年にも増して“激動”という表現のふさわしかった2013年の音楽シーン。デヴィッド・ボウイにダフト・パンク、年の瀬にはビヨンセも驚かせてくれたけど、とりわけ日本人の心に一番焼き付いているのばサー・ポール(・マッカートニー)でしょう。160分を越える演奏時間でビートルズ・ナンバーも惜しみなく披露。プロフェッショナルの極み、ポップ・スターとしての矜持と年齢不相応すぎる生命力を見せつけるばかりか、ハッピ姿での再上陸や相撲観戦など一挙一動がニュースになった11月の<アウト・ゼア>ツアーも記憶に新しいところ。「洋楽」が久々に社会現象レベルで盛り上がった瞬間でもあった。

その前には“バック・トゥ・ザ・ビートルズ”を掲げ、マーク・ロンソンやイーサン・ジョンズなど若手プロデューサー陣の起用も話題となった通算16作目のアルバム『NEW』を発表。71歳と思えぬ原点回帰の瑞々しいメロディーに乗せて、「僕らはなんだって出来る/選んだ道を生きられる」と歌うタイトル曲に涙した人も多いのでは。おまけに、70年代にポールが率いた運命共同体、ウイングスのピーク・タイムを捉えた傑作ライヴ・アルバム『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』や、初期ビートルズの秘蔵音源が再びお蔵出しされた『オン・エア~ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』とリイシューも至れり尽くせり。ファブ・フォー結成から50年超の歩みを一手に総括し、さらに更新してみせる八面六臂の大フィーバーだった。

そんな2013年=ポール・イヤーもまもなく終わり。燃え尽き症候群(ポーロス)に悩む人もご安心を。なんとWOWOWでは、年明け早々から豪華ポール・プログラムが目白押し。時代を超越した3本立ては、まさにヤァ!ヤァ!ヤァ!でセイ・セイ・セイ。感動のラインナップを、さっそく放映順にご紹介しましょう。

◎洋楽ライブ伝説 100回記念スペシャル
ポール・マッカートニー&ウイングス ロックショウ

ビートルズ解散後、最愛の妻(のちに死別)で音楽家としてはズブの素人だったリンダと2人3脚で再出発していたポールは、1971年に新バンドのウイングスを立ち上げる。結成当初こそ酷評に晒されたものの、作を追うごとに周囲が求める「理想のポール像」が復活。1973年の名盤『バンド・オン・ザ・ラン』を筆頭に4作で全米ナンバー1に輝いた彼らは、バンド史上最強の布陣でアメリカへ飛び立った……。この76年全米ツアーの実況録音盤が先述の『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』で、さらにフィルムへ収めたのが『ロックショウ』。ポールはこのとき33歳、ロックンローラーとして脂が乗り切っていた。

見どころはまず、“レット・ミー・ロール・イット”や“バンド・オン・ザ・ラン”といったウイングスの代表曲や、ビートルズの鉄板ナンバーである“イエスタデイ”に“レディ・マドンナ”など、今回の来日公演でも披露された曲を多数プレイしている点。解散後しばらくは封印していたビートルズ・ナンバーを解禁したのもこの頃で、必然的に世界最強のスタジアム・バンドとなった彼らを、超満員のオーディエンスが悲鳴とともに迎えるところから映像ははじまる。さらに、4人のブラス奏者も従えたバンドの演奏は、ハード・ロックとしても超弩級。“ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショー~ジェット”と連なる冒頭の黄金メドレーや、重戦車のごときグルーヴが迫る“007/死ぬのは奴らだ”の迫力はとにかく凄まじい。超有名曲から小品まで巧みに織り交ぜたセットリストも飽きさせないし、無我夢中でバンドと音楽を楽しむポールの笑顔もグっとくる。

◎洋楽ライブ
ポール・マッカートニー ライブ・イン・ロンドン 2007

年明けはポール・マッカートニー三昧に! 来日の余韻に浸りつつ、音楽ライフを豊かにする番組が目白押し news131231_paul-maccartney_01

(c) BBC 2007

続いては一気に21世紀へ戻って、2007年の秋にBBC主催のフェスで出演したときのライヴをお届け。この頃に発表された14作目『追憶の彼方に~メモリー・オールモスト・フル』はイイ感じに力の抜けた愛らしい仕上がりだったが、いざステージに立てば冒頭から“マジカル・ミステリー・ツアー”をお見舞いしてアクセル全開、桁外れのエネルギーでポップ・マジックを炸裂させる。エイブ・ラボリエルJr.(Dr)、ラスティ・アンダーソン(G)など2013年現在もバックを務めるメンバーが参加してるのもあって、先刻の来日公演を疑似追体験するのにもうってつけ。約1時間に魅力をギュっと凝縮させたパフォーマンスで、“ブラックバード”や“レット・イット・ビー”、大合唱の“ヘイ・ジュード”に弦楽隊を従えての“エリナー・リグビー”と、ビートルズ時代の代表曲を出し惜しみせず披露しているのもナイス。何度も映る客席には無数の笑顔が咲き誇り、映像越しでもその多幸感が伝わってくるはずだ。それにしても、驚かされるのは当時67歳と思えぬスタイルのよさ。スーツを着こなし朗々と歌い上げる姿に衰えは見受けられず、今更ですけど本当にカッコいいですね……。80歳すぎても平然と何時間もライヴしてそうで怖い。

◎サウンド・シティ -リアル・トゥ・リール
年明けはポール・マッカートニー三昧に! 来日の余韻に浸りつつ、音楽ライフを豊かにする番組が目白押し news131231_paul-maccartney_02

(C) Roswell Films 2013

魔法のコンソール卓とレコーディング・ルーム、愛すべきスタッフに恵まれ、70年代はニール・ヤング『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』やフリートウッド・マック『噂』、近年もレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやスリップノットの名盤を産み落とした伝説のスタジオ、サウンド・シティ。トレンドやテクノロジーの変化とともに隆盛と衰退を繰り返し、2011年に惜しくも閉鎖したこのスタジオを巡るドキュメンタリーで、監督を務めるのはニルヴァーナ~フー・ファイターズのデイヴ・グロールだ。当時瀕死だったスタジオを復活させ、アナログ録音の再評価にも貢献した『ネヴァーマインド』のドラマーは、関係者の声を丹念に拾い集め、カメラを通して自身の原点でもあるスタジオの歴史を辿っていく。さらにアンチ・デジタルの誇りとデイヴの涙ぐましい音楽愛、各々が抱くサウンド・シティでの想い出がレジェンドの心を一つにして、“その後”を描いた本編後編では意義深いコラボレーションの数々が実現することに。そこでポールはデイヴにクリス・ノヴォセリック、パット・スメアとニルヴァーナ組を従え、勇ましくハードロッキンな新曲『カット・ミー・サム・スラック』をプレイ。出演はかなり終盤なのに、主役級の足跡を残してしまうのもこの人らしい。ほかにもフリートウッド・マックやリック・スプリングフィールドとスタジオにまつわる秘話、ジョン・フォガティやトム・ペティ、トレント・レズナーがそれぞれの美学をが語ったりとハイライトの連続。ロックを愛するすべての世代が必見の一作だ。

おかげで年明け早々からポール漬けは確実だが、2014年もビートルズ周辺は賑やかになりそう。まずはアメリカ上陸のきっかけとなった「エド・サリヴァン・ショウ」出演から50周年! ということで、ビートルズのアメリカ仕様盤を纏めた『The U.S. BOX』の日本盤が1月29日(水)発売。さらに、日付も時間も「ピッタリ」50年後となる2月9日(日)には、音楽シーンの大物たちがビートルズ・ナンバーを披露する特別プログラム『The Night That Changed America: A GRAMMY Salute To The Beatles』が現地にて放映予定だ。おまけにビートルズは、来たる<第56回グラミー賞>で「特別功労賞生涯業績賞」の受賞も決まっている。ポールは個人としても複数ノミネートされており、授賞式当日~翌日にビートルズ関連でサプライズの噂も……? WOWOWでは1月27日午前9時(日本時間)より授賞式の模様を完全生中継、こちらもお見逃しなく!

(text by Toshiya Oguma)

Program Information

洋楽ライブ伝説 100回記念スペシャル
ポール・マッカートニー&ウイングス ロックショウ

2014.01.02(木)22:00
放送チャンネル:WOWOWライブ

洋楽ライブ
ポール・マッカートニー ライブ・イン・ロンドン 2007

2014.01.05(日)12:45
放送チャンネル:WOWOWライブ

サウンド・シティ -リアル・トゥ・リール
2014.01.25(土)15:00
放送チャンネル:WOWOWライブ

生中継!第56回グラミー賞授賞式
2014.01.27(月)9:00
放送チャンネル:WOWOWプライム
※生中継 ※同時通訳

同日リピート放送!第56回グラミー賞授賞式
2014.01.27(月)22:00
放送チャンネル:WOWOWライブ
※字幕

問い合わせ:0120-808-422(受付時間:9:00〜21:00)
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