5月14日に幕を開けた『Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026』は、全国9都市18公演におよぶ対バン形式のライブツアー。遡るとSuchmosの対バンツアーは2020年に開催予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で中止を余儀なくされ、その当時の想いはSuchmos自身も、関係者も、ファンも同じテンションで共有していたことだろう。それもあって本ツアーの開催が発表されると、Xなどでは「あのときのリベンジ!」という声があふれた。

Suchmosがリスペクトするアーティストを各地の公演ごとにゲストとして迎える本ツアーは、単に自分たちの楽曲を披露する巡業ではなく、異なる背景と音楽性を持つ表現者たちと共鳴し合うことで、新たなステージを切り拓こうとする挑戦とも捉えられる。そして何と言っても、ゲストの顔ぶれが同じ時代を駆け抜けた戦友から憧れの先輩まで実に多彩かつ豪華で(神奈川・IO、愛知・GLIM SPANKY、大阪・くるり、福岡・長岡亮介、北海道・cero、宮城・ハナレグミ、広島・GRAPEVINE、新潟・The Birthday、東京・Fujii Kaze)、チケットの争奪戦は凄まじかったようだ。

今回のKT Zepp Yokohamaでの2DAYSは文字通りツアーの出発点で、ゲストは日本のHIOPHOPシーンで独自の立ち位置を築くラッパーのIO 。Suchmosと同じく都市の空気と向き合ってきた表現者であり、両者は若き頃から定期的に交流があったという。本稿では、SuchmosとIOの両者が“現在進行形”の音楽を携え、交差し、共鳴し、そして更新した夜をレポートする。

〈過去記事〉
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前座ではなく、あくまでも対バン
この夜が本物であることを証明したIO

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開演時刻の19時をやや過ぎ、場内の照明がゆっくりと落ちていく。Suchmosの対バンツアー初日、その幕開けを託されたのは、ラッパーのIO。昨年リリースしたアルバム『JUST ALBUM』と同じく、始まりの“Just intro”のビートと共にステージ上に現れたIOは、過剰な煽りも、演出的な前振りもなく、ほとんどそのままの佇まいでステージを見渡す。まだはっきりと見えない、暗闇に浮かぶシルエットだけで、観客を納得させる──それがIOのズルいまでのカッコ良さだ。

“本牧カーチェイス”は、曲の輪郭がはっきりと浮かび上がる。横浜という街の具体的な地名、夜の匂い。IOが紡ぐ言葉は抽象的な都市論ではなく、生活の延長線上にあるストリートの感触そのもので、KT Zepp Yokohamaというライブハウスは一瞬にして“どこかの街の夜”へ。続いて「横浜行けますか!」の煽りから“Spotlight”へ。ここまで3曲はアルバムの曲順と同じで、レーザーのライトがタイトル通りのスポットライトになり、照らされた観客の手も自然と上がった。

オープニングから「むむ?」と思ったが、サックスをはじめとした演奏陣が次々と見せ場をつくるこの“Kidy”で、IOのバンドメンバーが“ヤバい”ことを確信した。MELRAW(Sax./Gt.)、熊代崇人(Ba.)、大樋祐大(Key)、荒太洸(Dr.)、KORK(DJ / MP)という、この対バンに臨むIOの本気度が伝わる布陣。「堀米みたいに付ける金」「ここが生まれ死ぬ街」とTOKYOとHIPHOPをREPする“1942”では、哀愁漂う極上の演奏にIOも満足気な様子で、余裕な素振りで客席をゆっくりと見回す。

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続く“Racin’”が放たれるころには、オーディエンスの熱は高まり、自然と声が上がる。さらにその熱は、Kohjiyaの登場で急沸騰。「シャバイ事してる……」のリリックに。「暇ねぇよ!」と大声で答えるヘッズたちの純粋さが眩しい。そして“Mamacita”から“Trust Me”(feat. MALIYA & Shurkn Pap)と“Lowkey(feat. MALIYA)”では、メロウな曲調に浸る時間が訪れた。

IOのステージのハイライトは、次の“Say My Name”。松葉杖で現れたRyohuを見て、もちろんいい意味で“ズルい”と心の中でつぶやいた。ただし、さすがに立ちっぱなしはしんどいのか、ステージに用意された椅子に座ってタイトなラップを披露。そのパフォーマンスの貫禄に、松葉杖が“王笏”、椅子が“玉座”に見えた(のは自分だけか)。さらに、Ryohuが残って“All in One(feat. IO)”。KANDYTOWN、言わずと知れた関係値。盟友との時間にIOの表情が柔らかい。

「Suchmos、呼んでくれてありがとうございます」と穏やかな口調で告げたIOは、ラストナンバーの“左利きのBenz”へ。 この曲が持つ疾走感と内省性は、IOの二面性を表している。成功を手にしながらも、自分自身を疑い続ける視線。その葛藤を作品として差し出す覚悟が、聴く者の胸に深く刺さる。曲が終わった瞬間に残ったのは、言葉にしきれない余韻と静かな納得感だ。

この夜が「対バンツアー」であることを考えると、IOの役割は極めて重要だった。彼は会場を温めるためにステージに立っているのでもなければ、Suchmosの前座として存在しているわけでもない。むしろ、この夜全体のリアリティを先に提示するという役割を、完璧に果たしていた。IOのステージで鳴らされた言葉とビートが、あとに続くSuchmosの音楽をより現在進行形のものとして浮かび上がらせる。その土台をIOは確実に築き、この夜が“本物”であることを証明した。

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「どう楽しむか見させてもらいます」
その空気、その余裕こそ今のSuchmos

IOのステージが終わり、転換の時間が訪れる。言葉とビートが刻んだ余韻がフロアに残る中、観客は静かに、しかし確かな期待を持って次の瞬間を待っている。20時10分、照明が落ち、SEが鳴り始めると空気が変わる。しかしそれは、IOの余韻を断ち切るような変化ではない。むしろ彼が提示した現実の上に、もう一層、異なる質感のレイヤーが重なっていくような感覚だった。

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そしてステージにSuchmosのメンバーが登場。YONCEは深々とお辞儀をした。

「Suchmosです。どう楽しむか見させてもらいます。ご自由にどうぞ」

その言葉に続いて始まった1曲目は“MINT”。グルーヴはしなやかで、どこか抑制されている。それでいて、音のひとつひとつが確実に身体へ染み渡り、首を揺らす。過去にライブで何度も演奏されてきた楽曲でありながら、その響きはどこか新しい。それはアレンジの刷新だけによるものではない。バンド全体が今のテンポで呼吸していることが、ナチュラルに伝わってくる。「気の抜けたコーラでも飲んで」のときにコーラを掲げる、1階席・観客のシンクロ率は今日も100%。「破けたジーンズで良い」と歌うYONCEのジーンズが、しっかりと破けているのも100点だ。

続く“Alright”が持つポジティブなムードは健在だが、過剰な高揚感はなく、むしろ落ち着きがある。TAIKINGとRen Yamamotoがステージ最前線に移動して観客を煽るとともに、曲の後半で見せたアレンジも新鮮だった。音の余白がより際立つ“Whole of Flower”では、ドラムの一打、ベースラインのうねり、ギターのカッティングが主張しすぎることなく、しかし確実に存在感を放つ。フロアの観客は盛り上がるというよりも、浸るようにSuchmosの音を受け取っている。

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そしてYONCEにアコースティックギターとスタンドマイクが用意され、その流れの中で披露された新曲(タイトル未発表)が深い印象を残した。昨年リリースのEP『Sunburst』収録の“Marry”と同じ世界線にあるような、フォーク&ブルース感。“Marry”では「君らしい君でいてほしい」と歌っていたが、この新曲でも「何も言わず 何かしている 君を見ているだけでいい」と直球の愛を歌う。今後、Suchmosでこのテイストの曲が増えていくのかなと思いを巡らせた。

「今日は初日、横浜です。来てくれてありがとう。あと何より出演を快諾してくれたIOくんと、彼のバンドメンバーに大きな拍手をお願いします。ロックとヒップホップ。違うようで、まあハッキリ言って、俺は一緒だと思っています。だから今日、言ったらどちらのお客さんもいる、ぐちゃぐちゃに混ざっている状況が、僕のとってはすごく心地が良いです」(YONCE)

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さらに「喋りすぎたぜ〜今から歌〜う」とYONCEが“Pacific”を歌い始めると、会場の雰囲気が変わる。この曲が持つ浮遊感はやはり格別で、KT Zepp Yokohamaというハコに夜の海風が吹き抜けるような気持ち良さを感じた。その余韻に浸ろうとした瞬間、OKのタイトなドラムが響き、こちらもタイトル未発表の新曲に突入。「片隅のメモリー」「気が向けばプレイバック」「気がつけばフラッシュバック」などの歌詞や曲調も含め、どこか昭和の歌謡曲のような響き。観客はその新鮮な変化を正面から受け止めていたし、この曲からはSuchmosの今のテンションを感じた。

ライブで鳴る音が、今が一番カッコいい
“Blow Your Mind”の旅は続く

「あと5曲」とYONCEが告げて始まる後半戦。ライブ中盤までにSuchmosが提示したのは抑制や洗練、そして静かな自信だった。だがライブはここから先、このバンドが長年かけて培ってきた「熱の扱い方」のようなものが姿を現す。“GAGA”はリズムセクションの音が前に出ることで、グルーヴの輪郭がより明確になり、フロアの観客の身体が自然と揺れ始める。この曲が持つミニマルな反復性とじわじわと高まっていく高揚感は、ライブという空間でこそ真価を発揮した。

続く“YMM”では、空気が一転。この曲が持つポップネスは健在だが、その鳴らされ方はどこか落ち着いていて、成熟したバンドが選び取った余裕が感じられるアプローチだ。Ren Yamamotoはステージ中央で堂々とリズムを刻み、TAIKINGのギターはいつも以上に吠えていた。さらに終盤のTAIHEIのキーボードの音色とKaiki Oharaのスクラッチは、いつ聴いても惚れ惚れする。

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そして“STAY TUNE”へ。この楽曲が持つ象徴性を考えればライブの山場になりそうなものだが、ここで鳴らされたのはアンセムというよりは、時間を経たからこそ鳴らせる1曲として異なる表情を見せていた。感情を前面に押し出すのではなく、あくまでグルーヴに委ねる。マイクをくわえ、「グッナーイ」をふざけて歌って自分で笑ってしまうところもYONCEらしかった。

本編ラストに向けて、“A.G.I.T.”でフロアのテンションは一気に跳ね上がり、“VOLT-AGE”でその熱はピークに。それらの曲が鳴るときに会場はひとつになるが、それは予定調和の盛り上がりではない。これまで積み重ねられてきた流れの上に、必然として生まれたクライマックスだ。

メンバーがはけると、観客はもちろんアンコールを求める。文字通り「アンコール!」と声に出して呼ぶのは珍しかったが、手拍子に呼ばれてSuchmosが再びステージへ。「お得なビジネスのご案内」(YONCE)という言葉で、2027年3月から5月にかけて仙台・福岡・横浜・神戸で開催される全国アリーナワンマンツアー『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』が発表された。

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そしてここまでの文脈を振り返れば、アンコールで披露される曲は決まっている。そう、feat.呂布の“GIRL”。彼らの言葉を借りるなら、“百億光年ぶり”にライブでやる曲だ。実際にこの日は急遽やることを決めたという経緯もあり、曲が始まるとメンバー同士で顔を合わせながら、丁寧に演奏をしている様子が伺える。そして「出会いは11年前だった。あのころの俺たちは明日のことなんて知らない。何も持たない男たちだった」というYONCEの口上に誘われて、呂布with松葉杖が再登場。呂布はピースなラップを届け、ラストはYONCEと向かい合って踊り、肩を組んだ。

和やかな空気のまま、あと5分で全国アリーナワンマンツアーの先行販売が始まるタイミングで、オーラスは“Life Easy”。観客は充足感に満ちた表情で、穏やかなフィナーレを迎えた。

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この日のライブで感じたのは、本ツアーは「現在を更新する旅」であるということ。現にSuchmosの活動再開後、横浜アリーナ・フジロック・Zepp Hanedaといった要所のライブを追いかけて感じるのは、「ライブで鳴る音が、今が一番カッコいい」というシンプルな事実だ。

このあと対バンツアーは、7月2日にゲストでFujii Kazeが登場するZepp Hanedaまで続いていく。異なるフィールドと方法論で自らを磨いてきたアーティストたちが、同じ時代、同じ空間で鳴らす音楽。その貴重な交差点に立ち会える感動を、日本各地の会場でぜひ味わってほしい。

2026年、Suchmosが選んだ“Blow Your Mind”の旅は、まだ始まったばかりだ。

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Suchmos The Blow Your Mind TOUR 2026

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全国アリーナワンマンツアー
『Suchmos BAY SIDE TOUR 2027』
開催決定!

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<TOUR SCHEDULE>

2027年3月13日(土)&14日(日)
ゼビオアリーナ仙台 (宮城県)

2027年4月16日(金)&17日(土)
マリンメッセ福岡B館 (福岡県)

2027年4月24日(土)&25日(日)
Kアリーナ横浜 (神奈川県)

2027年5月1日(土)&2日(日)
GLION ARENA KOBE (兵庫県)

チケット情報