シンガーソングライター/ギタリストのReiによる新たなセッションプロジェクト<JAM!JAM!JAM!>。
12月10日(金)・11日(土)に開催されたブルーノート東京のライブでは、ゲストに吉田一郎不可触世界(b)、TAIHEI(key)、石若駿(ds)が登場。各々の個性がぶつかり合い、火花が散るような白熱のステージが繰り広げられた。
2021.12.10(FRI)
ブルーノート東京
JAM! JAM! JAM!
ゲスト、そしてブルーノートのために施された楽曲アレンジ
石若による切れ味鋭いドラムソロによって、華やかに幕を開けたブルーノート東京・1日目。まるでウォームアップをするかのようにメンバーが一人ずつハーモニーを重ねていき、徐々にグルーヴが整っていく。最後にReiが壇上へ上がると、客席からは歓迎の拍手が湧き上がった。
この日に演奏されたのは、Reiのオリジナル楽曲を中心に構成されていた。セットリストだけを見ると、普段の彼女のソロライブとはさほど変わらないかもしれない。しかし、この日は確実に普段のライブと一線を画す点があった。なんと、ほとんどの曲で<JAM! JAM! JAM!>向けのアレンジが施されていたのだ。
ファンキーなグルーヴにはじまり、しっとりとしたブルースを経て、終盤に向け一気に加速していくように構成された今回のセットリスト。なかには限りなくオリジナルに近い状態で披露された楽曲もあった。
しかし、鉄板のキラーチューンがいつもよりジャジーになっていたり、緩やかなダウンテンポの楽曲はメロウさが増していたり……と、まさに“ブルーノートらしさ”をアレンジのなかで垣間見る瞬間が多々あった。
同時にこれらのアレンジは、今回集まった吉田、TAIHEI、石若という“シーンきっての個性派”とのコラボレーションが実現したからなし得たのだ、と痛感。各々のバックグラウンドやルーツが異なっているからこそ、ジャンルを横断する複雑な味わいのフュージョンが生まれていた。
手が届きそうなほどの距離の近さ
「お客さんやサポートミュージシャンと目があう時『以心伝心してる』と思う瞬間があるんです。それが生々しく伝わるよう、ブルーノートと相談しながら準備を進め、今日に至りました」
ReiはMCでそう述べていた。実際、その日は目を背けられなくなるほどの生々しさをステージから感じ取った。
私はステージから見て後方寄りに座っていたが、それでもReiたちの様子はディテールまで――アンプを通らない弦をキュッと擦る音やライトで反射する汗、メンバー同士のアイコンタクトなど、ほんの僅かな情報すら掴み取れた(セッション中の「次俺?」「ごめん!」といったマイクを通さない会話が聞こえた時には、さすがに驚いた)。
というよりも、今回のライブは普段に比べ“観る側/観られる側”の境界が曖昧だった。それは、単純に普段彼女が出演するようなベニューよりもステージが低いから、といった構造上の問題だけではなかったように思う。
Reiは客席にクラップを求める際「ジャムセッションっていうのは、演者がセッションするだけでは成り立たないんですよね」とフロアを煽っていた。この言葉の通り、オーディエンスに座る我々ですら、セッションに参加するメンバーの一員になれていたのだ。物理的に、心理的に距離が近かった。
「ステージの上で一緒に演奏している感覚」を取り戻した一夜
最後のアンコール曲では思わず観客がスタンディング、私が今までに観たどの現場よりもフロアが波打っていた。声は出さずに各々が自由に踊る情景。誰もがマスクの下では満面の笑みを浮かべていたと思う。
Reiにとっては昨年9月、GLIM SPANKYとのオンラインライブ「Reiny Friday -Rei&Friends- Vol.11 Net Surfing!」を実施して以来となるブルーノート東京での公演だった。ブルーノートは彼女自身も観客として何度も足を運んだという、思い入れの強い場所だ。舞台上で楽しそうに暴れるReiを観るうちに、ふと昨年実施したZoomインタビューで彼女が言っていたことを思い出した。
ライブしたい! お客さんと騒ぎたいのもあるけど、好きなミュージシャンと一緒にステージで演奏したいです。ステージの上で一緒に演奏している感覚が尊くて、恋しい。
引用元:2020年5月 インタビュー
まさにロックダウン中に彼女が渇望していたことが、ついに叶った。しかも、その喜びを客席にいる我々も共有できた一晩だった。
ちょうど<JAM! JAM! JAM!>の初日は長岡亮介との楽曲“Don’t Mind Baby”リリース日だったこともあって、12月10日は彼女にとって「記念すべき日」だったそうだ。様々なアーティストとのコラボレーション楽曲を発表していくプロジェクト“QUILT”も然り、また<JAM! JAM! JAM!>も然り、現在の彼女は昨年に引き続き、人との “化学反応”を渇望しているように思う。
これからその意欲が加速していくかもしれないし、一周したのちにソロ活動へと帰結するかもしれない。ただ、確実に「今しかできないこと/今だからできること」を彼女は追求し続けるだろう。これからもインタビューやライブを通し、動向を追い続けたい。
最後に、12月10日終演直後の楽屋を訪問。白熱のセッション初日を終えた彼女・彼らに感想を聞いた。
Rei
異種格闘技という感じがして楽しかったです。3人に共通しているのは、セッション中にお互いのことをよく見ていること。そして自分のやっている音楽に誇りをもっていることでした。迎合していないし。そういうところが信頼できる。今日のライブで歌いながら3人のことを見て、それを強く感じました。
吉田一郎不可触世界(Ba)
すごく今、感動しています。このメンバーは僕にとってすごく特別。大事な音楽の友人なんです。だからサポートメンバーとしては良くないかなと思いつつ、つい感情的に演奏してしまいました。まだ初日なので、ちょっとずつ平常心を取り戻して大阪を迎えたいです。
TAIHEI(Key)
初日、走りきりました。大阪もみんなで一緒に走りきろうと思います。最高のバンドです。
石若駿(Dr)
楽しかったです。タフなバンドだなと思いました。あとはReiちゃんが最強だった。エネルギーとアイデアと瞬発力があって。プレイヤーもそうですけど、観客の皆さんにも、もっとReiちゃんのヤバさを体感してほしいです。「一緒にやったらやべーぞ」っていうのを知ってもらいたいですね。
12月23日(木)にはビルボードライブ大阪にて同様のメンバーによる<JAM! JAM! JAM!>を開催予定だ。場所と地域が変わるぶん、ブルーノート東京とはまた異なる雰囲気を楽しめるはず。チケットは発売中となっているので、チェックしてほしい。
Text by Nozomi Takagi
Photo by Kana Tarumi
PROFILE
Rei (レイ)
卓越したギタープレイとヴォーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。2021年11月25日専門学校モード学園(東京・大阪・名古屋)新CM ソングの「What Do You Want?」、SOIL&“PIMP”SESSIONS とのコラボレーション楽曲「Lonely Dance Club」を含む 2ndアルバム”HONEY”をリリース。2021年2月26日 1st Album『REI』の International Edition が、US/Verve Forecast レーベルより全世界配信。
EVENT INFORMATION
JAM! JAM! JAM!
2021年12月23日(木) ※2ステージ公演
ビルボードライブ大阪
RELEASE INFORMATION
Don’t Mind Baby with 長岡亮介
Rei
Reiny Records/ユニバーサルミュージック