――続く3曲目“Be~Go~Resurrection”は、コモンの3曲を繋げたメドレーになっていますね。中盤“Go”のところで音色が急にガラッと変わるのが面白いです。
カオル これはFarahがこの形でやりたい、という形で持ってきたアイディアをそのまま生かした曲ですね。今回編集作業が出来るということで、それを生かした曲になったと思います。
板谷 真ん中の曲ではナリさん(成川氏)が初めてエレキギターを弾いてますよ。他にも今回はウッドベースを使ってますけど、これも新しいことに挑戦してみようというアイディアですね。
Farah 「一発録りカヴァーをコンセプトにしたアコースティックのギター・トリオ」という方向性は前作で突き詰めたところがあったんで、今回はこれまでやったことのないことを、あらゆる制約を取り払ってやってみようと思ったんです。これまであえてやってこなかった編集作業や、途中で使う楽器を変えたりしたことは、すべてそういう気持ちの表われなんですよ。
Common – “Resurrection”
Farah 4曲目はアントニオ・ローレイロの“Luz Da Terra”。一昨年僕が聴いたブラジルものの中でも素晴らしい曲のひとつです。彼はサンパウロのアーティストですけど、いわゆるミナス系の音楽の中でも新しい世代で、それこそミルトン・ナシメントとかとは世代が違う、テクノやドラムンベースを通過したブラジル人が作っているプログレッシヴなブラジル音楽で。単純にこの素晴らしい音楽をRFでやってみたい、という気持ちで選びました。カオルさんがリズム・アレンジをブラジルものではない雰囲気に変えてくれたんですよ。
板谷 この曲はバラバラにリズムを弾いてるんですよね。全員が違うことをしているんだけど、それが結果的にまとまって鳴ってるというか。
成川 アルゴリズム的なノリでね。そういう意味でも、今回の作品ではこれまでのようにFarahが提案したアイディアをみんなで形にするだけじゃなくて、各メンバーのアイディアも曲に反映されてきてるんですよ。その辺りがバンドの新しい“ハッピー・バースデー”ですね。
Antonio Loureiro – “Luz da Terra”
Farah 5曲目のヒース・ブラザース“Smilin’ Billy Suite Part II”は、ファーストを出した時に、Twitterでファンの方から「この曲も合うんじゃないですか」と言われて、自分の中に凄く残っていた曲です。アルバムの構成を考えている時にミディアム・テンポの曲で1曲何かないかなと考えていた時に、「やはりこれだろう」と思って入れた曲ですね。それから、次の6曲目はナズの“New York State Of Mind”でもサンプリングされている、ジョー・チェンバースの曲。これもたまたまですけど、今年はナズは『イルマティック』が20周年ですよね。原曲はフュージョンとフリーが一緒になったような曲ですけど、バンドでダンスの要素を入れるのにもってこいだなぁと思ったんですよ。
カオル 最近のライヴではドラムンベースにアレンジを変えてやってます。ライヴでこれからもっと進化していくんじゃないか? と思われる曲で、他の曲もそうなんですけど、ツアーに出た今はどの曲もかなり変化してきてるんですよ。だから、その辺りも観に来てもらえると嬉しいですね。
The Heath Brothers – “Smilin’ Billy Suite Pt II (1975)”
――なるほど。次はふたたびサン・ラで“Dance of the living image”ですね。
Farah これはベースラインが特徴的で、板さんにやってもらったらかっこいいだろうなぁと思って選んだ曲。今回のツアーではまだやってないんですけど、板さんのベースがあって、その上で2人が自由にやってくれてますね。制作中にも細かいことは全く伝えなかったんです。
成川 だから、この曲って僕の中では完全にフリーなんですよ。2度と同じ演奏は出来ないってくらい何も決まってない(笑)。そこが面白いところでもあるんですけどね。
――続いてジェイムス・ブレイク“リミット・トゥ・ユア・ラヴ”のカヴァーですが、ダブステップとの親和性も高い彼の曲が入っていることには驚きを感じました。
Farah ファレルの“Happy”もそうなんですけど、こうした曲があることで時代性が感じられると思うんです。僕らは古いものだけじゃなくて、やっぱり今の音楽を聴いている人ともリンクしていきたいですから。それに、この曲はメロディー自体もかなりいいんですよね。
成川 ただ、シンプルなだけにギターをどう取ったらいいか分からなくて、最初は「無理無理」って感じでしたよ。「何考えてるのかな」って(笑)。それで結局、この曲での自分のフレーズって、ギタリスト的には恥ずかしくなるくらい簡単なことしかやってない。でも、実は大事なのはひとつひとつの音にどれだけ気合を入れるかということなんですよね。グ~ッと情感を込める感じで、ライヴでやっていても一番疲れる曲だったりしますね。
RF – “Limit to your love(PV)Thnx for Feist & James Blake”
板谷 あと、この曲では弓も使っていて、それもRFでは初めてのことでした。そうすることで音的にも凄くインパクトが加わったし、新しい効果が生まれました。
カオル でも、一方で編集作業の難しさを学んだ曲でもあったんですよ。本当はAセクションとBセクションが切り替わるところで雰囲気をもっとパッと変えたかったという気持ちもあったし、ドラムは打ち込みにして後から合わせてるんですけど、それももっと未来的な感じにしたかった。あとは自分がハード・ロックのドラムを叩いて、弓も使ってクラシック的に弾いてもらって、アコースティック・ギターを使う、その3つが綺麗に丸になればいいな、と思ってレコーディングした曲ですね。
James Blake – “Limit To Your Love”
Farah 次のマイケル・ホワイト“Blessing Song”は、ビルド・アン・アークのバージョンが有名な曲。僕ももともとそれで知ったと思います。今回のテーマでもあるフリー・ジャズ的な曲のひとつで、色んな方向性を探る中で、勢いを重視したこのテイクを採用しました。。
カオル ライヴではもっとテンポを落としてやってますね。今はラテンのリズムを使って、ロック的な縦ノリじゃないリズムでやろうという意識で演奏してるんです。
成川 だから、音源の方では若作りしてるんですよ(笑)。
カオル ほんとに、みんなでそれを意識してレコーディングしましたね(笑)。
RF – “The blessing song(Live version)Imspired by Michael White”