2026年3月22日。ちょうど25年前のこの日、RIP SLYMEは1stシングル「STEPPER’S DELIGHT」でメジャーデビューを果たした。昨年から25周年イヤーを記念してオリジナルメンバー5人で再集結し、約1年間を全力で駆け抜けてきた彼ら。その集大成の舞台に選んだのは、これからのカルチャーを作っていくであろう新会場TOYOTA ARENA TOKYOだ。

活動休止前のラストステージ、RIP SLYMEがそこで見せたのは感傷ではない。徹頭徹尾、パーティだった。

RIP SLYME 25th Anniversary
GREATEST LIVE – Final Three Nights –
2026.3.22 at TOYOTA ARENA TOKYO

開演前の場内には、A Tribe Called Questなどをミックスした懐かしいヒップホップが流れていた。後のMCでRYO-Zが明かしたところによれば、FUMIYAが18歳の頃に作ったミックステープだという。まるでRIP SLYMEの設計図を明かすような構成に、ライブが始まる前からグッと来た。

スクリーンに映し出されたカウントダウンタイマーが18時ちょうどにゼロを刻むと、メンバーの幼少期の写真やこれまでの作品のアートワークをたどるオープニングムービーが流れ、5人のシルエットがステージに浮かび上がった。

1曲目は再集結後初のシングル「どON」。ステージには縦長のLEDモニターが5枚、横一列に並んでいる。メンバー1人ひとりが大写しになる舞台設計で、アリーナのどの席からも5人全員の姿が常に視界に入る。「5人でRIP SLYME」という意志を感じさせるステージだ。SUの太い低音にマイクリレーで各メンバーの歌声が重なっていく。それだけで、5人が揃っているという事実がステージの空気ごと伝わってきた。

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2曲目は「STEPPER’S DELIGHT」。25年前のこの日に発売されたデビュー曲を、25年後の同じ日に鳴らす。アリーナをぐるりと一周するリング状のLEDディスプレイには、おなじみの赤塚不二夫キャラクターが走り回り、場内は歓声に包まれた。新しい会場の設備を活かした大仕掛けなのに、ただ楽しい。このバランス感覚がRIP SLYMEだ。続く「雑念エンタテインメント」でのコール&レスポンス、「GALAXY」での5人揃いのステップダンス。序盤からヒット曲を惜しみなく投入して、この夜がどういう夜になるかを見せつけていく。

実際にRYO-Zはこう言い切った。「『もうちょっとやってくださいよ』とか『嫌だ、悲しい』みたいなしんみりしたのは我々に似合いませんので、最後の最後までド派手なパーティで行きたいんです」。この宣言は、最後まで一度もブレない。

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「懐かしすぎて知らない人もいるかもしれないけど、こういう曲がかかったときは”知ったふりしろ”」というRYO-Zの一言から飛び出した「チェッカー・フラッグ」は、客席が沸いた1曲。高速ラップのマイクリレーの中で、4MCそれぞれのフロウの個性が際立つ。PESが「今日でしょ! 今夜こそが一番熱い夜になるはずですよね!」と煽っての「熱帯夜」では早くも序盤のピークが記録されていた。

そして、これは3DAYSすべてに共通したことだが、その日その日のゲスト陣の顔ぶれもまた面白い。chayとの「JUMP with chay」でアリーナ中が文字通り跳ね上がり、在日ファンクとの「Vibeman feat. 在日ファンク」ではゴージャスなブラス隊のサウンドにFUMIYAのスクラッチが交差する。浜野謙太のジェームス・ブラウンばりのパフォーマンスにフロアが沸騰した。VERBAL(m-flo)がサンバダンサーを従えて登場した「パーリーピーポー (Hosted by VERBAL)」は、日本のヒップホップシーンを共に築いてきた盟友によるお祭り騒ぎ。そして本編終盤、RYO-Zが「今日は普通のファンカじゃねえ!」と叫んだ直後、床からリフトアップして現れたのは布袋寅泰。この日一番の大歓声が響き渡る中、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」と「FUNKASTIC」をマッシュアップした「FUNKASTIC BATTLE」がこの日のハイライトを更新していた。これらゲストとの共演からあらためて感じたのは、RIP SLYMEがヒップホップとJ-POPの垣根を壊し続けたその歴史と存在の強さだ。ポップス、ファンク、ロックを横断してきた25年間の交友関係が、そのままステージに上がっているようだった。

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そしてパーティの中にも、ふと静けさやセンチメントが差し込まれる瞬間があるのも外せない。せつなきノスタルジアや内省もまたRIP SLYMEなのだ。「黄昏サラウンド」では22年前のミュージックビデオが現在の5人の姿と並べるように背後に映し出され、積み重ねた時間の重みが、聴き慣れたはずの歌詞に新しい奥行きを与えていた。「One」では、会場全体が大合唱に包まれる。客席の歌声にRIP SLYMEはずっとこうだった。騒いで踊って、その合間にふっと切なくなる。楽しいだけでは終わらせない。この夜のセットリストも、まさにそういう作りになっていた。

MCでメンバーがこの1年を振り返る場面では、SUが最も印象深い出来事としてDragon Ashとの対バンを挙げ、彼らを「恩人」と呼んだ。1999年のDragon Ash主宰TMCツアーへの参加がRIP SLYMEのメジャーデビューのきっかけになったという歴史を踏まえると、その一言の重みがわかる。ILMARIが「一番というのは難しいけど、この1年の全部が本当によかったです」と語ると、FUMIYAがその「よかったです」の声をその場でサンプリングして即興ビートを刻んでみせ、会場が笑いに包まれる。こういう瞬間が、このグループにしかできないことだとも、思う。

そして本編終盤の「JOINT」に言及しないわけにいかないだろう。1万人がタオルを頭上で振り回す壮観な光景の中、SUの「STOP!」でビートが止まると、彼はしばらく言葉を詰まらせたのち、「25年間ありがとうございました」と静かに告げた。先述の「FUNKASTIC BATTLE」を挟んでの本編ラスト「Dandelion」ではパーティの喧騒が余韻に変わり、感謝の言葉とともに5人はステージを後にした。

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アンコールの「Super Shooter」ではFUMIYAがブースを離れてマイクを持ち、5人が縦一列で踊ったり手をつないで円になったりと、まるで少年のように無邪気にはしゃぐ姿を見せた。最後は「Wonderful」で金テープが舞い、華やかなフィナーレ。

かと思いきや、それでも鳴り止まない歓声に応え、5人は三度ステージに現れた。身にまとっていたのは、デビュー当時のトレードマークだったオレンジ色のツナギ。最後に届けたのは、1stアルバム『FIVE』のラスト曲にしてかつてのライブ定番曲「マタ逢ウ日マデ」だった。5人がハグを交わし、深く頭を下げる。RYO-Zが「お互い元気だったらまたどこかで! RIP SLYMEでした!」と告げた声は、驚くほど清々しかった。

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メンバーが去ったスクリーンには、再集結からの1年間の記録映像とともにエンドロールが流れた。昨年のツアーからライブ後に恒例となっていたこの演出では、SUの名前に「(友情出演)」というクレジットが添えられていた。しかしこの最終日、その表記は消えていた。ただ「SU」とだけ記されたクレジット。再集結の1年をかけて、5人のRIP SLYMEに戻っていた。

2001年にメジャーデビューしたRIP SLYMEは、ヒップホップをお茶の間に届けた最初のグループのひとつだ。ミリオン認定された2ndアルバム『TOKYO CLASSIC』、ヒップホップアーティストとして異例の日本武道館単独公演など、その功績は記録として残る。だが、いま改めてこの夜を振り返って思うのは、もっとシンプルなことだ。ブレイクビーツの上に4人の声が乗り、DJがスクラッチを刻む。それだけで1万人が踊り、笑い、時に泣く。25年かけてRIP SLYMEが磨き上げたのは、「パーティをやる」という、何よりもシンプルで重要なことだった。だからこそ、この夜は、ラストステージという言葉が似合わない。最高のパーティだった。金テープを受け取ったファンたちが、それをいつまでも高く掲げていた。キラキラと光るアリーナを背に、5人はステージを去った。

Text by 照沼健太
Photo by 砂流恵介

INFORMATION

RIP SLYME 25th Anniversary
GREATEST LIVE ‒ Final Three Nights ‒
2026.3.22 at TOYOTA ARENA TOKYO

set list
1. ど ON
2. STEPPER’S DELIGHT
3. 雑念エンタテインメント
4. GALAXY
5. チェッカー・フラッグ
6. 熱帯夜
7. JUMP with chay ※chay サプライズ出演
8. By The Way
9. ミニッツ・メイド
10. 気の置けない二人
11. SLY
12. SPASSO
13. Bubble Trouble
14. Vibeman feat. 在日ファンク ※在日ファンク サプライズ出演
15. STAIRS
16. ⻩昏サラウンド
17. One
18. パーリーピーポー (Hosted by VERBAL) ※VERBAL サプライズ出演
19. BLUE BE-BOP
20. Watch out!
21. Wacha Wacha
22. Good Day adidas Originals remix by DJ FUMIYA
23. Good Times
24. 楽園ベイベー
25. JOINT
26. FUNKASTIC BATTLE 〜RIP SLYME vs HOTEI〜 ※布袋寅泰サプライズ出演
27. Dandelion
 
encore
E1. Super Shooter
E2. Wonderful
wencore
WE1. マタ逢ウ日マデ

3/31までライブ映像もアーカイブ配信中