この日、拝めたのはナイトメアズ・オン・ワックス(Nightmares on Wax)とレディオ・スレイヴ(Radio Slave)。今回、<RDC>はキャリアの長い、大御所のアーティストが多数ブッキングされ、1アーティストあたりの尺も長めに用意されているので、お目当てを「見逃すまい」と焦ることなく、ゆったりとした流れで時間と音楽を楽しむことができた。
<RDC>の良さをさらに実感できたのは2日目。初日のグレーな空を一蹴して朝から太陽が顔を出し、元々クロスカントリーコースであった見晴らしのよい会場を色鮮やかに照らした。前日深夜0時には完全に音がストップしているので、夜な夜な仲間と飲んだり、一度会場を離れてホテル泊などしている人も多いが、朝8時前には寝起きすっきりといった表情の男女が水場で顔を洗ったり、歯を磨いたり、自炊で使ったコッヘルやキャンプ用の食器などをゴシゴシしたりしている。私の横で「ドナタカ〜ハミガキペースト プリーズ」と声が聞こえたので、アジア人の男性に、ちょっと古いものなんだけど、と言って貸してあげた。熱い初日が一夜明けた朝のこの時間が清々しく、フロアで躍るのとまた違った気持ちよさがある。
中日(なかび)のトップバッターを飾るべくKaoru Inoueのプレイが響き始めた。9時という時間帯に寄り添う、体に少しずつ浸透するアンビエント。それぞれが活動しながらBGMとして聴くのもよし、フロアに行って電子音の粒によって体の凝りをほぐすのもよし。私たちは着替えたり、知り合いの洋服屋さんと談話したり、昨夜盛り上がりすぎてうっかり置き忘れてしまった荷物など探したりしながら、ゆるいフェスの午前を楽しんだ。
そろそろメインフロアで踊ろうとバッチリ準備(女子はこの日のための衣装にフルメイクをキメ込む)し、下に降りると、昨日よりさらに多くの人で会場が埋まっている。欧米人率もかなり高い。都内のクラブを山の中に移し、そのまま天井と壁を全部とっぱらったような光景。それだけ客層がバックの景色と違和感があるほどに洗練されていて、これが「<RDC>ぽい」ということなのだろうか。
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