2013.06.20(THU)@ ビルボードライブ東京(2nd)
圧巻! 新時代のディーヴァが見せた底知れぬ表現力
マイケル・キワヌーカのBGMが流れるフロアは、満員御礼。その年のブライテスト・ホープを選出する「BBC Sound of 2013」で4位に輝き、“Voice Of 2013”とも称される英国・バーミンガム出身のシンガー・ソングライター、ローラ・マヴーラに寄せられた期待値の高さはハンパなものではなかったようだ(そういえば、キワヌーカは昨年の「BBC Sound of 2012」のウィナーでしたね)。
ほぼ定刻どおりに場内が暗転。ディオンヌ・ダグラス(ヴァイオリン&コーラス)、ジェームス・ダグラス(チェロ&コーラス)、イオナ・トーマス(ハープ)、カール(ベース)、ロイ・ミラー(ドラムス、キーボード、グロッケンシュピール)という5名のバンド・メンバーを従えて登場したローラは、真っ白なドレスに真っ白なドリズラーを羽織ったエッジーな出で立ち(写真は1stステージのもの。大阪公演含め、全6ステージすべて衣装が違うのかも?)。金髪にゴールドのイヤリングがよく映える。彼女がウーリッツァーの前に腰をおろすと、オープニングはデビュー・アルバム『シング・トゥ・ザ・ムーン』の冒頭も飾る“Like the Morning Dew”だ。
ハイトーン・ヴォイスからハスキーな低音域まで自在に操るローラの圧倒的な歌唱力はもちろん、何よりも驚かされたのが各メンバーのプレイアビリティと、一体感。最小人数でオーケストラのような厚みを放つストリングスに、フロアをズンズン震わせるクラブ仕様のリズム隊、ジャズ〜ソウル〜ゴスペル〜ポップス……etcを横断する『シング・トゥ・ザ・ムーン』の世界を見事に咀嚼したアレンジメント、ほぼ全員がバンマスと呼べる存在感でコーラスまでも兼任するのだが、それが聖歌隊の合唱のようにローラの歌声に溶け込んでいくのだ。そんな彼らにローラも全幅の信頼を置いている様子だったが、それもそのはず。どうやらディオンヌはローラの妹で、コンポーザーのジェームスは弟なのだとか。ローラ自身も名門バーミンガム音楽院を卒業しているが、おそるべき音楽ファミリーである。
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6月20日 ビルボード東京 1stステージ
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「ハロー。私はローラ・ンブーラ(正しい発音は「ン」のよう)です。東京でプレイするのは初めてよ!」と自己紹介を終えると、1曲1曲の簡単なエピソードも交えながら、アルバムの収録ナンバーを次々と披露。「初恋のこと覚えてる?」と言って始まったラヴソング“Flying Without You”、上空の月をまっすぐ見据えるような仕草で歌い上げた“Sing to the Moon”、ノスタルジックで美しい旋律の“She”、オーディエンスとのコール&レスポンスもばっちり決まった“Is There Anybody Out There?”、自慢のハイヒールを脱いで裸足でステージを闊歩するその姿は、まさに裸足の女神である。“Father, Father”の演奏前には「“Father”って日本語で何て言うの?」とオーディエンスに尋ね、タイトルを“オトウサン・オトウサン”にチェンジしてみせるなど、神々しいパブリック・イメージとは裏腹に人懐っこい性格もキュートだ。
「あなたたちってすごくラブリーだけど、ちょっと静かすぎない(笑)? 何ならテーブルの上で踊ったっていいんだから!」というローラのMCに刺激されてか、スタンディング状態で踊り出すお客さんも続出する中でスタートした代表曲“Green Garden”は、やはりこの夜いちばんの盛り上がりを記録。グリーンライトに照らされたフロアに鳴り響くハンドクラップはアフリカ民族の祝祭のようで、とても自分が大都会=六本木のド真ん中にいるとは信じられないほど幻想的/解放的な瞬間だった。圧巻。なんと異例のWアンコールも実現し、弟ジェームスのチェロのみを頼りに歌われたマイケル・ジャクソンのカヴァー(曲名は秘密)では、新時代のディーヴァの底知れぬ表現力を垣間見たと言えるだろう。「次に日本へ来る時は、もっと日本語をおぼえておくわね」と、早くも再会を約束してくれたローラ・マヴーラだが、そんな素晴らしいライヴが今夜も<ビルボードライブ東京>で行われる。日増しにパフォーマンス・レベルが上昇していく彼女だけに、最終日はさらなるサプライズが飛び出すかもしれないーー。
(text by Kohei Ueno / all photo by Masanori Naruse)
Release Information
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