MoMoの1stアルバム『BLUE DREAM』には、晴れ渡った大空のような解放感と、コンクリートジャングルで生きる現実の手触りが同時に息づく。

バークリーで音楽を学び、海外の空気と日本のシーンを往復しながら、自分だけの表現を磨いてきたMoMo。今の彼女がたどり着いた表現の現在地が、このアルバムにははっきりと刻まれている。LAで吸収したトップレベルの制作環境、コラボレーションから得た発見、そしてリスナーにまっすぐ届けるための表現や手応えまで。R&Bという深いルーツを持つ音楽を、自分の言葉でどう鳴らすのか。その思考と感覚をたどっていく。

1stアルバムという節目に立ちながらも、その眼差しは過去の総括ではなく、この先へと続く新たなスタートをしっかり見据えていた。

INTERVIEW
MoMo

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LAで触れた”一音”への執念と、制作の流儀

──1stアルバムがまもなくリリースということで、まず最初にここ最近の心境だったり、今のムードを教えていただけますか

やっぱりアルバムが完成したので、クリアというかすっきりしたムードです。ただ今回、LAのスタジオで一緒に制作したプロデューサーだったり、ソングライターの人たちの、一音にかける執念や、制作のスピード感を間近で見てて、”この世界のトップクラスの当たり前”みたいなのをすごい吸収してきて、次どういう作品を作ろうかみたいなところも考えてたりします。

──そのLAで感じた”一音に対する執念”って、具体的にはどんなところに表れていたんですか?

メロディーにある若干の半音のずれとかだったりとかです。向こうのプロデューサーさんは「これの方がフローがいいよね」とか、歌詞っていうよりも、このリズムがどういうふうにフローしていくかっていうところにすごい重きを置いていた気がします。

──そのために歌詞自体を変えることもありますか?

歌詞を変えることもあります。言葉尻がちょっと余ってるとハマらないんですよね。特に速い曲とかだと。「この歌詞、いいけど変えたくない」っていうときもあるんですけど、結局はその流れを一番重要視してるかなっていうところは感じました。あとは今回、コライトで一緒に入ってくれる海外の人がすごく導いてくれました。英語が第二外国語の自分にとっては、そのネイティブが入ってくれることで、自分の絵が実際に曲に表れる感じがあって。そこはすごく大きかったです。

──そうすると、いろんな共同制作があったことで、ご自身の中でもかなりスキルが上がった感覚がありますか?

ありますね。あっちの人たちは曲を書く速度が本当に早くて。一曲を2時間で仕上げたりとか。その中で”いかにフローを崩さずにセッションするか”っていうのは、すごくプレッシャーも感じましたけど、修行の部分でもありましたね。

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──その流れで、今回の1stアルバムの制作中で、MoMoさん自身の中で何が変わったのかを聞かせてください。以前のインタビューで「今はジャンルやカテゴリーを強く意識するというより自由な気持ちで作っている」とおっしゃってましたが、そうした自由さって、今回の1stアルバムではどう表れていますか?

一言で言うと、「自分はこうあるべきだ」みたいなリミッターを外したことかなって思ってます。バークリー音楽大学で習ったこととか、テクニカルなこととかは一回外して「今の自分が感じて心地いいものを作ろう」っていうことを意識してました。

──リミッターを外したというと?

今までは「これってお客さんに受けるかな、受けないかな」みたいな基準で考えてたんですけど、LAでは”自分の自由の中でどういうふうにいい作品が作れるか”っていうところに、みんながすごい向き合ってて。そこにかなり影響されましたね。

──そんな影響の中で改めて「音楽って面白い」と思った瞬間はありましたか?

ありましたね。一緒にスタジオに入るミュージシャンも、バイブスが合う人が多くて、音楽を通じてコネクションがすごく深くなるっていうのは面白いなって思いました。セッション後も未だに連絡取ってますし、一回しか会ったことないのに、また次につながっていくっていうか。良いケミストリーを感じました。

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固定観念を外して、自分の言葉で歌うまで

──今回の制作期間は、単にアルバムを作ったというだけじゃなく、音楽との向き合い方自体が少し変わった時間でもあったのかなと思います。過去作のときと比べて、ご自身の中で変わったところはありますか?

「固定観念に囚われないで、そのときの心情で書く」みたいなほうに、シフトしていったかもしれないです。以前はそう考えていても、やっぱり気にしてたところがあったんですけど、今回は結構弾けたというか。固定観念がなくなっていった感覚ですね。

──その固定観念がなくなっていく感じ”という意味では、誰かと作ることもかなり大きかったのかなと感じました。今作では笠原瑠斗さんだったり、reinaさんやZINさんとコラボしてますよね。誰かと作りあげることは、1人で表現することとはどんな意識の違いがありましたか?

「自分が元々書いてるストーリーラインか、あんまり外れないように書いてくださいね」とは伝えてて。ただあまり縛りを設けたくはなかったので、自由度は保ちながらも、決まっているストーリーラインをどうキャッチボールして曲にしていくかは、すごく大切にしていました。相手の才能を潰さないように、みたいな。そこは結構難しいところでもあったけど、楽しかったです。

──1人で書いたときより大きいものが返ってきた感覚もありましたか?

そうですね。自分の中にはない感覚や、自分の引き出しにはない言葉に触れられたのは大きかったですね。「その表現、面白いな」と思うことも多くて、新しい発見という意味でも学ぶところがすごくありました。

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──その話の延長で伺いたいのですが、以前のインタビューで「日本にいる以上、どこかでJ-POPを意識してしまっていた」というお話もありました。R&BやNeo-Soulのような欧米で生まれたジャンルに日本語でアプローチすることに、難しさを感じることはありましたか?

日本語は語尾が多かったり、言葉がどうしても長くなっちゃうので、それをメロディにはめ込むのが難しかったんです。でも今回は英語と日本語をミックスして作ってるので、そこはあんまり考えすぎず、自分のやりたいように表現していったっていうのはありますね。他のコラボレーターの方が一緒に入ることで、自然に自分の言葉で日本語を書いたみたいな感じですね。

──固定観念にとらわれなくなったことで、変化していった感覚ですね。

ありのままの自分でいていいんだと思いましたし、そのとき、その場所で「私はこの言葉を言いたい」と日本語で自然に思えたんです。だから、そこを無理に”絶対に英語じゃなきゃいけない”と縛る必要はないなとも感じました。やっぱり自分は日本人ですし、リスナーの方にも自分の音楽が持つ意味をちゃんと受け取ってほしいと思って、そういう要素も取り入れました。

──その変化って、手応えとしても返ってきていますか?

感じますね。コラボしてて、自分の歌詞を見てくれて「あ、これわかる」とか言ってくれたときに、人に共感してもらえる歌詞をちゃんと書けてるなって感じました。

──今回『BLUE DREAM』に寄せていた「言葉の壁を越えて音楽そのもので聴いてほしい」というコメントもすごく印象的でした。MoMoさんにとって、その”音楽そのもの”ってどういう感覚なんでしょう。

音楽そのものは、言葉とか理屈で表せないものですね。自分のエネルギーだったり、バイブスそのものだなと思います。考えるものっていうよりも「そのときの自分がどういう心情でいるか」っていうふうに感じてます。

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自分の物語を音楽に託すということ

──日本にも素晴らしいR&BやNeo-Soulのアーティストはたくさんいて、ライブシーンも豊かで、日々「いいな」と思う音楽に出会える。でもその一方で、ヒップホップやJ-POPのようにメインストリームのど真ん中には、まだ出てきづらいジャンルでもあると感じています。そんな中で、MoMoさんは今、日本のシーンでR&BやNeo-Soulを表現することに、どんな意味を感じていますか?

確かにR&Bとかって流行りづらいというか、やっぱりポップスが一番になって、その後にロックとかもありますよね。でもその流行りに左右されない、エバーグリーンな価値があるなっていうふうに自分は感じてますね。R&Bはソウルをはじめとする深いルーツの上に成り立っていて、長い歴史の中で育まれてきた音楽でもあると思っています。心の叫びのようなものを宿した音楽でもあるからこそ、流行に左右されないことも大事にしています。

──そこから作品の中身の話に入っていきたいんですが、今回のアルバムって、ここまで伺ってきた”自由になれたこと”とか、”固定観念がなくなったこと”とか、そういうものが具体的に音楽に表れている印象でした。その象徴のひとつが、やっぱりタイトル曲でもある「BLUE DREAM」なのかなと思っていて。タイトルを決めた理由と、この曲自体のエピソードを聞かせてもらえますか?

今回この 「BLUE DREAM」って名前にしようと思ったのが、LAに行ったときの突き抜けるような大きい海と空と、東京に帰ってきたときのコンクリートジャングルの対比です。東京出身ってこともあって、この色の差をすごく感じて、ブルーっていう言葉は絶対入れたいなって思いました。ドリームっていうのも、LAで感じた非現実感からです。普段Ye(カニエ・ウェスト)とやってるような人たちがいたり、ご飯を食べてたらアーノルド・シュワルツネッガーさんが来たりとか。そういうのをすごい感じて、このタイトルにしました。

──曲自体にも、かなり個人的な感情が入っていますよね。

これは当時付き合っていた彼と別れて、そのときに何を書こうかみたいな始まりでした。「今、何を私は思ってる? 確かに毎日眠れないし」みたいな、そういう別れた後のジャーナルみたいなものの中から、言葉をピックアップしたっていうのはすごく大きかったです。でもこの曲って1人で歌ってもただの日記みたいになっちゃうから「どうせならもう1人、女性シンガー入れてやりたい」ってずっと相談してたんです。それで話し合ってreinaさんに決めました。reinaさん、すごいソフトに歌うじゃないですか。私と本当に対照的で、逆に一緒に歌ったら面白いんじゃないかって。

──reinaさんが参加することで、バランスが生まれた感覚があったんですね。

そうですね。年齢も離れているしたまたまなんですけど、出会いに運命を感じた部分もありました。

──なるほど。笠原さんとの曲も気になります。

笠原さんとの曲はあらかじめ、「こういうストーリーに基づいて男女が会話してるような感じで書いて」っていうのがあって、彼が持ってきた歌詞をベースに、一緒にスタジオに入って微調整しました。ZINくんとの曲もそうですけど、男女が喋ってる感じが好きなんですよね。笠原さんの声もすごいディープで、ちょっとかすれてて。

──今回のアルバムって、かなりダイレクトな表現も多いですよね。自分の中で思っていたことを、以前よりも自然に出せたというお話もありましたけど、その感覚に近い曲でもあるんでしょうか?

そうですね。たまに、その場の空気で言葉を入れてしまったりとかもあるので、”このラインに深い意味はない”っていうときもあるんですけど、普段からメモしている言葉のストックから拾うことも多いです。「届きそうで届かない、消えそうで消えない」とかもノートから拾いましたね。

──「MY FATE」ってタイトルも象徴的ですよね。

実は最初は曲名が「SHOW YOU」だったんです。ただ笠原さんが北海道からレコーディングに来る日に大雪が降ってしまって。ほとんど欠航の中で彼の便は奇跡的に飛んで、これはもう運命だなって、それで 「MY FATE」にしました(笑)。

──(笑)。かなりリアルな体験が、そのまま楽曲に反映されていくんですね。

だから作り終わった後は記憶喪失みたいな。「どうやって書いたんだろう」みたいな感じでした。

──相当エネルギーが必要な作業だったんだろうなと感じます。

うん、そうですね。1回ちょっとガーッとみたいなのはありましたし、今はかなり完全燃焼に近いです。

──少しキャリア全体の話にも戻りたいんですが、バークリーで学んで、海外の制作環境にも触れながら、日本で活動してきた中で、今振り返って「遠回りじゃなかったな」と思える経験ってありますか?

アメリカに行って、音楽大学に行って、いろんな音楽の基礎を学んだことですね。最初これって自分にいるのかなとか思ってたんですけど、そこで学んだことって、やっぱこっちに帰ってきて絶対できなかったことだし、レコーディングのときとかも、自分の声域が日本に帰ってきて上がったなって感じたこともあったので。あとは海外のプロデューサーが来ても、コミュニケーションが円滑にできるし、あの4年間は無駄じゃなかったなって感じました。

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──そのうえで、1stアルバムのリリースというのは大きな節目でもあると思います。今その節目に立ってみて、昔の自分が思い描いていたキャリアと比べて、違う場所に来た感覚はありますか。それとも、ここに向かって突き進んできた感覚でしょうか?

「プロとしてこのキャリアを築きたい」と思ってからは、突き進んできた感覚ではありますね。ワーナーミュージックさんだったり、マイカホリックスさんだったりと、海外的な考え方ができる。そういう意味でも今、自分がいる環境はすごく大きいです。何より、自分のやりたいことができてるので。その上で英語っていうのを自分の強みだとも思ってます。日本語だけだと、やっぱり海外に出づらいっていうのもあるけど、”自分のやりたい音楽を、今もちゃんと続けてできている”ってところが大きいんじゃないかなって思います。

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──最後に1stアルバムが出た先の話を聞かせてください。ここがゴールではなくて、むしろスタートだとも思うんですが、これからMoMoさんが日本で鳴らしていきたい音楽って、どんなものですか?

確かにアルバムがゴールじゃないので、リリースを経て、日本人の人により多くの人に聴いてもらえたらいいなって思います。英語だから聴かないって思っちゃう人もいると思うんですけど、そこをどういう風に乗り越えて、より多くの日本人リスナーにも聴いてもらえるかなっていうところもすごく重視したいなと思ってます。合わせてもちろん海外もそうです。海外のリスナーにも聴いてもらいたいし、その両方をやっていきたいです。

──最後にもうひとつだけ。以前、「自分が音楽で救われてきたから、自分の音楽で誰かを救いたい」というお話をされていましたよね。1stアルバムが出る今も、その信じているものは変わっていないですか?

変わってないですね。自分の積み重ねてきた先にだけ訪れる奇跡みたいなものってあると思うんです。自分の歌を聴いてもらって「勇気が出た」とか、「辛いこと乗り越えられた」とか、友達やリスナーから言われるのが一番嬉しいです。音楽をやっててよかったって思う一番の理由です。

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Photo:Kana Tarumi
Text:Kaede Hayashi

MoMo

言葉にできない"音楽そのもの”を信じて――MoMoが『BLUE DREAM』で踏み出す新章 MoMo_profile

幼少期より都内の教会でゴスペルに触れ、歌うことに目覚める。90年代〜2000年代のR&Bを中心に影響を受け、高校卒業後は単身渡米。現地のプロデューサーやソングライターと制作を重ねながら、シンガーソングライターとしての活動を本格化させる。英国やタイでのライティングキャンプにも参加し、JAZZ/HIP HOP/SOULを昇華したジャジーかつオーガニックなサウンドと、繊細さと力強さを併せ持つボーカルで独自の存在感を確立していく。

2021年10月、配信シングル「Faces」をきっかけにアーティスト“MoMo”として本格始動。2023年にはLOVE SUPREME JAZZ FESTIVALへの出演を果たし、同年EP「Jaded」をリリース。続く2024年にはEP「FlowinTokyo」、シングル「Shirley」を発表するなど、精力的に作品を発表した。

2025年3月には、Apple Musicの国際女性デー企画において日本人唯一の代表アーティストとして選出され、Doja CatのWOMANをカバー。同年8月にはEP「KTST」をリリースし、国内外のクリエイターとの交流を深めながら活動の幅を広げた。

2026年に入り、「JUICE」「MIDNIGHT GLOW」などのシングルを立て続けにリリース。ロサンゼルスでの制作を経て完成した、自身初のフルアルバムBLUE DREAMを2026年4月29日にリリース予定。
LAの空気と自由な感覚の中で生まれた本作では、英語と日本語を自在に行き来しながら、ポジティブなエネルギーと揺れ動く感情の両面をリアルに表現している。

ジャンルや言語の境界を越え、グローバルな感性で自己表現を続けるR&Bシンガーソングライターとして、今後さらなる飛躍が期待されている。
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1ST ALBUM「BLUE DREAM」

2026.04.29 (WED) RELEASE

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