2005年前後に「ポエット・パンク」なる呼称のもと、80sニューウェイヴを00年代的にリビルドさせたサウンドを鳴らすUKロック・バンドたちが次々とデビューを飾った。10年近くを経た現在、彼らの多くが姿を消したり音楽的転換を図ったなか、マキシモ・パークだけが一本筋を通した活動でコンスタントに作品をリリースし続けている事実は、栄枯必衰の激しいUKシーンにおいては快挙といってもいい。

「テクノの名門、〈WARP〉が初契約したロック・バンド」という鳴り物入りで2005年にデビューした彼らは、スミスやXTCなど80sの先達たちの影響を強く受けつつも、ブリット・ポップやUSオルタナ的な要素も加味した独自のサウンドで一躍時代の寵児へと躍り出た。現在まで堅実なペースで4枚のアルバムを上梓してきたが、当然作品ごとに音の進化や変化はあるものの、それでも一貫してニューウェイヴィーなギターとシンセを軸としたメロディアスかつダンサブルなサウンドという基本路線はブレずに成長しているのが頼もしい。

そして5枚目となる新作『Too Much Information』は、新規自主レーベルからの初セルフ・プロデュースという気合の入れっぷり。シンセが眩しいダンス・ロックから、エッジの利いたパンク・チューン、さらにはダブ・ステップめいたダーク・メランコリアまで、いつにも増してバラエティに富んだ内容だが、そのどれもがしっかりとマキシモな色合いに染め上げられている。またフロント・マンのポール・スミスによる独特の詩情を湛えた歌詞にはデビュー時から定評があったが、本作でもそれは健在だ。

《オールナイトのクラブ/溢れかえるパラノイア/そしてああまたか……/今度はなにか違うことをやってみたかった/この辺りにはもう馴染めない/街の真ん中には/別のオールナイトクラブ/ああまたか》

狂騒と倦怠、淡い諦念に彩られたリリックが、目まぐるしく流行り廃りを繰り返す現在のUKシーンを揶揄しているような“Brain Sells”。

Maximo Park –“Brain Cells”

あるいは《潮が満ちるのを見つめている》、《どうして寝室の窓のそばに荷づくりを終えた鞄があるのか?》、《きみの味方でいるよ/きみがこの島を離れたくなったときも》など、随所に観念的な(そしてやはりどこか喪失感めいた)言葉が散りばめられた“Leave This Island”。

Maximo Park –“Leave This Island”

きわめて英国的なアイロニーを孕んだ詞なのに、それが躍動的なサウンドに乗ることによって言葉本来の意味とはちょっと異なるポジティヴな輝きを放っているように思えるのも、またマキシモ・パークの「らしさ」だろう。

本作には、周囲の景色がどれだけ変化していこうと、頑なといっても良いほどに自らのスタンスを貫き続けるマキシモ・パークの「いま」の心意気とサウンドが、驚くほど鮮やかに刻印されている。そんなアルバムがカッコ悪いわけがない。

(text by 北爪啓之)

Event Information

マキシモ・パーク来日公演
2014.04.03.(木)@代官山UNIT
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥5,000(1ドリンク別)

TICKET:
ぴあ(Pコード:218-790)、ローチケ(Lコード:74550)、イープラス

INFO:クリエイティブマン(03-3499-6669)
企画・制作・招聘:クリエイティブマン
協力:ホステス・エンターテインメント

Release Information

元祖ポエット・パンク! UKロック界の良心マキシモ・パーク、新作でも独特の詩情が健在 music140129_maximopark_jk 2014.01.29 on sale
Artist:Maximo Park(マキシモ・パーク)
Title:Too Much Information(トゥー・マッチ・インフォメーション)
Daylighting /Hostess Entertainment
HSE-30325
¥2,490(tax incl.)