40代が「懐かしい」と顔を緩ませるKenji Takimiプレイ中、フロアで遭遇した仲良しのアーティスト友達と会話に夢中になっているうちに、アンドリュー・ウェザオールと対をなすメインアクト、ジャイルス・ピーターソン(Gilles Peterson)が登場。フェスあるあるのひとつなのだが、先頭でノリノリに踊り狂っている人でも実際目の前でプレイしているアーティストが何者なのかを知らなかったりする。この日も然りで、ジャイルス・ピーターソンのプレイ中に「名前は知ってるけどちゃんと聴いたことがない」という客が結構いた。
その知名度に匹敵する以上のテクニックとキャリアがジャイルスのプレイにはあり、既存のファンを満足させるだけでなはく、彼の存在をロクに知らない観客すらも巻き込み、フロアを熱狂というか、野外という心地よさも伴ってむしろ爽やかに彩っていった。誰もが愉快そうに、自然と体が揺れてしまうのはホンモノのDJの成すワザである。数えきれないクラブやフェスで踊ってきたが、この現象を体験したのは右手で数えられるほどだ。
<RDC>のブッキングのセンスは間違いないが、このフェスの素晴らしさはその他の要素が大きいと思う。それはロケーションであったり、その土地とたまたま居合わせた客が織りなす空気感だったり、肌で感じる雰囲気であったり。フェスならではのものであり、<RDC>オリジナルのカラーでもある。
去年と今年とではきっと全く別の満足感があり、来年は、また別の出会いがあるだろう。そう直感し、後ろ髪を引かれながら、私たちは泣く泣く2日目の会場を後にした。
photo by marcy