もう行ったら必ず顔なじみな連中が集う、そんな愛すべきイベントとして定着した<LOW END THEORY>。会場に入りそんな顔なじみ達との挨拶も早々にフロアに行くと、<LOW END THEORY JAPAN>のレジデントであるDJ KENSEIが手練なDJプレイでパーティーがスタート。そしてフロアが温まりきったところで始まったのは「ビートメイカーの登竜門」と位置付ける人気企画「Beat Invitational」である。
気鋭なリピート・パターンやグチョンなどは内容も素晴らしく、環ROYはノリすぎてフロアで踊りまくる始末(笑)、UYAMA HIROTOとMASS-HOLEなど管楽器やMPCで会場をわかせたライブ性も今回は非常に高かった。注目の本家<LOW END THEORY>クルー達はダディ・ケヴがイベント前のインタビューで「BPM50~60くらいの新曲をやるよ」という言葉同様に、BPM遅めのロービートでウワモノがレイヴィーなブロー・ステップ系がトレンドなのかと思わせる内容を披露。筆者的にはトーラス・スコットとDJ YASの純血ヒップホップ魂をビンビンに感じさせるトラックと、そんなトーレスにハグを求めさせるぐらいレイヴィーで太いベース・トラックを聴かせたSEIHOが個人的なハイライト。
ただし、今回の真のハイライトはダディ・ケヴを始めとしたレジデント全員が最大限のリスペクトを持って招聘したDJ KRUSHのプレイであろう。特に太いロービートにヤラレッぱなしな今回の<LOW END THEORY JAPAN[Summer 2013 Edition]>では、彼の繊細さが際立つようなプレイが鮮やかなコントラストとなった。スクラッチの絶妙さと非常にしなやかなDJプレイ、終盤ではこれまたレジェンドのDJ Shadowの名曲“The Organ Donor”をエディット・プレイ! この瞬間はヤバかった・・。
極上なビートを堪能した後は、バックDJにトーラス・スコットを従えてノーキャンドゥが、みぞおちを鷲掴みにする低音と共に畳みかけるラップでフロアをアジテート。中でもステージにファンを登壇させてから繰り出した新曲は、彼自身の失恋を乗りこえた経験をベースにしたという。フックで「all over a bitch!」と連呼し、ステージ、フロアが混然一体となる異様な盛り上がりようからして彼の完全なる吹っ切れ具合は見ていて痛快であったし、逆ギレ恋愛ソングはある種、新しいジャンルだと感じた。
続くファンお馴染みのDJノーバディは、これまでの印象とは打って変わって、風貌やパフォーマンスのエンターテイナー振りが倍増。ヒップホップに詳しくなくともあの場にいれば、もうDNAレベルでヒップホップとは何かを理解してしまう程の濃厚パフォーマンスであっただろう。次に登場したD-スタイルズはダブから~ソウル、そしてヒップホップなど煙立つようなサウンドスケープをスクラッチの妙技だけでフロアを魅了。
さてさて余韻に浸っているのも束の間、<LOW END THEORY>の総帥ダディ・ケヴが登場。この夜はロウなヒップホップ・ビートに重点を置いた楽曲が続いてきた中、我らがケヴ兄はエレクトロニカやアンビエント色の強い楽曲を優しく且つしっかりドープに展開。レディオヘッドから注目のアーティストのXXYYXXにノーキャンドゥがラップを即興で乗せるなど、最後までバラエティーに富んだセットでフロアを魅了した。
photo by Repeat Pattern
さ~て、大満足!と安心しているとラストに登場したトーラス・スコットがこれまた恐ろしいパフォーマンスを披露。ジューク/フットワーク~レゲトン~ヒップホップから再びジューク/フットワークという容赦ないブチ上げセットで、フロアで踊っている者をランナーズハイならぬダンサーズ・ハイに巻き込んだ。
photo by Repeat Pattern
毎回のごとく「朝よ来ないで!」とパーティーの終わりを受け入れられないファンによるアンコールの拍手が鳴る中、<LOW END THEORY> クルーは一様にフランクに「また会おう!」と交流をしていたのも印象的であった。細胞を奮い立たすサウンドと、ハートに刺さるヒューマニティーが溢れる<LOW END THEORY>、大好きです!
text by ダブルビー
photo by Seiki Hideo