もう一つのプロデューサーとしての大きな実績はディペッシュ・モードの『エキサイター』。これはディペッシュ・モードが所属していたUK名門〈Mute〉レーベル代表のダニエル・ミラーからのおすすめで、マークが12歳の頃からファンだったディペッシュ・モードのプロデュースを引き受けることとなる。そうした活動により、彼はテクノから大きなフィールドで認知されるようになる。レディオヘッドのトム・ヨークはそんなLFOの大ファンで、自分たちが初めてブレイクビーツを取り入れたナンバー“プラネット・テレックス”のリミックスに彼を選出、そのお返しにマークはビョークの『セルマ・ソングス』でトムとのデュエットを彼女に薦める。
Radiohead – “Planet Telex(L.F.O. JD Remix)”
プロデュース作業の多忙期をはさみ、7年という年月を経てリリースされたのが『シーズ』(2003年)で、ひとりになってもLFOは健在、ということを知らしめる。逆にひとりになったことでリラックスして前作の極みを押し進めた印象もある。「例えば、このアルバムの1曲目を聴くと、どこかマイ・ブラディ・ヴァレンタインを思い出すんだ。このアルバムは、テクノだけじゃなくて、いろんなジャンルの僕が好きだったものの歴史だと思う」と、パーソナルな集大成を示唆した今作がラストの作品になってしまうとは誰が思っただろう・・。
LFO – “Freak”
彼のピュアなテクノ愛は恐ろしいほどに私たちの感情に働きかける。来日は幾度もあるが、いつも真っ暗闇にラップトップの明かりだけが彼を照らし、ブリブリなビートにも微動だもせずに音に打ち込む彼の姿勢。そんなピュアさゆえに様々なアーティストが参謀役として彼を必要としたり、今もなお僕らの胸の中に彼のサウンドがある、ということなのだろうか。もう「We Are Back」はないのは分かっている。彼が経済的にも礎となった〈Warp〉25周年のイベントが9月にポーランドのクラコフで行われたが、そこで彼はライブを行っていたので、この逝去はここ1ヶ月で急に容態が悪くなったことが予想される。本当に早すぎる・・。
LFO – “Freak”(Live @ Warp25, Krakow, 21.9.2014)RIP Mark Bell
足跡を辿ってみただけで彼の偉大さが再確認させられます。惜しくも彼は亡くなってしまいましたが、彼が作り上げた素晴らしい音楽は永遠です。改めて偉大なアーティストの訃報に謹んで哀悼の意を表します。
(text by Qetic・ダブルビー)