10月5日は「レモンの日」だそうです。

「レモンの日」はある文学作品が由来となっています。

「レモンの日」の由来となった作品をともに、レモンから連想される文学・音楽作品として米津玄師の“Lemon”、梶井基次郎の『檸檬』をピックアップして紹介します。

「レモンの日」の由来とは?

レモン=文学作品といてば梶井基次郎の『檸檬』が思い浮かぶかもしれませんが、詩人・高村光太郎の「レモン哀歌」がレモンの日の由来です。

1938年(昭和13年)10月5日に詩人・高村光太郎の妻・智恵子が肺結核のため死去。

高村光太郎が智恵子の死後に出版した詩集『智恵子抄』が有名で、亡くなる数時間前にレモンをかじる姿を詠った「レモン哀歌」が由来となっています。

レモン哀歌

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉のどに嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓さんてんでしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

引用元:『智恵子抄』 青空文庫

レモンから連想される作品
米津玄師の“Lemon”、梶井基次郎の『檸檬』

「レモンの日」ということで、レモンから連想される作品として米津玄師の“Lemon”、梶井基次郎の『檸檬』をピックアップしてそれぞれの作品のテーマや印象を紹介したいと思います。

レモンと言えば、米津玄師の“Lemon”

10月5日「レモンの日」の由来は?米津玄師「Lemon」、高村光太郎「レモン哀歌」、梶井基次郎『檸檬』の作品を楽しもう! music180517_kenshiyonezu_01-1200x795
photo by Jiro Konami

「レモンの日」は悲しい哀歌が由来ですが、現代人が「レモン」から連想させるのは2018年最大のヒット曲であるドラマ『アンナチュラル』の主題歌、米津玄師の“Lemon”。

米津玄師の“Lemon”は「人の死」がテーマとなっており、決して忘れることのできない死、忘れることのできない人を思って嘆き悲しむ曲。

大切な人の死を嘆く悲しい歌という点では高村光太郎の哀歌「レモン哀歌」と共通しているのかもしれません。

米津玄師 MV「Lemon」

レモンと言えば、梶井基次郎の『檸檬』

梶井基次郎の代表作である短編小説『檸檬』。

「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた」という書き出しが有名。

大雑把に説明すると学問、貧困、病気の苦しみを抱える人間が京都の丸善を「檸檬」を爆弾に例えて爆破することを夢想するという話。

独特の不安感、焦燥感を感じ取ることのできる名作として評価されている作品です。

色々な解釈があるかと思いますが、この作品での「檸檬」は憂鬱さの対極に位置するものとして描かれているのではないでしょうか。

京都の丸善に檸檬を置く文学ファンも

捉え方によって爽やかなイメージ、ほろ苦いイメージなど様々な印象を与えてくれる「レモン」。

音楽、文学など芸術作品のテーマとして魅力的な果実なのかもしれません。

紹介した以外にも、男女の関係を歌っているレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の“The Lemon Song”、ブライアン、マイケルのダダリオ兄弟を中心としたアメリカのバンド、ザ・レモン・ツイッグス(The Lemon Twigs)などを含めて、「レモンの日」にレモンに関する作品をぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?

高村光太郎『智恵子抄』

梶井基次郎『檸檬』

米津玄師”Lemon”