、J-POP、童謡…と様々な日本の音楽を(勿論、日本語で)カヴァーしている。そうした楽曲は、編集盤『BlahZsaMcBongBing』にまとめられている。
初期の音源こそ、やや発音やイントネーションに不安があるものの、音源をリリースする毎に、どんどん日本語が上達していくダンカンの堂に入った日本語歌唱は、幅広い層に聴いていただきたい。
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